浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.166 (11/21)

浦和の高校がみせてくれた『公立パワー』

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椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:Jリーグがお休みの先週末は、「浦和」の大活躍がありました。高校ラグビーでは、浦和高校が6連覇を狙う深谷高校を決勝で破り、54年ぶり2回目の全国大会出場。県中学新人戦では、今夏に全国中学大会に出場した、尾間木中が初の優勝。そして、高校サッカー選手権では、市立浦和が正智深谷を破って、5年ぶりに全国大会に出場となりました。浦和の公立高校の活躍に、浦和の底力を感じました。

豊田:野崎正治・浦和南高校監督ら、『浦和フットボール通信』の歴代VIPインタビューでくり返されたコメントですが「地元の公立パワー」が全開となった印象です。浦高ラグビー部の決勝の戦いぶりを観ましたが、悲願達成のために後には引けないフィフティーンの強い結束がTV画像からも伝わってきた。このところサポーターやマスコミ各方面から「勝負弱さ」を指摘されてしまうレッズですが、こういう場面に触発される部分もあるのでは? 要は勝負どころの最後の時間帯を、ピッチ上の選手たちが何を信じてプレーしているかということ。たとえばラグビーを骨の髄まで体得している橋本光夫代表は、このようなゲームに触れれば一家言を述べてくれそうな気がします。サッカーも含めて、晴れ舞台への切符争奪が浦和vs深谷の構図になったことも興味深い。まさに郷土の南北対決でした。

椛沢:ジェフ千葉への加入が内定しているFWオナイウ阿道君を中心とした正智深谷は、昨年に続く、連覇を狙っての決勝となりました。対する市立浦和は、西武台、武南と優勝候補を次々に破っての決勝進出。「日に日に成長を感じることができた」と池田監督も試合後に語っていましたが、この年代のチームは試合を通じてグングンと成長することがあります。決勝の相手、正智深谷に対しても、自分達はやれるという自信があったそうです。池田監督も「攻めて勝つ」という自分達のスタイルを強烈に伝えるメッセージとして、3トップと両サイドバックにFWを起用するという攻撃的布陣を引き、攻撃によって相手を抑えることに成功をしました。

豊田:ゲームの流れの中で、グラウンド一杯にダイナミックに展開される市立浦和のサイド攻撃には迫力を感じました。これは対人のスキルをベースに、同じく両翼から切り崩して来る正智深谷のアタックとは異質。どんなサイドの奪い合いになるかを特に注目していました。

椛沢:何度か決定機が両チームに訪れましたが、ゴールを迫る所まではお互いに入り込めない展開ではありました。しかし互いに諦めずにボールを追いかけ続ける姿勢が見えていて、白熱した試合になりましたね。

豊田:勝負の岐路は、徹底した中盤のチェイシングでボールの供給に動き回った浦和市立のプレーに正智が根負けしてしまった図式と思います。ポイントは例によって攻守の起点になっていた戸嶋祥郎選手に加え、池田監督の「決勝用起用」でサイドバックに入った2年生の富田康平選手。決勝点アシストのCKの精度もさることながら、アグレッシブな動きで要所要所で効いていたな。イエローカードももらってしまう激しさでしたが、紙一重の勝負を引き寄せる主役だったと思います。

椛沢:富田選手の起用には、池田監督の攻めて勝つんだという強いメッセージが込められていたそうです。それにしてもあっという間に時間が経ってしまう好勝負。試合時間も残り10分の所で、市立浦和が初めてのCKのチャンスを掴むと、キャプテンの松本選手が身体で押し込んで決勝点を決めました。粘り強く勝ち上がってきた市立らしい、ここぞ、での決定力はさすがでした。

豊田:決勝ゴールの松本キャプテンは、何か往年の水内猛さんを連想させるファイターの雰囲気を持っている(笑)。総体で全国レベルを誇示した正智深谷ですが、激しい競り合いで負傷者が出た部分は気の毒だしアンラッキーだったと思います。そんな伏線もあってか、あのCKに至るまでの数分間、ちょっと受身に回ったムードが出てしまった。そこを見逃さずに市立に突かれた印象です。

椛沢:「あのCKで、俺たちが決めるという気持ちが上回ったかもしれない」と池田監督もコメントしていました。市立浦和は1月2日、埼玉スタジアムにて和歌山県代表の初芝橋本と初戦を戦います。全国制覇を3度成し遂げている元浦和市立の磯貝監督に決勝前夜にお会いしましたが、「今のチームは池田監督の下、非常に賢いサッカーをしていて、頼もしい」という評価をされていました。その言葉が納得できる試合となりました。池田監督の指導力の高さを感じましたし、選手もそれをよく表現していたと思います。「文武両道の高校が頑張って欲しい」と磯貝監督はお話していましたが、市立浦和が、その期待に応えてくれました。

豊田:磯貝先生が全国制覇を果たした72年度選手権の決勝は静岡・藤枝東高校との対戦でした。思い出せば、ちょうど今回のファイナルに良く似た構図のゲームでした(浦和市立2-1藤枝東)。下馬評では前々回チャンピオンの藤枝東が候補筆頭でしたが、磯貝さん率いるイレブンは運動量と的確な守備布陣で格上の相手の攻撃を封殺。最後はTV解説でおなじみの清水秀彦さん(浦和市立―法大―日産自動車)のスライディングシュートで全国制覇を達成しました。

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椛沢:その磯貝監督にお会いしたのは、一般社団法人『Jリーグの理念を実現する市民の会』の懇親会が浦和で行われまして、そこで磯貝監督をはじめ、南高の松本暁司先生、永井良和さん、田口視則さん、西高の仲西駿策先生、川上伸夫さん、浦高から轡田隆史さん、柴田宗宏先生と浦和4校の黄金期を支えた先生、選手から、レッズ、アルディージャ関係者、さいたま市、地元企業、地元メディアのそうそうたるサッカー関係者の面々が集まって、会の趣旨などを説明されていました。サッカー、スポーツで豊かになろうというJリーグの理念を実現しようというパワーが着々と前に進み始めていると感じた会となりました。

豊田:凄いメンバーの出席に驚きました。テーブルで「赤き血のイレブン」の師弟コンビ、松本暁司さん、永井良和さんと同席したのですが「運営の方たちによろしく」と口々に言われていましたね。歴史あるURAWAにあって、こういう機会の開催意識が希薄だったことの証しと思います。会の幹部の方々の尽力と行動力には敬意を表するしかない。今後も活動のハイライトを編集長ともども本誌にて紹介して行きたいと思います。

椛沢:また、これは触れておかなければならない話題ですが、山田暢久選手が構想外となり、今季限りで浦和のユニフォームを脱ぐのではないかという報道がされました。一部関係者には本人から連絡もあったということで、事実なのではないでしょうか。今季、浦和での20年目のシーズンとなり、500試合出場を達成してだけに、まだまだ浦和で活躍して欲しいという気持ちをもったサポーターが多いと思います。来季に向けてさらなる補強があると伝え聞きますので、その中で彼は構想外ということになってしまったのだと思います。彼は浦和で現役を続けて引退するものだと思っていましたが、まだまだ身体に衰えを感じていないようですし、できる以上は、他のクラブで活躍する姿をみせてもらいたいと思います。

豊田:ノブヒサ選手はゴン中山選手とともに他ならぬ藤枝東高校の名物OB選手です。レッズ以外のユニフォームを着る彼の姿は想像もできないのですが……彼の望み通りの去就が果たされることを切に希望します。ある意味、ミスターレッズを凌ぐ私たちのレジェンドですので。

椛沢:そして今週末は、ホーム埼玉スタジアムでの川崎フロンターレ戦です。リーグ戦も残り3試合、1試合も落とせない状況になってきました。「もう一回優勝をしたい」という山田暢久の想いを叶えるためにも、今季、優勝したい理由が増えました。まずは今週末から、ホームの利を活かして、アグレッシブに戦って、川崎を打ち破って欲しいと思います。浦和総力戦、浦和に関わるすべての力を見せる時がきました。声、手拍子、フラッグ、各々ができる最大限のサポートでレッズを後押ししていきましょう。

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