浦和フットボール通信

MENU

浦和レッズ2013ライブディスカッション 「ミシャは守備を立て直せるのか」

KAZ_3177

レッズ密着取材を続ける河合貴子氏に、本誌・椛沢編集長が浦和レッズの現状や選手達の思いを毎月訊く「レッズ2013月刊ライブディスカッション」。優勝争いを演じた、終盤戦は、大量失点により失速、リーグ戦の最終順位も6位で終えることになってしまった。最後のチーム状況について、河合さんにお話を訊いた。(浦和フットボール通信編集部)

「安い失点」を重ねた、終盤戦の大失速

椛沢:今季の終盤戦は大失速をしてしまいました。ナビスコ決勝で柏に敗れてから仙台戦(3-3)川崎戦(1-3)鳥栖戦(1-4)セレッソ戦(2-5)と一勝もできずに、最終的には6位まで順位を落としてしまいました。

河合:柏木選手も鈴木啓太選手もみんな「ACLは絶対に出る」と言っていた。鳥栖戦が終わった後に「このままでは絶対に終わらない。終わらせたくない」と言っていたんだけども……。最終節のセレッソ戦は、3-0くらいのリードをして、残りの時間に山田暢久選手を出場させて、それも最後は彼がデビューした頃のようにFWで使って……と夢を描いていたんだけども現実は厳しいものになった。

椛沢:鳥栖戦が今季のワーストゲームかと思ったら、セレッソ戦はさらに悪い内容になってしまいました。

河合:立ち上がりに危ないシーンが来たけれども、それを乗り越えて、レッズのペースになり、先制ゴールを決めることが出来て、立ち上がりは悪くない入り方だった。元気のゴールも良いシュートだった。柿谷見たか!と思っていたのに……。

椛沢:最後まで守備を立て直すことができませんでした。最後の4試合で大量の15失点を喫しました。

河合:セレッソ戦も先制したにも関わらずメンタル的な弱さが見えた。なんであんなにバタついたんだろうか。リスクを犯して点を取りに行ったのはあるだろうけれども……。「安い失点」というのが、今季のレッズの流行語大賞かもしれない。それと、「決める時に決められない」という言葉。

椛沢:あとは「ここぞで、勝てない」。全部ネガティブな言葉が出てきます(苦笑)。

河合:もう何をやってんだ!という気持ち。レッズの選手は、力はあると思うのに、その力が出せなかった。最後は、頭を抱えたくなった。

椛沢:正直、鳥栖の試合で、限界を感じてしまいました。試合後は、サポーターの中でもミシャのサッカーで大丈夫なのかという声も多く聞かれて、信頼が崩れた試合だったと思います。鳥栖戦の試合はショックでしたね。あそこで勝っていれば優勝が繋がるという場面であの完敗っぷりでした。

河合:そのような雰囲気も良くない。「浦和の敵は浦和だ」とよく言われるように。ただ、信頼を失ったのは事実だろうね。鳥栖の試合はメンタル的に崩れた試合だと思う。勝たなければいけない、という思いから前掛りになって、それぞれが個々で動いてしまった。うちは組織で戦っているはずなのに、プレーが個人的になり過ぎたように見えた。横、横のパスが多くなって、楔のパスを入れるタイミングもずれた。良い時は、横のパスを動かしながら、空いたところで縦パスを入れて、それが攻撃のスイッチとなって、そこからサイドに振って攻めるという攻撃のパターンがいくつかあったはずなのに、気持ちが焦っているのか、その形が出せなくなってしまった。

椛沢:今やっているサッカーは気持ちの余裕がないとできないサッカーなんでしょうね。
セレッソ戦は信頼を失った中での試合だったので、あのような結果は必然だったのかもしれません。

河合:だから、セレッソ戦も、よりやらなければという気持ちが強くなって、余裕がなくなった。先制点を奪って、展開的には余裕を持てたはずなのに、選手たちの気持ちに余裕がなかった。自信がないようにも見えた。加えて、今のサッカーは自信がないとできないサッカーだから。

ミシャは守備を立て直せるのか

KAZ_3105

椛沢:終盤戦の苦しい展開が続いていたので、選手達も先制点を奪っても自分たちに自信を持つことが出来なかったのでしょうか。仙台戦のあたりからズレてきたようにも思います。1点リードをしている中で、守備的な選手交代で、守りに入って同点に追いつかれてしまった、あの試合です。

河合:あの場面での判断としては当然だとは思うけれども、問題は守り方の部分だったと思う。それまで、前からはめ込むという守り方だったけれども、ラインがズルズル下がってしまった。那須さんは一生懸命ラインを上げようとしているけれども、ラインは上がらなかった。途中から入った、暢久も全くどうして良いか分からない状況だったとコメントをしていました。

椛沢:今までミシャは、そのような守りに入ることはなかったけれども、優勝が見えてきたことでのプレッシャーもあって、1点を守りきろうという策を採ったのだと思いますけども、今までやってこなかったやり方だっただけに、その策を使うための意思統一がされていなかったのではないかと思います。

河合:選手の意思統一がうまくいかなかったことはあると思う。坪井を入れて守る部分は分かるけれども、どこの位置でどこに設定して守るのかという意思統一がされていなかった。

椛沢:ミシャはよく守備の練習をしていないという言われ方をしていますが、練習の中で、流れの中での守りの練習は、もちろんしているけれども、1点を守りきる時にどうするという、シチュエーションにあわせた守り方の練習はしていないように思えます。

河合:確かに、それはしていないけれども、ミニゲームの中で、数的不利な時に、どのような守り方をしたら良いかというような練習などはしています。

椛沢:そう考えると、サポーターの中での不安は、ミシャの中に、守るという概念、守るための引き出しはあるのか、守る練習ができるのかと不安があると思います。

河合:守る手法は、ミシャの中にはあると思う。確かに、守って、守ってカウンターというサッカーはしないと思う。今のチームには岡野のような足の速い選手はいない。うちが良い時は前から嵌める守備だから、あのような守り方は出来ると思う。

椛沢:前からプレッシャーをかけるやり方ではまったチームは、川崎のようにボールを足元で繋いでくれるチームだったと思います。鳥栖がはまらなかったのは、プレッシャーを掛けようとした時に、ロングボールを蹴ってくるので、ラインが間延びをして、プレッシャーを掛ける位置がずらされてしまったことにあると思います。何が言いたいかというと、前から嵌めるだけのやり方の一辺倒だと、対戦相手チームによってはまらないことが出てくると思います。

河合:ロングボールを蹴ってくるチームは中盤省略をしてくる。相手のロングボールが怖いから、ラインが下がらざるを得なくなってくる。そこで一番良いのはロングボールを蹴らせないこと。もしくはセカンドボールをしっかり奪う意識を強く持たないと厳しい。鳥栖戦では、セカンドボールも拾えなかったことも大きな要因だと思う。それがなぜ拾えないのかというと、ラインが分断されているから、コンパクトにしていれば、セカンドボールが拾いやすい状況が作れる。

椛沢:そう考えても、レッズの引き出しが最終的に足りなかったのではないかと思います。前から嵌めるやり方に、ロングボールを蹴り込んで、対応をしてくるチームに対しては、さらにそのための対策を講じる必要があったのではないかと思います。

河合:長いボールを蹴られた時には、この時間は、一度ブロックを作って引いて守ろう、という戦い方の使い分けは必要かもしれない。ミシャさんが就任した頃の原点は、何を引きこもっているのか。これでは5バックじゃないかと言われるくらいのサッカーだった。そのような守り方もしていたことを思い出して欲しい。増えてきた引き出しを臨機応変に使い分けるようになれば、もっと高い位置に行くことが出来るはず。

メンタル的な弱さが見えた終盤戦

椛沢:終盤は、なぜあそこまで立て直せなかったのでしょうか。

河合:メンタル的な弱さが一番だと思う。ゲームコントロール、ゲームの運びも下手だった。ここ一番という試合でことごとくゲームを落としてきたのは、メンタル的な弱さだと思う。

椛沢:今のレッズにはメンタルが強い選手がいないのでしょうか。

河合:ピッチの中で崩れそうになった時に、精神的な柱になるような選手はいないのかもしれない……。一生懸命、山岸がその存在になろうとしていたりするけれども……。セレッソ戦が終わった後は、槙野も声がボロボロで、声を必死に出していたことが分かった。彼らは、一生懸命やっているんだろうけども空回りをしているのか……。

椛沢:槙野も頭の中が攻めることになり過ぎていて、守るべきところでも意識が攻めになってしまっているのではないかと思いました。

河合:よく、両ワイドが前に出た時の、裏のスペースを使えと言われているけれども、浦和はその両ワイドの選手が攻め上がる意識が強いだけに、よく突かれてしまった。

椛沢:セレッソ戦も両サイドのスリーバックの裏を思いっきり使われて、深い位置まで侵入をされてしまって失点を喫しました。あそこまで突かれてしまったら、失点をしてしまいますよね。あの辺りのバランスが全く取れていなかったと思う。守備があっての攻めではないのでしょうか。

河合:しかも、2点目の失点は前半のアディッショナルタイムでの失点だった。メモには『しっかりクリアできず』と書いてあった。時間帯を考えればしっかりとボールを切れば良いのだけど、その冷静さもなかった。今年の課題は、局面、局面の弱さだったと思う。せっかくレッズの花が咲きそうだったのに、しぼんじゃった。また冬の寒さが訪れてしまった。

椛沢:このような結果だから、そう見えるのかもしれないですけど、大切な一戦の前に、大原での練習を見ていると、楽しんでいるだけに見えるような時がある。締まる時に締まっているのかなと。

河合:継続して練習を見ている立場からすれば、締まる時は締まっていると思う。ミニゲームでも興梠を暢久がここまで潰しに行くのか!と、激しいと思う時もあった。ただ、うちは甘ちゃんなのかな……。興梠が話をしていたのだけども「うちのクラブはみんな優しい。負けたりすれば、普通だったら、ああだとこうだと凹むくらい言われるのに、うちは次、頑張ろうと言ってくれる」という雰囲気があると。

椛沢:選手のコメントにもありましたが、仲が良いチームだけではダメ。ダメな時はダメだと言える厳しい雰囲気もないと勝負時の力が出ないように思えます。

河合:いみじくも最終戦が終わった後に興梠が言ったのは、「3-1で勝つよりも3-0で勝ちたい。それが無理ならば1-0で勝ちたい」と。私はそれだと思うよ。そうでなければ同じことの繰り返しになってしまう。

椛沢:2点、3点取られるチームはなかなか勝てないですよね。0で抑えれば、引き分けることはあっても、負けることはないわけです。

河合:最初は引きこもりと言われるくらい守っていたチームが少しずつ進化していって、攻撃的な部分を出すことが出来た。最初はボランチ一枚が最終ラインに下がるというところから、2枚が下がるというオプションなども増えた。その引き出しの中でどれを使うかという判断能力が今度は求められる。今はその使い分けが出来ていない。まだレッズのサッカーは、進化の途中だと思う。

KAZ_3077

椛沢:確かに攻撃のバリエーションも増えたと思います。

河合:ただ、引いた相手を崩すやり方がまだ足りない。

椛沢:引いた相手を崩すという意味では、FWの存在が足りないような気がします。ペナルティエリアでクロスから入ってくるボールを合わせられる選手が興梠しかない。原口や柏木がシャドーの位置から入り込んでこなければいけないのですが、彼らはあまりそれがうまくない。相手のゴール前を固められて展開が硬直した時に、シャドー一枚のどちらかを変えて、FWを入れることができれば、サイドまでは攻略出来ているのだから、より決定的場面を作り出すことが出来ると思います。那須さんがあそこまで点が獲れるんだから、高さのある選手がいれば、もっと点が入ると思うんですけどね。

河合:頑張れ阪野!

椛沢:阪野に頑張って欲しいですけど、もう少し強力なFWが欲しい……。

河合:横からのクロスだけでは、崩しきれないけれども、ボール縦に入れるスイッチが、相手にブロックを作られていると、なかなかそれも入らない。私が相手チームのDFだったら、クロスに対しては絶対に競り勝つという意識が強いと思う。一番、嫌なのはペナルティエリアの中でボールを持たれることだと思う。それをもっとやることができれば良いのではないかと思う。

椛沢:あそこまでゴール前を固められるとドリブルで仕掛けるスペースがないので、そこまで入り込めないですよね。

河合:元気がペナルティエリアに入ってきたら、相手DFは飛び込めないから、嫌だと思うよ。そのようなシーンを作り出せることができれば、もう一歩上がれると思う。

ページ先頭へ