浦和フットボール通信

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【This Week】フットボールトーク Vol.173 (1/31)

クラブの補強の最大部分は“マネジメントセクション”にあり

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椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:3月1日のシーズンインに向かって浦和レッズも宮崎での1次キャンプを終えました。昨年大きな課題となった守備面の整備についてもミシャ体制初となる、守備練習を行うなど、ミシャ3年目となるチーム創りの総仕上げを行っている様子です。

豊田:周辺でも話題になっていますが、全体の守備確認というメニュー自体が初めてなのだそうですね。ハンス・オフトにしろイビチャ・オシムにしろ、ゼロからのチーム作りには時間はかかります。環境もメンバーも総取替えで設計図をつくり、戦術浸透を進めるわけだから。そこを認識していないサポーターはいない。ただミシャの場合は、もはや3年目……。昨季終盤の守備崩壊が極端であっただけに「あれも想定内であったとは思えないし、想定内だったら許せもしない」という声があります。客観的に見れば、Jの勢力図の見通しとして一昨年と同じくらいの懸念要素を持っていてしかるべきと思う。加えて気になるのは、この現状に接しても妙にクールにクラブ動向を追っている人が多々いること。レッズに対するファンの距離感の表れでなければ良いのですが……。

椛沢:シーズン中に守備の修正を行うことで、攻撃的なサッカーの方向性がブれることを恐れたという話をミシャはしていたそうです。最後は攻守のバランスが明らかに崩れていました。今年はそのバランスを修正するだけでも守備の安定化は図られるのだと思います。その中で、橋本光夫代表も退任されて、2月1日から淵田新代表が就任するという発表も今月はありました。橋本代表は5年に渡り、最も長く代表を務めたことになりました。我々のタウンミーティングにも数多く参加して頂くなど、街、ファン・サポーターの声を必死に聞こうという姿勢で、レッズの世界を理解してくれた代表だったと思います。

豊田:立場上でも自身のポリシーの中でも、最大限の努力を払ってくれたと感じています。キャラとして好きでした。外部からの提案を、むげに可能性から否定することはしなかった人。言葉の上ではぐらかしていても、努力部分では約束を果たしてくれました。クラブの状況がまったく違うので安易に比べられませんが、人柄としては創成期の中川代表に通じる「実直さ」みたいなものを感じました。

椛沢:毎度、クラブのトップ交代によって継続性の無さをサポーターから指摘されていたこともあり、橋本さんは今までのシーズン中に代表が代わるという時期を変えました。自らシーズン前のこのタイミングでの退任を決めて、新たなる三ヵ年計画を次のリーダーに託すタイミングを作ったようです。まだ具体的な役職などは決まっていないようですが、クラブに残り、自ら立ち上げた三ヵ年計画を見守りながら、新たなる代表のサポートも含めた、引継ぎ作業も行っていくようです。

豊田:詳しい内部状況はつかめていませんが、くり返されてきた跡形もないリセット状態は回避できるのかな、と……。『フットボール通信』のホームタウンに対する告知スタンスは、タウンミーティングのたびに編集長がサポーターも立会いのもとに橋本さんにお伝えしてきた。本誌としてはこの経緯は大切にしたいところです。

椛沢:今後も社長が代わっても、街、ファン・サポーターとの交流の場に常に社長には出てもらい、この街での経験を肌で感じてクラブ運営に反映させてもらいたいと思います。そんな中で昨季でのレッズ退団が決まっていた、山田暢久選手が現役引退をすることを表明しました。浦和レッズ一筋20年活躍した浦和レッズ史に残るレジェンドと言える貢献をしてくれました。引退記者会見では、彼らしく涙を見せることなく飄々とメッセージを残していました。会見後に、たまたま浦和の喫茶店「砂時計」で出くわしましたが、「あのような会見は慣れないなあ」と言っていましたので、初の記者会見ということもあって照れ屋な部分も出ていたのかもしれません。今後は強化部のスカウトとして第2の人生をスタートさせて、指導者ライセンスをB級から取りながら、クラブとしては勉強をしてもらいながら、クラブを支える人材になって欲しいと考えているようです。

豊田:とにかく「クラブの継続」を求めた古参サポーターの言葉を受けて、橋本さんが盛んにくりかえしたのが「強化部の強化」というテーマ。ノブヒサには、是非ともその課題を克服する役割を果たして欲しい。

椛沢:暢久は、20年間、浦和レッズの選手として活躍してきた人ですから、もちろん浦和もレッズのことも熟知していると思う。その経験を下にクラブでどのような力になれるのかを考えながら、努力をしてステップアップをしていって欲しいと思います。

豊田:ほかならぬスカウトについて、彼のレッズ入団に際する全盛期への途上にあったジュビロ磐田とのレッズの争奪戦エピソードが広く知れ渡りました。エースのゴン中山の後輩(ともに藤枝東高校OB)でもあるノブヒサを磐田サイドは万全の体制でスカウトする魂胆だった。ところが彼は「すぐにレギュラーで出られるレッズが良い」との理由で早々に浦和へ(笑)。入団後に延々と続いてきた「ノブヒサのレッズ」の足跡は皆さんがご存知の通りです。逆に入団直後の新人には「先発は高嶺の花」という競争原理を貫徹した磐田は、やがてアジア王者にまで行き着く……。ノブヒサ自身と彼の地元で台頭した強豪クラブの対比は、当事者であるだけに印象深いでしょうが、彼自身にはどのように映っていたのでしょう。いつかインタビューで訊いてみたいです。

椛沢:引退試合についても福田正博氏の引退試合に続く規模での開催を考えているようです。暢久もそうですし、堀之内聖も山形でのキャリアを終えて現役引退をしてパートナー営業部としてフロントに入りました。彼らOB達が浦和レッズを支えていく存在になっていくことで、浦和レッズの新たな一体感が創出されていくと期待しています。

豊田:山田にしろ堀之内にしろ、彼らはピッチ上とスタンドとURAWAが一体となって成長し、ついにはクラブ世界戦のトーナメントラウンドまで達する「得がたい体験」を身に着けているわけです。我々が言葉をつくして求めるよりも、プロクラブという組織への提言やパワーがある。そして、それを行使する責任も負っていることを自覚してポスト・プレーヤーの活動にスタートを切って欲しいです。

椛沢:チームは「レッズフェスタ」などの行事を行った後、鹿児島に飛び、2次キャンプを行って2014シーズンに向けての総仕上げを行っていく予定です。ミシャ体制3年目に入り、クラブのトップも刷新されたこのタイミングは、今後のレッズの行く末を左右する岐路になるシーズンになるかもしれません。もちろんトップチームは、結果が求められるシーズンになるでしょうし、さらなる未来への道しるべをどう描いて行くかの新たなる一年にもなると思います。そのビジョン創りに対しては注視していきたいと思います。

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