荻原拓也が魅力ある左足を武器に光を放つ【河合貴子のレッズ魂ここにあり!】
J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。
浦和の輝く左足!
沖縄一次キャンプでメキメキと頭角を現わしたのは、荻原拓也選手であった。スピードに乗った突破も1つの荻原選手の武器であるが、何よりも左足から繰り出される多彩な球質のキックはもの凄く魅力的であった。
今シーズン、浦和ユースからトップ昇格したのは、橋岡大樹選手と井澤春樹選手、そして荻原選手の3選手だけだ。井澤選手は、トップチームに合流することなく徳島へとレンタル移籍。それを目の当たりにした荻原選手と橋岡選手は、プロの厳しさを感じたはずである。
荻原選手は「Jrユースからやってきた仲間。二人で切磋琢磨していく」と身を引き締め、「最初、ユースに入ったときに壁を感じて、トップとの距離感を感じた。1年前ぐらいのユースでは、試合に出場できなかった。自分のウィークポイントである守備力と右足、ストロングポイントの左足のキック、スピードを磨くことでこの1年間で大きく成長できて、プロのスタートラインに立てた」と新入団会見後に少し歯に噛む様子を見せながら話していた。
上のレベルで活躍するために、苦手な部分を克服しながら得意分野のスペシャリストにならなければいけない。ユース時代に荻原選手は「右でインスイングで上げるシーンというか、左でいけるけど、わざと右で上げたりした。最低限クロスを上げられる右足を持っていないと・・・」と高い意識で練習に取り組んできたのだ。
天才肌では決してない。自分の得意、不得意を知っているが故に、謙虚な姿勢で努力して掴んだトップ昇格した選手であった。
そして、「左足のキックと突破力でサイドを崩して、自分が入って自分しかできないサイドの突破力を発揮したいし、セットプレーでのキッカーを目指す!イメージは太田宏介選手だ」と同じ利き足が左足のFC東京の太田選手の名前を上げて目を輝かせていたのだ。
しかし、ユース時代からその才能を買われてトップチームのキャンプに参加していた橋岡選手と違い、高校3年生の1年間で大きく成長した荻原選手にとっては初めてのキャンプになった。フィジカルに重きをおいた一次キャンプの序盤では、キャンプ経験のある橋岡選手に一歩先を行かれた感じであった。
右サイドバックを任せられた橋岡選手と左サイドを任せられた荻原選手。ミニゲームでも対峙するシーンが多く、スピード力がある荻原選手でも読みの鋭さを持ち対峙に強い橋岡選手にさすがに止められてしまっていたのだ。その度に悔しさを噛み締めながら、挫けることなく何度でもチャレンジを繰り返す荻原選手の姿があった。
そんな荻原選手を優しく見守る父がいた。「仕事でたまたま沖縄に来ていたんです」と荻原選手は嬉しそうに笑った。「ユースの頃から全部ビデオを撮っていてくれて、それを見て自分のプレーを研究していた。幼稚園の時も撮ってくれていて、今日も撮ってくれていた。俺が「パパがいる」って言ったら、武藤君とかスピーカーになっていて・・・。ちょっと照れくさい」と言いながらも仕事の合間に訪れてくれた父の姿に感謝をしていた。
プロとは言え、まだあどけなさが残る18歳の少年だ。どんなに父親の存在が、嬉しく、慣れないキャンプ生活での励みになったはずだ。
それからというもの荻原選手の動きが、どことなく軽快になってきたのだ。肩の力が抜けた感じで、いきいきと躍動しはじめた。キャンプ序盤で勝てなかった橋岡選手との対峙も「今日は、チンチンにされました」とキャンプの疲れが見え始めた橋岡選手が悔しがるほどの動きを見せ始めていた。
そして、ミニゲームではセットプレーのキッカーを務め、槙野智章選手にドンピシャと合わせるクオリティーの高い左足を魅せた。「質の良いボールというか、狙った通りだ。蹴った瞬間に、良い感じのフィーリングだった」と屈託の無い笑顔で荻原選手は話し「チームとして攻撃の時は、サイドバックにスペースを与えたいならから中目のポジションを取る。自分のポジションは、基本ワイドに取って攻撃の幅を広げる役割だ」と判断よくポジションを取り、手応えを掴んでいったのだ。
手応えを掴んだ荻原選手は、初の対外試合となった沖縄SV戦で1ゴール1アシストとの活躍をみせた。手応えは、自信へと変わっていった。「数字で結果を残せた」と安堵の表情を浮かべ「GKを抜いて冷静に決めることができた。自分のスピードを活かせて、象徴できたプレーだったと思う。アシストは、二人(プレスに)来て、ダブルタッチで縦に抜いて、思いっ切り振るとあそこに(ボールが)行くって分かっていたし、ズラタン選手が見えていました」とゴールとアシストしたシーンを振り返った。
そして「常にチャレンジして、自分のプレーをしっかりと出すことが出来て良かった。守備でも早い寄せで献身性を見せられた」と嬉しそうに話しながらも「もっと中との連携やコンビネーションをしっかりして、個人プレーとの使い分けをしっかりとできるようにしたい。プレスキックも年間通してやるには、安定性を求められる。そこをもっともっと求めていかないといけない」と浮かれることなく身を引き締めていた。
プロに世界は、決して順風満帆とはいかない。逆風に晒されることもある。だが、ずっと荻原選手を見守り続けてきた父親のように、この先もずっとその成長を見ていたいと思わずにはいられなかった。未来が、本当に楽しみな選手の1人だ。輝く左足を武器に、浦和を勝利へと導く選手になっていくだろう。
Q. 足の付け根の肉離れの予防を教えてください。
A. 内転筋などトレーニングで筋肉を強化したり、スポーツを行う前は動的なストレッチで筋肉をほぐし、クールダウンをしっかりとしてストレッチをしましょう。疲れを溜めないように心掛けると良いでしょう。また、体質的に左右のバランスが悪い人は、肉離れになりやすいので、バランスを良くすると良いでしょう。
川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
川久保整形外科がリニューアル開院しました。平成28年5月6日(金)より新クリニックにて診療を開始しています。MRIなど最新施設を備えて、より良い環境の下での医療とサービスをご提供していきます。http://www.kawakubo-clinic.jp/