浦和フットボール通信

MENU

鳥栖戦での横断幕問題について【This Week】フットボールトーク Vol.175 (3/14)

鳥栖戦での横断幕問題について

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:先週末の鳥栖戦で起きたコンコースに掲出をされた横断幕問題について、世間的にも大きな話題となり、浦和に関わる人たち全てが眠れない夜を過ごしたのではないでしょうか。今回はこの件について触れていきたいと思います。

豊田:サッカーへの関心あるなしに関わらず、都内でも地元でも、当然に多くの厳しい反応を耳にしています。折しも今週は市民活動団体メンバーとお会いする機会があったのですが、ホーム浦和中心部からの声はこころ痛むものだった。クラブや選手への気遣いの言葉とともに、「無観客試合まで引き起こすとは。長く交流を深めて来た清水の方たちに申し訳ない」という言葉がまっ先に出てきました。で、そういう方たちに限って普段はスタジアムに行く暇もなく、地域のファミリーや子どもたちのために地元の発信に奔走している立場なのです。日ごろからホームスタジアムに通いつめながら、自分はどうしてこの不始末を防げなかったか……そんな自問自答をしている最中には骨身に沁みますね、こういう反応は。

椛沢:幕の存在を全く知りませんでしたが、同じ現場にいながら、今回の事態を引き起こしてしまった事態を感じて止めることが出来なかったということを自分自身も肝に銘じて、再発を絶対にさせないように、今後の活動をしていかないといけないと思っています。この概要は既に詳細に発表をされていますが、「Jリーグ第2節「浦和レッズvsサガン鳥栖」(キックオフ16:04/前半終了16:52/後半開始17:07/試合終了17:56)において、浦和レッズ側ゴール裏である北サイドスタンドのコンコース入場ゲートにサポーターによる差別的と考えられる横断幕が掲出されました。また、浦和レッズが横断幕の掲出を認知後、撤去までの間1時間余を要する等浦和レッズが差別を容認したと受け止められるような対応がありました。」というオフィシャルでの発表の通りです。掲出した人間は、近年、外国人の来場者が増えており、そのことにより問題が多発していることから、このゴール裏は自分たちのエリアであるということを示したかったと、差別的な意識を下に出したものではなかったと、当事者も周りのサポーターも警備に関わるスタッフも、差別的なメッセージであると捉えられなかったという意味では、その種の言葉に対して意識が低かったということは免れない事実だったと思います。私自身もこの問題が起きていることを試合後に知った当初には、どこまで大きい問題なのかは捉えられませんでした。

豊田:しかしサッカーシーンの現勢を見わたせば、ACLにおける震災関連メッセージや、代表戦における旭日旗問題など「フットボール根幹にかかわる恣意行動」の事例はたやすく例示もできます。今回に関し、ゴール裏のモラルや情報の共有には見逃せない感度低下があったのではないでしょうか?

椛沢:ゴール裏として、このようなことに関しては気にして行動をするようにという話をしていましたが、結果的には問題は起きてしまったわけで、認識が甘いと言われて致し方ない事態です。この問題が二度と起きないようにゴール裏としては周知徹底して、これから活動をしていくという話が行われています。

豊田:おろかなサポーターの一団のせいで、選手やクラブが……の範疇で思考をくり返す向きがありますが、今回の始末はそのレベルを大きく踏み越えています。村井チェアマンの裁定や淵田代表のコメントの重さをくり返し反芻すべき。当然のことですが、私も含め、これは「レッズ周辺全体」の問題です。ネット社会ではサッカースタジアムは起こったことは1時間も経たないうちに海外サイト、国際社会にまで伝播する。スタンドの片隅が巨大なレンズになって、他のファン、ホームタウン、果ては日本国民までを道づれにして「○○の浦和」「○○の日本人」というレッテルを世界標準で貼り付けてしまう。だからこそ、フットボール界は手痛い事例や高い授業料を積み重ねて、モラル徹底を図っているわけですから。

椛沢:事態の重要性に鑑みて、クラブから下記処分が行われることが発表されました。
・掲出行為を行った者が所属する当該サポーターグループに対して、無期限の活動停止処分としました。
・当該グループに所属するメンバー全員に対して、浦和レッズが出場するすべての試合について、無期限入場禁止の処分としました。
(2)クラブスタッフ
・当該横断幕を試合終了まで撤去することが出来なかった主たる原因はクラブのマネジメントにあると考えております。本人からの申し入れにより、淵田敬三社長の役員報酬の自主返納(20%、3か月間)を受け入れることと致しました。
・ 関係社員につきましても、社内規定に従って処分を検討します。
またJリーグからクラブに対しては、清水戦の無観客試合を裁定されました。
Jリーグからの裁定内容
(1)譴責(始末書をとり、将来を戒める)
(2)無観客試合の開催(入場者のいない試合を開催させる)
※対象試合:Jリーグディビジョン1第4節 浦和レッズ vs 清水エスパルス
2014年3月23日(日)15:00キックオフ (埼玉スタジアム2002)
さらに、「リーグ戦、カップ戦とも、ホーム、アウェイを問わず、浦和レッズのファン・サポーター全員に対し、すべての横断幕、ゲートフラッグ、旗類、装飾幕等の掲出を禁止」という発表もされました。この部分についてはサポーター自身からの提案もあったということです。一部のサポーターの愚行ということだけに捉えずに、サポーター全体としてこの問題が過ちを認めて、今後、同じ事を繰り返さないための姿勢を示すための一つの手段としての横断幕などの掲出停止でもあると思っています。もし同じことが繰り返されることになれば、更なる制裁が待ち受けている。すなわち、レッズという自分たちの世界を失うことになる。そのことを全ての浦和に関わる人たちが感じて、今後行動をしていかないといけない状況であると思っています。

豊田:それにしても、あのフラッグがないレッズ戦の客席を見る日が来ようとは……言葉がありませんね。

椛沢:それを逆に提案をして受け入れるということが、今回の問題を真摯に受け止めて、改善をしていく必要があると考えている、ゴール裏としての覚悟だと捉えて頂いて良いです。何年もスタンドに掲出をし続けてきた横断幕を出さないということは、簡単な思いではないということも知って頂ければと思います。

豊田:一般のサッカー愛好者はもちろん、ホームタウン市民にしてみれば、今回不祥事は降ってわいたような衝撃のはずです。その部分を考えるとやりきれない。とりわけ今季はワールドカップイヤー。世界中の盛り上がりと反比例して、私たちは「謹慎中」となるホーム埼玉スタジアムを心に刻み込む時間を過ごします。それでも、このところ埼スタに行っていなかった旧友の中には「せめてレッズ戦の後押しになるように、この機会に客席復帰しよう」という動きがある。彼らとは「応援は旧式の我々のスタイルで。好プレー&フェアプレーには、敵味方にかかわらず盛大な拍手で」と申し合わせている。自分たち自身で出来ることから始めようと考えています。

椛沢:アイテムに頼らずに、一人一人が声を出す、手拍子を打つという極めてプリミティブな手法に立ち戻るということは、新たなゴール裏、新たな浦和の世界を、これからを考えていく上でも悪いことではないと思います。明日の広島戦から試合は行われていくわけですが、浦和レッズがどのように進んでいくのかが問われていくと思います。今回の件を当事者意識を持ちながら、進んでいきたいと思います。この問題については、フットボール通信でも引き続き違うタイミングで考える時間を作っていきたいと思います。

ページ先頭へ