浦和フットボール通信

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椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)×島崎英純(浦和レッズマガジン編集長) 居酒屋レッズトーク対談第3回『レッズサポーターは『王道』を求めているのではないか。』

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レッズサポーターは『王道』を求めているのではないか。

椛沢:ガンバ戦で槙野が決勝ゴールを決めたけど、褒め称えられなかった。それはなぜだという声も挙がっていますけども、人間の素直な感情からすると、1試合の活躍で称えられないほどに、信頼が失墜しているということだと思いますね。

島崎:それはオフシーズンの彼の活動に対しても色々とあるんでしょう。

椛沢:それもあるでしょうけども、一番は昨年の終盤戦の低迷ぶりが彼の信頼を落としたと思います。彼は、それを取り戻すために必死にやり続けるしかない。昔は福田正博さんはサポーターにコインを投げつけられても試合でゴールを決めて、どうだ?文句あるか?とスタンドに向かってきたわけですよ。それが浦和の選手だと思いますね。今季は好パフォーマンスを見せてくれていますから、この調子で行けば彼に対する信頼は回復するのではないでしょうか。

島崎:浦和はかなり特殊ではあるけれども、結果を残した選手を称える文化がある。今厳しくてもしっかりと応えた選手を称えて欲しいですね。

椛沢:福田さんがいうプレッシャーのあるクラブだというのは、そういう所だと思います。他のチームのようになんでもかんでも応援はされない。ゴールをしたとか、そういうことだけではなくて色々な感情の中で、お前を称えるということがあって、だからこそ大きなパワーになるんだと思う。那須が言っていたのが印象的だったのですが、「他のクラブでは聞こえなかったサポーターの声が、浦和では聞こえる」と言ってくれたんですけど、それは本気で応援しているからだと思っているんですね。

島崎:いみじくも他の媒体で福田さんと対談をした時に西川周作の話になって、彼はプレッシャーのかかる試合に出たことがないので、浦和の中でどのようなパフォーマンスを見せるか見てみたいといっていて、鳥栖戦で濱田にあのようなパスを出してしまった。福さんが言うことはそういうことなんだと思いましたね。あれだけ技術のある選手でも、浦和のゴールマウスに立つと色々な想いが背中にのしかかって、プレッシャーがかかるんだと思いました。

椛沢:あれはプレッシャーも掛かっていたことが影響したんでしょうか。

島崎:そうだと思います。普通であれば、あのようなところにパスを出す選手ではないと思いますよ。宇賀神とか梅崎に当てる選択があったのに、3人が追ってきている濱田に出したので、濱田からしても、なぜ俺に?という所があったと思う。あとは、ホーム開幕戦の観客動員数が4万人に減った要因は幻滅したところなんですかね。

椛沢:シーズン頭の試合って、昨季の最終戦のイメージを引きずると思うんですよね。2013シーズンのホーム開幕戦は52000人が入ったわけですけど、あの試合の前の最終戦は、槙野が名古屋戦でスーパーFKを決めて久しぶりに最終戦で勝った試合なんですね。そのイメージが継続される。今回はネガティブなイメージが継続をされているんだと思います。今季の前半戦を見てサポーターが面白そうだと感じると、それがゴールデンウィークあたりの試合に影響をしてくるんだと思います。

島崎:そうすると、今が勝負ですね。広島と清水と難しい試合が続くので、いきなり組み合わせ的にも厳しいですよね。今季は、ミシャさんの言動も変わってきています。今までは意図的に避けてきたのに、守備の話をするようになった。それも浦和で指揮をとることのプレッシャーを感じているんじゃないですかね。サポーターの想いがミシャに届いているし、クラブもプレッシャーをかけているんじゃないかな。クラブはそもそも監督を支えないといけないので、プレッシャーをかけても良いけども、それと当時に監督、選手を守る環境作りをして欲しい。もし投げっぱなしになっているようだと、これまで犯してきた歴史を踏襲することになるので、それだけは避けて欲しい。

椛沢:結果こそ全てのシーズンではあるけれども、ミシャサッカーは、結果こそ全てのサッカーではない。内容を求めた上で結果を残したいサッカーを展開し戦力的に圧倒しているわけではない。そのためにJリーグの中で優勝できる可能性はあるけれども、圧倒的に優勝できる状況ではない、ということを理解しないといけないですね。

島崎:そういう環境作りをクラブがしていないわけですからね。

椛沢:クラブがフォルランみたいな選手を獲って、その選手が30点くらい取りそうだということがあって、優勝しますというのであれば、納得はできるんですけど、実際はその状況にはありません。しかし、サポーターも優勝しますと言われると優勝だろという話になってしまうので、結果が出なければ評価されないという形になっているかと思います。

島崎:率直に言いますけど、ミシャになってこの2年間は他の監督さんよりもサポーターは優しいと思う。それは2011年にひどいことになって、それを立て直してくれたという恩義をサポーターも感じているからではないでしょうか。その功績について諸手をあげて賛同していると思う。しかし、その段階が終わって、3年目の今年は結果を残して欲しいという想いが出てきているんでしょうね。

椛沢:ミシャさんがいなくなった後に暗黒時代が繰るんじゃないかと不安に思っているサポーターもいると思いますけどね。

島崎:そう意味でミシャさんの言動や態度をみていると、相当なプレッシャーを受けていると思う。マッチデープログラムを見ても守備の話をしていたので、あれはなかなか見ることが出来なかった言動だと思います。最多得点、最少失点を目指すといっていましたけども、そんなことを言ったことがなかったですからね。これはポジティブに考えているけれども、それだけミシャさんや選手達は不退転の決意でやっていると思う。責任をしっかりと感じている。

椛沢:湯浅さんが言っていたのは、去年の失敗によって選手達も自ずと手が抜けない状況になっているので、守備を必死にやろうという気持ちになるのが普通だと、それが良いことでミシャ監督にも、選手達にもっと要求が出来るし、、それを選手も状況を理解できる。だから、結果が出るんじゃないかと言っていましたね。

島崎:欠点、弱点について注力しているけれども、それによって一番の魅力である攻撃が薄れてしまうのは本末転倒で、得点が挙げられないとなると存在意義がなくなってしまう。だから、チームバランスを整えて欲しいと思いますね。自分たちの魅力を消さないという思いをこれからの試合で見てみたいですね。

椛沢:ミシャさんは、これまで戻れといわなかったのはそういうことだと、湯浅さんもおっしゃっていましたね。指導者が戻れというと、選手達は、10倍にも20倍にもその意味を感じてプレーをしてしまうと。

島崎:そうなんですね。特に日本人はその傾向があると思います。サッカーは難しいんですよ。市同社が言うと10倍、100倍の思いでやってしまう。それが1節、2節の現象で出ているんじゃないですか。

椛沢:今は戻れといっているんですかね。

島崎:行くなと言っている。リスク管理の部分の問題ですね。鳥栖戦でもカウンターシーンでも興梠、原口、梅崎しか前線に攻めあがっていない。去年は槙野、森脇、ボランチの一人が加わり6人くらいは上がっていた。それが3人に減っている。それは失点をしないというプレッシャーがあるからではないでしょうか。

椛沢:鳥栖戦の後に選手達から「失点を重ねなかったから、それはそれで良かった」というコメントがあって、負けて、そのコメントかと思ってしまったところもありました。

島崎:それこそ今のチームコンセプトを、選手が必要以上に感じているからでしょうね。負けているのに良かったというのはそういうことでしょうね。

椛沢:サポーターからすると結果が出ていないし、どこが良かったのか、攻めないので何が良かったのかという話になってしまうと思います。

島崎:それこそチームコーディネイトの難しさで、選手達は迷いなくやっていると思いますが、ミシャさんの一番の魅力は攻撃なので、そこが消えてしまうのは残念でならないし、そこが消えないようにして欲しい。ダメなのは2点、3点と失点を重ねることであって、1点くらい取られるくらいなら良いと思う。1点ならば引っ繰り返せるじゃないですか。ただ、それを選手達に言い聞かせるのは難しい。ミシャさんの立場になると分かりますよ。でも、その部分は修正できると思いますよ。試合を重ねながらチームは成長をしていくものなので期待をしています。

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この前、ライター仲間である、木崎伸也君に聞かれたのは、レッズサポーターは王道を求めているんじゃないかということ。ミシャさんは亜流なので、そもそも根本的な問題でミシャさんのサッカースタイルがレッズサポーターに響いていないんじゃないかと言っていた。それは興味深い考察だと思いました。王道は何かというのは難しいですが、世界のトレンドのサッカーをして王道のサッカーで勝つことこそ、レッズサポーターが欲している部分で、弱者が強い相手を倒すためのサッカーの見え方は納得しないんじゃないかと。木崎君の見立てだとミシャさんのサッカーはまさにそれで、プロビンチアがビッククラブに勝つための方策で特殊なスタイルを用いていると。それをレッズサポーターは求めているんですかね?と言っていました。彼は、なんとなく示唆しているんじゃないですかね。

椛沢:なんとなくミシャさんのサッカーが受け入れられていない所はあるかもしれないですね。

島崎:スタンダードではないですからね。レッズサポーターがどう見ているか、分からないですけど、王道で勝ち切ることが彼らが求めることなのではないでしょうか。

椛沢:ある意味、サポーターは単純で、誰が見ても分かるようにチームのために戦っている選手が好まれている。ロブソン・ポンテや福田さんもそうでしたけど、そういうサッカーや選手が好まれるのかなと思うので、その中で展開されるサッカーはまた人それぞれの趣向性によるものがあると思います。

島崎:その意見に立つと、僕が思うのは、槙野は戦っているけれども評価されないの?

椛沢:それを続ければ元に戻ると思いますよ。槙野は去年の終盤戦の前は評価をされていたと思いますから。鳥栖戦もニュートラルに見れば良いパフォーマンスをしていたと思いますよ。それを続けてもらえばサポーターは必ず納得すると思います。

島崎:守備も良かったですしね。その信頼を取り戻すのは時間が掛かるということなんですね。

椛沢:湯浅さんが言っていたんですけど、人間の力は怒りからくるものだと。サポーターふざけるなと怒ってもらって、見返してやるという気持ちがあれば良いと思いますよ。お互いが馴れ合う必要はないと思っていますから。

島崎:馴れ合いから本当の応えは出てこない、本音でぶつかることがサッカー文化が成長してきた歴史があるから、そこには何の異論もないです。そこをレッズサポーターは真摯に向き合ってきたと思うので、良いと思いますよ。

椛沢:サポーターって、複雑なようで単純なんですよ(笑)。

島崎:昨季で言うと、慎三君はなんで、すぐに受け入れたんだろうと思うし。

椛沢:興梠は鹿島から加入して、シーズン前は絶対に応援しないと言われていたのに、実際に彼のプレーを見たら、すごく献身的で、チームのために戦う気持ちや姿がすぐに見えたことで、サポーターの信頼を一気に掴んだんだと思います。

島崎:それも主観的だよね(笑)これは選手がいくら頑張っても越えられない壁な気がする。それは選手それぞれが醸し出す、雰囲気によるものだから。

椛沢:ピッチで見える現象ですからね。

島崎:それを持っている選手は元来持っている選手で、行動では変えられないじゃない。

椛沢:でも山田暢久みたいな選手もいるじゃないですか。

島崎:彼は20年掛かって、ようやく引退目前に評価されたじゃない。彼は馬耳東風だから生きてこられたけども、槙野みたいなセンシティブな子は毎試合感じてしまう。選手のレッテルは最初に貼られて変わらないんだ。那須も慎三もあっという間に評価をされたけれども、槙野は3年間やって、サポーターの評価が落ちたり上がったりしている。それは、みんな見た目で判断しているからじゃないかな!

椛沢:見た目ではないですよ。ピッチでの表現です(笑)

島崎:いずれにしてもサッカーに対する現象はしっかりと見るべきだし、問題提起もしないといけないと思います。ただ、サポーター側に立つとポジティブに応援したほうが幸せなはずです。だから、試合中だけは応援をしてもらいたい。その後に議論することはもちろん大事ですけども。

椛沢:サポーターも応援をしていますけど、心で感じていることが出てしまうのが人間なんですよ。嘘をつけないんです。3年目の今季は、広島化している上に結果が出ないじゃないかというサポーターの思いがある種、爆発して終っている所があるのかもしれないですね。

島崎:その結果勝てない可能性が高まっている。サポーターのせいで負ける雰囲気を作ることはみんなの幸せに繋がらないと言いたいです。みんなそこを求めてないはずですから。

椛沢:それはそうですね。2007年以降にサポーターもそのような経験をしていると思いますからね。

島崎:なんでみんなレッズの試合を見に来ているのか、それはレッズが優勝するためにサポートしに来ているわけで、文句を言いに来ているわけではないはずです。鳥栖戦の光景は、サポーターは株主で経営者の立場である監督や選手に文句を言っている株主総会にしか見えなかった。それは決して良いことではないですよ。サッカーは、純粋の楽しむスポーツで、何か糾弾する場所ではないですから、お金を払っているからそうなってしまうのかもしれないですけど、もう少し考え直して楽しくためにスタジアムに来ているということを考えて欲しいです。鳥栖戦で危機感を感じましたね。

椛沢:なるほど。

島崎:チームが勝つために何をするか考えて行動をして欲しい。楽しむことを考えて行動をして欲しい。選手が100%力出せる環境を与える、それが浦和レッズサポーターは出来ると思いますし、例えば2万人程度しかいなかった川崎戦でも、すごい応援をサポーターがしてチームと一体となって勝ち点を得た。あのような試合を見ると感動をしますよ。味方に文句を言うのではなくて、あのようなことを続けて欲しいというのが、私からのお願いです。

椛沢:おっしゃる通り、サポーターはチームを勝たせるために存在をしていますから、チームを必死にサポートできる雰囲気を作りたいと思います。本日は、ありがとうございました。酔っ払いすぎる前に、対談を終了しましょう(笑)

島崎:ありがとうございました。また呑みながら話しましょう。

2014年3月 酒蔵力武蔵浦和店にて

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