浦和フットボール通信

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浦和レッズ、「魅力あるプロクラブ」への指標。 湯浅健二 ロングインタビュー(2)(2014/4/11)

ドイツサッカー協会スペシャルライセンスコーチ、全盛期への端緒についた読売サッカークラブ(現ヴェルディ)での指導歴、レッズの紆余曲折を追ったキャリア……。幾多のジャーナリストの中にあっても湯浅健二氏のプロフィールには、日本サッカーにおける「プロクラブの履歴」を検証する視点が満ちている。新シーズンを前に我らがレッズの現在位置、そしてその魅力の未来像を訊いた。 interview by Yuichi Kabasawa /text by Mitsuho Toyota /Photo by Kazuyoshi Shimizu IMG_5999
湯浅健二 Profile

1952年生まれ。プロサッカーコーチ。 ケルン体育大学に留学し、1981年にドイツサッカー協会公認スペシャルライセンスを取得。 1982年に読売クラブのコーチを務めた。現在はサッカージャーナリストとして著書多数。

浦和レッズ、「魅力あるプロクラブ」への指標。 湯浅健二 ロングインタビュー(1)

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プロが切磋琢磨する舞台が、クラブにあるか?

UF:湯浅さん描くレッズの理想像は分かりました。しかし私たちが危惧するのは、監督も含めた今のレッズにそれを実現する環境があるかという問題です。

湯浅:ここまでの話は世界レベルのクラブ戦術にまつわる理想の話。そもそも「監督の仕事ができる組織」になれているかといえば、現状でJ各クラブが問題を抱えています。これはもう言っても仕方ないレベルでしょ? 日本サッカーのプロと称される面々からは何度も指摘されてきた課題ですよ。

UF:クラブがミシャを監督に招聘。以前よりも体制を固めて複数年で強化を行い、クラブとしての指針を決めて動き始めたという現状と思います。レッズの組織構成や監督の変遷を見ると、マネジメントの人事権にサッカーを知らない人が介在しているという要因があるのでは?

湯浅:組織の質が停滞すれば、その影響はピッチ上に降りかかる。しかもそれは選手が感じとる。日本社会全体の傾向かも知れないが、生活を賭けてネクタイ締めているマネジメントが組織を仕切っており、そこにプロがいないんです。で、いざ本当のプロが入ってくると、往々にしてそのプロを排除する動きになる(苦笑)。

UF:その現状を踏まえ、クラブがホームタウンやサポーターのものであるという価値観共有が「URAWAでなら可能」との判断のもとに模索が始まっています。たとえばレッズの低迷期に湯浅さんが口にされていた「価値と人材の交換」というテーマ。これは地元トッププロとホームタウンの間では欠かせない条件と思いますが……。

湯浅:かつてのURAWAには、(その理想に向かう)力があったと思う。なのに企業色がよみがえっている気配があるようでは逆。このテーマ実現には、サッカーの社会的地位の共有やホームタウンの当事者意識も必須です。そしてクラブも、「プロがプロたる立場を示せる組織」に進化しなくてはならない。これはレッズにとってもレイソルにとっても高いハードルだよ、小見君(現柏レイソル、シニアアドバイザー)の苦労も知っているけど(笑)。

UF:湯浅さんが体験されたドイツなどでは、どのような状況なのでしょう?

湯浅:地域とクラブの著名パーソナリティ同士が交信を怠らず、意見交換をする舞台が常に用意されています。透明性を保ち、クラブは自分たちのものである……という意識が継続されているということ。私の在独時代にはバイエルンミュンヘンのウリ・へーネスGMが、脱税スキャンダルでウド・ラテック(へーネス現役時代の監督だったクラブ長老)と大論争を繰り広げる、なんてこともありました。

UF:現場を体験した実績と発信力を持ったプロフェッショナルが、切磋琢磨しながらクラブを継承しているということですね。

湯浅:かつてのレッズには、森さんや犬飼さんというパーソナリティがいて、それを取り巻く眼力のあるサポーターやマスコミが揃っていた。現在もレッズランドという装置が残っています。社会的価値を持つ存在に向かって邁進する責任があるのでは? まだまだ日本では、サッカークラブがコミュニティーの象徴としての価値を認められていない。レッズにはネームバリューがあり、日本で一番社会的価値が高いクラブでしょう。外から見ていて感じる範囲だが、URAWAでさえホームタウンとしての当事者意識が落ちている現状があるなら憂うべきことと思いますね。

(2014年2月 都内にて)

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