浦和フットボール通信

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河合貴子×椛沢佑一 浦和レッズ2014ライブディスカッション 「浦和に馴染んだ”浦和の太陽”柏木陽介」(2014/5/21)

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レッズ密着取材を続ける河合貴子氏に、本誌・椛沢編集長が浦和レッズの現状や選手達の思いを訊く「レッズ2014月刊ライブディスカッション」。リーグ前半戦を首位で終えた、好調のレッズの現状について、河合さんにお話を訊いた。(浦和フットボール通信編集部)

失点の減少、選手層の充実が、前半戦好調の要因

椛沢:ミシャ3年目の今季は、9勝2分3敗の首位で中断を迎えました。ミシャになってはじめて首位に立ちました。

河合:ここまで成績が出ている要因の、ひとつは失点数が少ないからだろうね。

椛沢:“勝つサッカー”が出来ているのかなと思いますね。去年は派手なサッカーをしていて、その分、取りこぼしも多かったですが、今年は1-0のゲームが多いこともそれを表していると思います。

河合:苦しいゲームをモノに出来るチームになっていると思う。逆にどっちに転んでもおかしくないけど、勝てなかったのは柏戦。あの試合はもったいなかった。そうやって、上を見ればキリがないけれども、逆に冷静になって考えると良い戦いが出来ていると思う。一番、大きいのは、GWを挟んだ5連戦を、槙野選手、那須選手と怪我人も出ながらも、うまくターンオーバーできて、3勝1敗1分という成績が残せて、乗り切れたのは大きいと感じている。この連戦を乗り切れたということは、私の予測として思うのは、夏場でも乗り切れるのではないかということ。甘いと言われるかもしれないけども、この夏は失速することなく戦えるんじゃないかな。レッズは秋の大失速があったけれども・・・。

椛沢:連戦の中で、試合のクオリティが下がってくるけれども、苦しいながらもセットプレイで点が取れて勝てるということは、今後を考えても成長ですよね。良い試合が出来ないと勝てないというのであると、どうしても勝ち点を稼げなくなります。戦力的には、濱田水輝、永田もそうですけど、両サイドの選手も入れ替えながら、試合に出る選手が活躍をしました。

河合:両サイドは運動量を求められるところだからターンオーバーが必須。ボランチも選手交代をうまくしながら乗り切れた。ミシャサッカーではワントップ、2シャドーが一番難しいポジションだけれども、そのポジションもワントップに興梠選手、李選手だったり、シャドーには梅崎選手や柏木選手を入れて休ませながら出来たのは大きかったね。

椛沢:この2年間は戦力が足りないという場面がありましたけども、今年は戦力が整ってターンオーバーを上手く行えているのかなと思います。

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河合:昨年、ミシャさんに選手起用について質問をした時に「今、出ている選手が疲れているのは分かるけれども、疲れていない選手を使うだけで、クオリティが下がる交代では全く意味が無い。交代のための交代では意味が無い」と話をしたことがありました。今年になって、交代をうまく使っているのは、それがクリアになったからなんだと思います。

椛沢:ミシャの戦力に見合う選手が揃ったということなんでしょうね。

河合:青木選手もいきなり大宮戦で使ったり、あれは驚いたね。選手にとっては、ポジション争いが激しくなった。私としては、もっと使って欲しい選手はいっぱいいる。例えば、矢島慎也選手とかね。彼は、すごく練習でも調子が良い時があって、チームに呼ばれたので、明日はベンチに入るんだと思ったら、J3の選抜チームだった・・・(笑)

椛沢:ナビスコの試合で出場した時も、積極的にゴールを狙うプレーが見られて好調さが窺えましたね。

河合:最近は、山田直輝選手もすごく良い。練習ですごいプレーを見せている。もう少し動くところ動かないところの判断がついてくれば、もっと良い。彼が使われているのは、シャドーやボランチのポジションです。

今季のチームのテーマは『我慢』

椛沢:守備の部分でチーム全体の意識が変わっている感じはしますか?

河合:前からはめ込む時と、しっかり引いて、セットしてブロックを作る時の使い分けがすごく良くできている。ただ、ワントップの李選手が、追いかけるのがスイッチになって、全体が押し上げることがあるけれども、そこで連動して後ろもラインを上げないと、ぽっかり中盤にスペースが空いてしまうので、そこは全体が押し上げないといけないのだけども、その意思統一はもっと必要になる。李選手も「自分が前に行き過ぎてしまうことで、後ろに迷惑をかけてしまう時がある」と話をしていて、李選手自身もどこで前で行くのか、セットするのかを突き詰めていかないといけないと思う。ゲームの流れを読む力をもっとつけていかないと、強かな戦いは出来ないかもしれない。

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椛沢:引きすぎて、崩れたというシーンが去年は多く見受けられましたが、今年は守りに入った時間でも、そんなに崩れないですよね。

河合:名古屋戦のように、引きすぎて、前に行く促進力がなくなって押し込まれ続けた試合はあったけども、90分の流れが悪い時に耐えることが出来るようになった。あとは失点を減らすためには、つまらないミスが減っている。それには、まずは無理して縦パスを入れないこと。今年、選手の口から聞かれてくる言葉で、これがテーマなんだろうと思うのは『我慢』という言葉。今までは、我慢せずに、縦パスを入れて、それを狙われてショートカウンターを食らうことがあった。いくら横で回す時間が長くなっても、我慢をする。相手のディフェンスを引き付けてスペースを上げる動きとか、チェックの動きでボールを受けるタイミングを合わすことも必要になる。そのためには、後ろも我慢だし、前も我慢する必要がある。

椛沢:スコアを見ても、そういう感じはしますよね。しっかりと守備をしようというよりも全体の意識として、無駄な失点をしないようにという意識が高まっているということなんでしょうね。

河合:大宮戦は、レッズがガツガツ行った。これは今までのダービーの逆パターンだなと思ったのだけども、柏木選手が試合前に言っていたのは「いつも大宮に立ち上がりにガツガツ来られて受身になっていたけども、今回は僕らが行くんだ。そして球際で戦うんだ。そして前から奪ってショートカウンターで点を獲るんだ」と言っていて、実際に試合は柏木選手が言っていた通りになって笑ってしまった。

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椛沢:その前の甲府戦がゴール前を固められて何も出来なかったですからね。

河合:甲府側は引き分けで終わった時に、城福監督がガッツポーズをしていたくらいだからね。引いた相手を崩すのは難しいという試合だった。甲府はボールサイドにずれて守ってくるから、その時はダイレクトプレーで、相手が追いつけないようにするとか、相手を引き付けて逆サイドに展開するという形も相当、練習をしていたけれども、崩すことが出来なかった。

原口はワールドカップに人一倍出たい気持ちがあった

椛沢:甲府戦では原口が交代したときに納得できない態度を見せてしまっていましたね。
ワールドカップメンバーが発表される前に焦っている様子が窺えました。

河合:原口選手は、ワールドカップに、人一倍出たい気持ちがあったからね。「もし(大久保)嘉人さんが選ばれなかったら同じ立場としてどうして良いか分からない」と言うくらい、ワールドカップに行くために結果を出したかったんだと思う。私は大久保が選ばれたのは、結果も出していることもあるけれども、ベテランの経験値もあるので、それによってチームの雰囲気を変えることも出来る。そういう面もあって選ばれているんだと思う。

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椛沢:大久保もやんちゃな選手だったのに、30を越えて大人になってきた印象があります。

河合:ザッケローニさんはチームワークを重視しているから、その面も評価されたのかもしれないね。ストライカーは、絶対に俺が決めてやるんだという姿を表に出すがために、お前が一人でサッカーをやっているんじゃないんだと思われてしまうところがあるのかなと思う。以前、埼スタのエレベーターでザッケロー二さんと一緒になったことがあって、メモを見せながら原口は良い状態で、中に切れ込んでシュートをしたり、そこからパスを出すプレー。さらに守備の部分も見てねと、身振り手振りで話をしたら、ザッケロー二さんはニコニコしながら、「ゲンキ、グットプレイヤー」と言ってくれた。たまたま一緒にいたクリーニング屋さんも「タカネェ、元気のことを売り込んでいるね」と言われたけども(笑)

椛沢:必ずしも、良い選手だから選ばれるわけでもないわけで、代表メンバーに入るというのは難しいことですね。福田さんは「俺がゴールを獲るんだという、ピッチでのエゴは日本人に足りない部分だし、良いけども、ピッチ外でのエゴは自分のことしか考えていないということだから、ダメだ」と言っていましたね。

河合:ピッチのことをそのまま引きずってはいけないんだね。それは変わっていくと思うし、本人もそれは分かっていると思う。今は、まだ抑え切れない感情もあるんじゃないかな。

椛沢:原口には、4年後に主力としてワールドカップに出てもらいたいと思いますね。

浦和に馴染んできた、『浦和の太陽』柏木陽介

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河合:あと、うちの母親はなんで柏木がワールドカップに呼ばれないんだ!と怒っていて、気持ちは分かるけれども、ここまでの4年間で、チームの和とかコミュニケーションなど色々あるから、今回は選ばれなかったと説明をしたくらい(笑)

椛沢:さすがにザッケロー二監督になって、一度も代表に選ばれない選手は選ばれなかったですからね。しかし、柏木は今年、すごく調子が良いですよね。

河合:去年の状況に今の柏木選手がいて、一年間同じパフォーマンスをしていたら、代表に選ばれていただろうね。

椛沢:今までと何か変化があったのでしょうか?

河合:本人の意識がすごく変わったのだと思う。あとは浦和に馴染んだということがあるんじゃないかな。すごく身体には気をつけているとは言っていたね。代表候補合宿の頃に「俺は代表には興味はない。俺が興味あるのは4年後だ。4年後のために今やっている」と言っていた。彼はその頃から4年後を考えていた(笑)。

椛沢:例えば、ダービーについてのコメントでも今までは「34分の1だよ」と言っていたのが、自然と「ダービーだから勝たないといけない」と違和感のない発言をしていて、その辺りを見ても馴染んできたのかなと思うところはありますね。

河合:柏木選手は「周りからはサンフレッズと言われているけど、俺が最初に浦和に来たんだ!俺も広島だと言われたくないね」と言っていた。「ミシャさんだって後から来ているんだから、それも含めてもサンフレッズは冗談じゃないよ」と言っているくらいだった(笑)彼は、サポーターに認められるまで時間がかかったし、すごく苦しんで、結果を出さないと認められないという思いから、なかなか結果が出なかったけども、苦しむ中で色々と変わったこともあるんだと思う。

椛沢:柏木は浦和の子になりましたね。

河合:そう考えると興梠選手はすぐ浦和に子になったね(笑)。槙野選手もチームのためにという思いはあるんだけども・・・。

椛沢:馴染まなかったのも柏木のパーソナリティが悪かったわけではないですからね。選手それぞれで馴染む時間があるのかなと思います。

河合:柏木選手は、色々な意識が変わったんだと思うよ。サッカーに対して、浦和に対して。色々学んだんじゃないかな。

椛沢:これは私の想像ですけど、浦和に移籍してきた時には、代表に選ばれて、海外に行ってと自分の中でのストーリーがあったけれども、それがなかなか現実にならないという焦燥感みたいなものがあったのではないかと。今はレッズで活躍すればいいじゃないかという気持ちになれているのではないかと思います。

河合:レッズで活躍すれば、その先に代表も見えてくるわけだからね。ミシャさんのサッカーをやっていると、ザッケロー二さんの中でサッカーをやるのは難しいとは思う。槙野選手もそれは同じことなんだけども。槙野選手は広島でミシャさんの下でやっていたら代表には選ばれないから、海外に行ったと思うのだけど、なぜかミシャさんのいる浦和になぜか戻ってきてしまった。

椛沢:そういう意味では原口も不利な部分はありましたよね。ロシアのワールドカップで監督が誰になっているかですね。代表監督がミシャだったら、いっぱい選ばれるでしょうけども(笑)

河合:ミシャさんになったら、みんな選ばれるよ(笑)

椛沢:代表に選ばれるということは、チームの監督と、代表の監督のビジョンがどうなのかということにも関わってきますよね。

河合:全く違うビジョンでやっているチームの選手はなかなか呼ばれないよね。阿部ちゃんくらいのポリバレントで柔軟性がある選手なら呼ばれてもおかしくはないと思うのだけども。

(後編に続く)

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