浦和フットボール通信

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【This Week】フットボールトーク Vol.176 (7/2)

日本代表、ワールドカップ予選ラウンドで散る。

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:現在、ワールドカップブラジル大会が開催中で、決勝トーナメントでの激戦が毎晩繰り広げられてベスト8が出揃いました。日本サッカーも急激的な進歩をしたと言われていますが、世界のサッカーも日々進化しているということが分かる大会ですね。

豊田:予想通りなのですが、アメリカ大陸ホームとなったら南米勢のプレーポテンシャルは半端じゃない。これは観客も含めての印象です。ホスト国のブラジルの応援もかつてのようなサンバの音響での後押しは消えましたが、スタンドから注がれてくるアウェーチームへのプレッシャーはTV画面からも感じることができた。また、目にしたばかりのアルゼンチンがらみのトーナメント戦では、ブラジルサポーターの「アンチ・アルゼンチン」の徹底ぶりにも驚きました(笑)。レッズ戦参戦のベテランである編集長には、王国ブラジルの客席はどの様に映っていますか。

椛沢:今まさに浦和のスタンドで行われている、声と手拍子を中心とした雰囲気作りが、世界の舞台でも行われていて、その迫力はさすがですよね。良いプレーへの賞賛、悪いプレーへのブーイングということもはっきりしていて、浦和の「サポート」というスタイルとまた違う感じはしますが、サッカーを楽しみながら反応をすることでの雰囲気作りが行われていると思います。

豊田:かつて就任直後のトルシエジャパンに選ばれて99年のコパ・アメリカ(南米選手権・エクアドル開催)に出場した井原正巳さんに南米のアウェー体験を聞いたことがあるのですが、「相手のモチベーションはもちろん、ピッチ条件や滞在環境などなど、やり難さは中東を上回る」とコメントしていた。納得はできないのですが、今回の環境を考えればアジア勢勝利無しの結果はうなづける気もします。大半の欧州勢やアフリカ勢も崩れる中で、パワフルな勝ち上がりを見せているオランダやドイツには脱帽するしかないでしょう。

椛沢:日本代表は史上最強の呼び声も高かったチームでしたが、0勝1分1敗で予選敗退となってしまいました。堅守速攻でベスト16に進出した4年前から、日本人の特性にあった、日本サッカーを見出して世界に挑む第一歩の大会だったのではないかと思います。“自分たちのサッカー”をすれば、という言葉が大会前、大会後と多く聞かれましたが、自分たちのサッカーを見出しつつ、相手があることなので、それを出せないようにされた時に、どうするかという手法も持ち合わせていかなかった。この意味ではまだまだ未熟だったのではないかと思います。

豊田:確かにマンU、ミラン、インテルのメンバーが顔をそろえるラインナップは史上最強を思わせましたが、もちろんサッカーは個々の能力の足し算では測れません。「引き出し」が少なかった経験値の低さには隠しがたかった。その意味では先ほどの話にも通じるのだが、準備方針に問題があったことは否めないと思います。かつての代表チームと比べても肝心の南米でのアウェー戦など、「本質的な強化」に繋がる厳しいテストマッチの舞台があまりにも少な過ぎました。

椛沢:確かに今回の代表は、ワールドカップイヤーに入ってからは、特に自信を失わないための雰囲気作りだったのか、厳しい対戦相手とのテストマッチも行われませんでした。メディアも厳しいことを言う雰囲気はなく、期待感だけが溢れる状況がありました。この結果を見て言うわけではないですが、何かその期待感だけの怖さを大会前に感じる部分もありましたね。そんなに楽観的で本戦に突入をして、大丈夫なのかという……。そんな予感が的中をしてしまったわけですが……。さて、先日は浦和高校サッカー部“前人未到の69連勝”の立役者として活躍された、本誌でもお馴染みの轡田隆史さんと、小宮悦子さんの元ニュースステーションコンビによるトークショーが浦和で行われましたが、轡田さんは興味深い言葉を数々お話されていましたね。初めて日本代表が結成されて上海遠征をした時のメンバーには浦和中学のメンバーがいた、ということなど、サッカーの街・浦和のサッカーの歴史を語りつつ、今後についても「Jリーグが開幕した時に早稲田大学の後輩でもある川淵三郎初代Jリーグチェアマンと対談をした時に、日本がワールドカップで優勝するには50年が掛かるとお話をした。20年前にこの話をしたので、あと30年は掛かるということです」。日本サッカーは、ゆっくり経験を積み上げながら、成長をしていかなければならない、ということをお話してくれました。

豊田:有意義な時間でしたが、来場の方々の年齢の高さがちょっと気になりました。若いファンにこそ聞いて欲しい内容でしたので……。

椛沢:確かに若い来場者は少なかったですね。若い来場者からは、もっと昔の話が聞きたいという声も出ていたようですし、子供たちにこのような機会を作って欲しいという少年団関係者などもいたようです。さて、日本は5大会連続でのワールドカップ出場になりましたが、これまではワールドカップに出場することが目標だったと思いますが、ここからは次のステージ、ワールドカップに出場をして、さらに勝つということを目標に掲げて進んでいく所にようやく立ったという時点なのかと思います。

豊田:ただ、見栄えするゲームが出来そうなナショナルチームを呼んでスポンサー意向の試合で動員を計るという図式が見えるところが気になりますね。ここが再考されないと抜本的な改革は望めない気がします。早くも次期監督候補の名前やギャラがメディアに取り沙汰されていますが(苦笑)協会主導の改革への努力に期待したいです。

椛沢:ビジネスをしなければいけない部分もあるのだとは思いますが、そのバランスがビジネスに寄れば、強化の足かせになってしまうことは間違いないですね。ナショナルチームの魅力が落ちれば、元も子もないわけですから、欧州に渡っての強化試合なども積極的にやっていく必要があると思います。世界のお祭りが終われば、各地域に戻ってのお祭り、リーグ戦が再開されます。各地域での戦いがベースとなって、世界の舞台があると考えれば、この地域での戦いを盛り上げていくことが、日本におけるサッカー文化を根付かせることになり、日本サッカーのレベル向上にも繋がっていくことだと思います。レッズは原口元気がドイツに移籍。山岸がレンタルで山形に移籍するなど、多少の動きがありましたが、首位で序盤戦を折り返して、8年ぶりのリーグ優勝に向けて、どのような戦いを見せてくれるのか楽しみにしたいと思います。

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