浦和フットボール通信

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浦和への伝言2010 大原ノート – vol.1 蒲公英(タンポポ)

浦和一女高OGのおふたりが、駒場~大原~浦和美園を巡る郷土の自然や史跡を楽しく散策します。

vol.1〜蒲公英(タンポポ)

■新しい春がやってきました。浦和のフットボールライフはまだ早春で、鹿島では顔を出したばかりの新芽に天気と同じ冷たい雨が降り注いでしまいました。でも、植物は一日二日の気温の変化などに惑わされず、日照時間が長くなればちゃんと芽を出し、花を咲かせていきます。とはいえ、彼らはのんびりと日向ぼっこしているわけではありません。それどころか、静かで過酷な生存競争を日々戦い抜いているのです。

■大原の練習場の周りにも、浦和の街中のアスファルトの隙間からも、埼玉スタジアム周辺の広大な空き地にも、小さな太陽のようなタンポポが咲き始めましたが、同じにみえるタンポポにも国内組と海外からの移籍組がいるのをご存知ですか? カントウタンポポ、カンサイタンポポなどの在来種に対して、セイヨウタンポポに代表される外来種がどんどんと生育場所を広げています。

■両者の交配種もあり絶対ではないそうですが、在来のタンポポと外来のタンポポは花を支えるがくのような部分で見分けることができます。花を裏返してみると緑色の鱗片が何枚も重なり合って花を支えています。その鱗片がぴったりと花びらと同じ方向に重なっているのが在来種、先のほうが反り返って花びらと逆方向にくるっとしているのが外来種です。外来種のほうが全体にがっちりしていて、花期も長く四月から九月、つまり秋になっても咲いています。

■そこでホーム開幕戦の前日、練習が終わったあとの午後三時ごろ大原に行ってみました。ところが、ちょっと寒さが続いたせいか咲いてないんです。正面玄関から外をぐるっと左手にまわって、とうとう高速道路の下まで歩いてしまいました。ここで一輪発見! そっと花を傾けてみると国内組です。なかなか見つけにくくなってしまった日本のタンポポに最初に出会えるなんてラッキー! その後、練習場に戻ってクラブハウスと反対側の土手を調べると、こちらにはたくさん咲き始めていましたが全部移籍組でした。

■適応力のあるものが生き残っていく自然のおきてのまえには仕方ないことかもしれません。でも在来種を守るためにはセイヨウタンポポを引っこ抜けばいいわけではなく、畑地や用水の土手のような日本らしい環境を保全するところから始めなくてはならないそうです。一輪咲いていた国内組タンポポの向かいの高速道路下にビオトープが作られています。日本のタンポポにやさしい環境が再現されるといいなと思います。

■でもフットボールは別ですよ。ユース組も移籍組も外国籍も関係ありません。いずれかが保護される環境なんてありえません。より適応力のあるものが生き残るべきです。

<了>

ももせ・はまじ
東京都生まれ。埼玉大学附属中学、浦和一女高、
多摩美術大学卒業後、(株)世界文化社に入社。
保育園、幼稚園のための教材企画、教材絵本、
保育図書の編集に携わる。ワンダーブック等の
副編集長などを経て、現在同社ワンダー事業本
部保育教材部副参与。保育総合研究会会員。蕨市
在住。

くろき・ようこ
川口市生まれ。埼玉大学附属中学、浦和一女高、
千葉大学工学部写真光学科卒業。大学在学中から
研究テーマとしていた撮影技術を生かしフォト
グラファー、イラストレーターとして活躍。現在、
セツ・モードセミナー勤務。川口市在住。

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