【河合貴子の試合レビュー】森脇が決勝ゴール。「ブーイングは気持ちよかった。チャントは涙が出そうになった」2015Jリーグ1stステージ第4節vs松本山雅<柏木、那須、高木、森脇、関根コメントあり>(2015/4/5)
前半の決定機を決め切れなかったが、柏木も「楽しく出来た」
埼玉スタジアムの桜も見ごろを迎え、花曇りとなった4月4日。バスを24台チャーターするなど、埼スタに乗り込んで来た松本のサポーターは約3000人。緑のタオルマフラーの歌声が試合前から響いていた。今シーズンからJ1デビューとなった松本サポーターが初々しく感じられた。
コイントスにより、浦和のゴール裏を背負って闘う陣地を松本が選択し、浦和のキックオフで試合が始まった。試合前から予想されていたように、松本は両サイドの選手が退いて5バックで守備を固めて、カウンターを狙ってきた。
那須大亮選手は「ボールを保持する時間が多いと思っていた。相手は、カウンターとセットプレーだけ、DFとしてはリスクマネージメントで集中力が問われる試合だった。チャンスは多かった。前半に決めていれば、後半はもっと楽になれたと思う」と話すほど、立ち上がりから積極的にゲームを支配していった。
3分、高木俊幸選手がボール奪ってドリブルで持ち込みファーストシュートを放つと、9分梅崎司選手のシュートのこぼれ球を高木選手が狙うも空振り、柏木陽介選手がシュートを放つも枠を捉えることが出来なかった。
高木選手は「ゴールが見え過ぎて空ぶった。自分の力不足だ。冷静にボールに当てて振れていれば、ゴールに入るシーンだった。点を獲れるチャンスが多くあった。1点獲れたら、複数ゴールは行けたと思う。前半、あれだけチャンスがあって、決め切れずに最後まで危なかった。ゴール前のシュートまで行けていた。ゴールに入るか入らないかは課題だ」と自身がゴールを決められず悔しがった。前半の決定機を考えると6本はあった。
29分に柏木陽介選手の縦パスに宇賀神友弥選手がDFの裏に抜け出すも撃ち切れず、31分には関根貴大選手のクロスをズラタン選手が反転してシュートなどことごとく浦和は、ゴールネットを揺らすことが出来なかった。
柏木選手は「良いゲームだった。なかなか点が入らなかったが、決めるところで決めていたらスーパーだったね。短いパスとロングパスの使い分けも良かった。サイドからチャンスも作れた。クロスの工夫やミドルシュート撃ったり、ワンツゥーで崩したり攻撃のバリエーションがあった。マキもモリも高い位置でプレーが出来た。ワンタッチ、ツゥータッチで後ろがボールを回せたので、リスクを負うパスの緩急を付けて入れられたし、自然にみんなが連動していた。楽しく出来た」と笑みが零れた。しかし「ズラ(ズラタン選手)にボールが入った時のシャドーの距離が広過ぎた。どちらか1枚が、ズラの近くで顔を出せればもっと良くなる。あと、セットプレーで点が獲れたらもっと良かった」と厳しい口調で課題をあげた。
松本は前線にオビナ選手を1枚残してカウンターの機会を狙っていたが、オビナ選手に那須選手が上手く身体を入れて対応し決定的なチャンスを作らせなかった。浦和は、前半のゲームを支配しながらも決定機を生かせず0-0で折り返すこととなった。
森脇が決勝ゴール。「ブーイングは気持ちよかった。チャントは波が出そうになった」
後半に入ると、松本は中盤をダイヤモンドの形に変えてきた。反町監督は「前半、柏木の所で岩間が引っ張られて、バイタル付近で思うままにされていた。配置を変えて安定したが、ボールを奪う位置が低過ぎて攻撃に繋げる力が足りなかった」と悔しがった。
後半、立ち上がりにチャンスを迎えたのは、松本であった。48分、浦和のDFの一瞬の隙を突き、岩上祐三選手のパスを受けた池元友樹選手が思い切って狙ったシュートは、クロスバー直撃!幸運にもクロスバーに助けられ、先制点を献上せずに事なきを得た。松本が後半に放ったシュートは、この1本だけであった。
浦和は、その後も攻め続けるがゴールネットを揺らすことが出来ずにいた。57分には、柏木選手が自ら交代を願い出て鈴木啓太選手がピッチに入った。柏木選手は「疲労かなぁ・・・。頑張り過ぎた。フィーリングは良かったんだけど、自分よりももっと良い選手が出れば良いと思った」と振り返った。
62分には梅崎司選手に代えて武藤雄樹選手を、77分には高木選手に代えて李忠成選手を投入し攻撃の活性化を図った。80分、関根選手がドリブルでゴールライン際を抉ってクロスを入れるもゴール前に飛び込んでくる選手がいなかった。アウェーで勝ち点1狙いの松本の前に時間だけが過ぎて行く。
そして、遂に歓喜の瞬間が訪れた。85分、関根選手がドリブルで相手DFを釣り、中央のフリーの森脇良太選手に折り返すと、森脇選手は左足でシュート!ゴール左隅へと吸い込まれていった。試合を通して浦和が放ったシュートは、実に23本であった。
森脇選手は「奇跡!奇跡が起きた!年に1回だよ!」と試合後も興奮が冷めやらず喜んでいた。ヒーローインタビューの時のブーイングとチャントについても「ブーイングは、気持ち良かった。幸せ!チャントは涙が出そうだった。ここで泣いたら馬鹿にされると思い我慢した」と話していた。そして、ゴールシーンを振り返り「誰でも良いから1点獲ってくれ!1点決まれば状況は変わると思っていた。ゴール決まる前のシーンでクロスを選択して中に合わせられなかった。マキが「モリ、シュート撃って良いぞ」って、那須さんも「どんどん撃って行け」って言ってくれた。タカが良い仕掛けをすると自分がフリーになれたので、良いタイミングで出してくれた。コースが見えた」と話しチームメイトの後押しに形で応えた。
森脇選手の値千金のゴールで、浦和は松本を1-0で下した。
今日のワンポイント「関根貴大選手」反町監督「うちに欲しい」」
「関根は上手いね。良い選手だ。うちに欲しい」と記者会見で反町監督を唸らせた関根選手の動きだ。退いた相手に対してドリブルで相手DFを釣る動きで森脇選手をフリーにすることができた。森脇選手のシュートは素晴らしいものであった。だが、試合全体を通して関根選手の果敢なドリブルで相手DFを1枚剥がす動きやDFを釣る動きは、見事であった。「自分は、守備よりも攻撃だ。自分の持ち味を90分間出来た」と関根選手は満足気に話した。ハーフタイムには「ドリブルで仕掛けたら、モリ君がフリーになるので2回に1回ぐらいパスを出す」と話していた。その言葉とおりに関根選手は、DF2枚を引き連れてドリブを噛ましてパスをだした。関根選手は「まさか、モリ君のシュートが入ると思わなかった」と笑った。頼もしい19歳が浦和を勝利に導くゴールを演出した。