<ハイライト動画付き>【河合貴子の試合レビュー】柏木、阿部のダブルボランチが活躍。柏木「黒子に徹していても目立つプレーが出来ている」2015Jリーグ1stステージ第17節vs新潟戦<柏木、平川、興梠、武藤、那須、西川コメントあり>(2015/6/28)
今日のポイント「黒子の活躍、ボランチの柏木選手、阿部選手」
PKによる不運な1失点は致し方ない。守備のバランスが崩れて、足が止まってしまい気の抜けたような2失点目が無ければ最高のゲームであった。攻守に渡り、ピッチの中で共通意識を描けてプレーが出来ていたことは、本当に素晴らしい。
特に、ボランチの阿部勇樹選手と柏木陽介選手だ。柏木選手は2アシストしただけでなく、守備でも身体を張っていた。柏木選手は「相手がドリブルで仕掛けてくる雰囲気があったから、ケアして走った。普通にマークが外れれば戻りは頑張る。コンディションも良いし黒子に徹していても目立つプレーが出来ている」と話した。ピッチの中央で黒子に徹している阿部選手と柏木選手の存在が、連動した守備からコンビネーションの良い攻撃を生んだ。
無敗で1stステージ制覇
埼玉スタジアムを夕焼け空が茜色に優しく包み始めたころ、新潟戦のキックオフの笛が鳴った。1stステージ制覇を果たした浦和の男たちは、勝者のメンタリティーを胸に刻みピッチで輝きを放っていた。
出場停止の宇賀神友弥選手に代わり、ミシャ監督は試合前日に明言した通りに平川忠亮選手をスタメンで起用(リーグ戦は5月2日G大阪戦以来のスタメン)。右のワイドに平川選手を置き、左のワイドに関根貴大選手を起用した。平川選手は「タイトルを獲得した後の難しい試合で、ゲームの入りがポイントとなると思っていた。今の浦和が良いのは、チームとしてDFが上手くいっているからだ。試合に出て無い間も試合を見て、イメージをしていた」と試合勘を鈍らせないようにしっかりとした準備をしていた。
前節の湘南戦で最下位を脱出した新潟は、無敗の浦和に傷を付けて浮上のきっかけを作りたかった。新潟は5-2-3の布陣で前線からプレスを掛けながら守備的に来た。新潟のハイプレスにより思うような攻撃が出来ない中で、12分には関根選手のドリブル突破からのクロスをニアーで梅崎司選手がシュートを狙うが、一足早く守田達弥選手にキャッチされてしまった。16分には、中盤でボールを回そうとした関根選手のパスがズレてしまい、そのボールを拾ったラファエル・シルバ選手が田中達也選手へ落とし、田中選手からのスルーパスにラファエル・シルバ選手がDFの裏へ抜け出すも西川周作選手が飛び出してクリア。しかし、そのクリアーボールをフリーで山崎亮平選手が無人のゴール目掛けてシュートを放つが、決定的なシーンでふかしてしまい浦和は失点を免れた。
西川選手は「シュートを撃たれる前に処理しようと狙っていた。リスクはあったけどトライした」と話した。新潟にこの1点が入っていたら、試合の流れは変わっていただろう。
苦しい時間帯を乗り切った浦和は、徐々に本来のペースを取り戻していった。「新潟は前からプレスを掛けて来た。マンマークで来ていたので、僕とウメとモリでポジションチェンジしながら、相手が掴み辛い動きが出来るようになった。相手が困る動きが出来た」と浦和が主導権を握れた要因を平川選手は話してくれた。
PKで先制。興梠「今日はPKが来ると思っていた」
19分、森脇良太選手から楔のパスを受けた興梠慎三選手が梅崎司選手へダイレクトパスを送ると、梅崎選手がペナルティーエリア内で切り返したところをコルテースに後ろから倒されてPKを獲得。これを興梠選手が決めて浦和が先制した。
興梠選手は「最初から右に蹴ろうと思っていた。迷いがあったら外すからね」とニヤリと笑い「実は、アップ中にPKありそうだなぁ~と思っていた。PKになった時、来たなぁ!と思った。だいたいPKを獲った人が蹴るパターンが多いから、ウメちゃんに蹴る?って聞いたら蹴らないって言うから、じゃあって頂きました」と予感的中。
35分には、阿部勇樹選手が武藤選手とワンツーで抜け出して放ったシュートはクロスバー直撃。跳ね返りをダイレクトで武藤選手が右足を振り抜き2点目を叩き出した。阿部選手は「武藤が決めてくれたので良いんじゃない。場面、場面で良いところに顔を出せたし、限られている中、ビックチャンスでゴール近くに行けた」と話した。試合の序盤は新潟の守備に苦戦した浦和であったが、2-0で前半を折り返した。
武藤の2得点。「良い所に返ってきた」
1点を追う新潟は、田中選手に代わり山本康裕選手を入れて攻撃の組み立てを図るも、浦和は攻守に渡り落ち着いていた。そして50分、武藤選手からのパスに身体を上手く入れて抜け出した興梠選手のシュートは、ピンボールのように両ポストに弾かれて武藤選手の下へ、武藤選手がゴールへ流し込んで3点目。跳ね返りで2ゴール決めた武藤選手は「ボールを押し込んだだけで、みんなが崩した形が点になった。自分は、ゴール前に入り込んで零れ球を狙った。零れ球だとマークが外れやすいから、良いところに返って来てくれた」と嬉しそうに話した。
興梠選手は「2人抜く前に撃てた。ツータッチめが思い通りにいかなかった。武藤の思いが伝わってポストに当たったんだ。乗っている奴に零れて来るんだ」と少し悔しそうに話したが、57分には阿部選手と柏木陽介選手の挟み込むプレスでボールを奪い、柏木選手からのスルーパスで興梠選手がしっかりとゴールを決めて4-0と新潟を突き離した。興梠選手は「陽介から良いボールが来た。今までも陽介からのパスでゴールを決めるパターンはあったが、陽介がボランチに下がってからラストパスの来る機会も減っていた。落ち着いて冷静に決められた」と今度は嬉しそうに話した。
浦和に4点目が入ると新潟ベンチは慌ただしく動き、山崎選手から指宿洋史選手、大野和成選手から成岡翔選手と2枚代えを行ない、システムも4-4-2に変更。浦和も平川選手に代えてズラタン選手を投入。ズラタン選手のワントップとし、興梠選手はシャドーへ梅崎選手を左のワイド、関根選手を右のワイドとポジションチェンジして対応した。68分に山本選手がDFの裏へふわりと浮かしたボールに対して、ペナルティーエリア内で加藤大選手を関根選手がプッシングしたとみなされ、厳しいジャッジであったがPKの判定。ラファエル・シルバがゴール右に蹴り込み4-1。不運な形で失点をしたものの77分には、柏木選手のFKを那須大亮選手が、高さのあるヘディングで合わせて見事なゴールを決めた。
5得点も嫌な2失点。西川「チームは勝ったし、無敗記録も更新したが何かモヤモヤしている」
那須選手は「陽介が自分の良さを引き出してくれた。セットプレーで決めたのは、久しぶりだった。陽介本人もフィーリングが良いと言うぐらい良いボールが入って来る。決められたのは、良かった。夏の暑いハードな試合や苦しい試合などこれからセットプレーは重要になってくる。セットで点が獲れて本当に良かった」と柏木選手のボールのクオリティーを褒めていた。しかし、81分に加藤選手のクロスをファーサイドで指宿選手がフリーで受けた右足シュートが決まったシーンを那須選手は「1失点目はアンラッキーだが、崩されていない。けど、2失点目はチームとして要らなかった」と厳しい口調で話した。
西川選手も「PKはGKの見せ場と思って臨んだが・・・。でもあの失点は割り切れた。5-1で終わらせたかったのに・・・。嫌な獲られ方だった。確かにきつい時間帯はある。ラインもバラバラで足が止まってしまっていた。チームは勝ったし、無敗記録も更新したが何かモヤモヤしている」と頭を掻いた。西川選手は、無失点勝利を狙っていただけに悔しさが滲み出ていた。
浦和は、5-2と違いの差を見せ付ける結果で新潟に勝利を収め、1stステージを12勝5分け無敗で有終の美を飾った。
試合後には1stステージ優勝報告が行われた。阿部選手が「今日の勝利で1stステージを無敗で優勝出来ました。これは、みなさんと共に闘ってきた結果です。けど、僕らの闘いはまだまだ終わりじゃない。まだまだ続きます。みなさんと喜べるように全力で闘って行くんで、これからも共に闘い、進んで行きましょう」と挨拶をした。そして、ゴール裏には「真の王者へ突き進もう!浦和レッズ!」の横断幕が掲げられていた。
無敗で終えた1stステージ最後を締めくくる「WE ARE DIAMONDS」の歌声は感無量であった。