河合貴子のレッズ魂ここにあり!「終わりなき道~高木俊幸選手」
J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。
もがき苦しんだ中で生まれた高木選手の移籍初ゴール。だが、これで終わりではない。
ゴールが決まった瞬間、ここまで苦しんできた全ての思いを吐き出すように高木俊幸選手は、拳を握りしめ仁王立ちになり雄たけびを上げた。
9月11日、柏戦の勝利を呼び込んだゴールは、浦和を愛する人々が待ち望んだ高木選手の移籍初ゴールであった。
ゲームの主導権を握りながらチャンスを作れていたが、ゴールネットを揺らすことが出来ずに時間だけが過ぎ行く中で、後半30分を過ぎたあたりだっただろうか、ベンチの左脇でアップしていた高木選手のアップのスピードが上がった。
最初の交代枠は、後半28分に興梠慎三選手から李忠成選手交代で使われていた。2枚目の交代カードは、後半34分に青木拓矢選手が呼ばれた。交代枠は、あと1枚。試合の展開によっては、出場機会があるかも知れないし、ないかも知れない。それでも高木選手は、いつ呼ばれても良いようにアップの足を止めることはなかった。
そして、やっと高木選手に声が掛かった。6分+アディショナルタイム、最後の切り札として高木選手をピッチへと送り込んだ。高木選手は「最後、自分が決めるしかない!」と強い思いでピッチに立った。その強い思いは、今までとは変わらない。だが、今までは何とかしようという気持ちの焦りで力んでしまったり、緊張感でイメージ通りのプレーが出来ずにいた。
「いつもと違って、落ち着いて試合に入れた」と高木選手は冷静さを失わずにいた。出場時間は余りにも短かったが逆にそれが功を奏し、攻撃的プレーヤーの高木選手にとって『ゴールを決める』ただそれだけに集中して、余計なことを考えないで試合に入れたのかも知れない。
槙野智章選手からパスを受けた高木選手は、実に冷静であった。相手DFを2枚交わし、ペナルティーエリア内で更にシュートコースを消しにかかったDF2枚を手玉に取るように切り返しからゴール右隅狙った。シュートストップに入った菅野孝憲選手の目の前でボールは手をかすめるようにバウンドが変わり、ゴールへと吸い込まれて行ったのだ。
移籍初ゴールが決まるまで、本当に長い道のりであった。昨シーズン、清水でリーグ戦32試合に出場し、背番号11番を付け中心選手として活躍していた高木選手は「スタメンのポジション争いは厳しい。取れる保証はない。でも、その覚悟あって浦和にやってきた」と敢えて厳しい環境に身を置くことでスキルアップを目指した。
自分の名前の画数と同じ31を背番号にした。「新天地でのチャレンジ!良い意味を持った番号だ。31番、新しい場所でチャレンジするのに良い番号だ。浦和のサポーターの前で活躍するのは、気持ちが良い。その感覚を早く味わいたい。2桁ぐらいのゴールを決めたい」と入団当初は話していた。
高木選手のセットプレーは以前から定評があり、パスのセンスもドリブルの切れもあり技術の高い選手である。高木選手の高いスキルが、浦和のフットボールに融合出来れば、攻撃のバリエーションも増える。当然、高木選手に対する期待は大きかった。
今シーズン開幕戦の湘南で後半から出場した高木選手は、期待に応えるようにスピードに乗ったドリブルやFKからゴールを狙いスキルの高さを見せつけた。後半13分、高木選手が狙ったFKは惜しくクロスバーに直撃!「周りも行け、行けと言ってくれてモチベーションが上がるシチュエーションだった。FK、決まる感触はあった。あと少し、もう少し風向きを考えて押さえたら入った」と悔しがりながらも浦和で活躍出来る手応えを感じていた。
しかし、そう簡単に上手くいくものではなかった。高木選手は「今までは、感覚的にここに味方がいると思ってパスを出していた。周りも見ないし、展開を考えていなかった。浦和に来て、味方に合わす感覚を実感している。周りを見て、判断してパスが来そうな所へ流れて、もらった瞬間にどう動けば味方が空くかを意識するようになった」と感覚だけで今までプレーしていた意識改革が始まった。
前線3人のコンビネーションにもリズムが生まれ始めた。「点を獲れるチャンスは、多くある。あとは、シュートが入るか入らないかだ。1点獲ったら複数ゴールを決められると思う。自分は、ゴールを狙う責任がある」と高木選手はゴールに拘っていた。
高木選手は、物凄く生真面目な選手である。その性格さ故に、ゴールを決めてチームの勝利に貢献したい思いが強く、ゴール前での冷静な判断に欠けていき自分自身を追い込んでしまった。
「周りが見えなくなって、シュートばかりの悪循環だ。外しまくっている」と苦しんでいた。それでも1点決めれば、メンタル的に楽になれると思っていた。7月19日、広島戦で自身が獲得したPKを蹴った。だが、無情にも決めることが出来ずに浦和は、1-2で広島に惜敗した。
試合後、高木選手は「自分にとって、これ以上残酷な結果は無いと思う」と男泣きをしていたのだ。「気持ちをどう切り替えてよいか分からない」と話していた高木選手は、PKを外したショックを引きずりながらも、必死に前を向いていた「いつかは、自分が必要な場面が来る。得点が欲しい時や仕掛けたり、詰まった流れを打開出来る準備をする。今は、腐らずにやる。今は、一番良いよ。努力して拘ることが出来るから・・・」と笑みを見せた。
もがき苦しんだ中で生まれた高木選手の移籍初ゴール。だが、これで終わりではない。ここからが、始まりなのだ。高木選手は、何度も壁にぶつかりながらも終わりなき道を歩み続け、ゴールへと突き進んで行く。
Q.川崎の大久保嘉人選手が、足の親指の皮膚が硬くなりスパイクが履けないほどの痛みがあったそうです。皮膚が硬くなり痛みがでることはあるのでしょうか?
A.診察してないので具体的なことは分かりませんが、スパイクが合わずにプレーをしているうちに、圧迫や摩擦で皮膚が硬くなりタコが出来ることがあります。タコが当たり痛みがでてしまいます。タコは削れば良いですが、床ずれを予防するような人口皮膚を貼ったりします。また、骨折により指が変形して痛みが出ることもあります。オーバーラップと言って足の指が変形して重なってしまい、つま先が当たって痛みが出ます。
川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
http://www.kawakubo-clinic.jp/