浦和フットボール通信

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<ハイライト動画付き>【河合貴子の試合レビュー】「清水の裏をかく秘策も選手達が柔軟に対応」2015Jリーグ2ndステージ第11節・清水エスパルス<阿部、宇賀神、西川、武藤、森脇、興梠、青木、ペトロヴィッチ監督コメントあり>(2015/9/20)

今日のポイント!「柔軟に対応した選手たち」

ミーティングでは、チェルシーのディエゴ・コスタ選手やバイエルンのレヴァンドフスキ選手の鋭い前プレスのVTRを見たそうだ。「90分、前の選手たちがDFしているVTRを見た。監督から『お前らが、走らないでどうするんだ?!』と言われた」と武藤選手は世界の名プレーヤーの前線からの守備に刺激を受けていた。

清水戦に向けて前線から嵌めこむ守備をかなり意識して練習を行なって来た。その意識は、横浜FM戦とナビスコカップ新潟戦を大敗した危機感からチーム全体にあった。

槙野智章選手の出場停止を受けて、練習でやってきた3DFとは違う形に選手たちは上手く適応出来るスキルの高さがあった。宇賀神友弥選手は「4バックで、その中で阿部さんがラインに入ると中盤が足りなくなる。細かくしゃべろうと阿部さんとラインの上げ下げをやった。ズラが入ってツートップになり、点を狙う状況で4-4-2でブロックを作った。システムチェンジしても機能出来るイメージはあった。後ろの4枚のバランスも取れていた」と話した。

阿部勇樹選手は「駆け引きが面白かったが、頭が疲れた。頭を久しぶりに使った。勝てて良かった」と疲れた表情をしながらも勝利を噛み沁みていた。今日のポイントは、前線から嵌めこむ守備だけでなく、攻守に渡り早い切り替えから可変的な守備やシステム変更にもコミュニケーションを取りながら柔軟に対応出来た選手たちだ。清水の個人技に対して、組織的フットボールの強さを浦和が魅せ付けた。

清水に勝利して、年間順位も1位に。

秋の大型連休となったシルバーウィークの初日、エコパスタジアムにも浦和から沢山のファン・サポーターが足を運んだ。年間優勝を狙う浦和は、残留争いをしている清水のホームに乗り込んだ。

累積カードにより出場停止となった槙野智章選手を欠いた浦和は、右のストッパーに永田充選手、左のストッパーに森脇良太選手を起用して清水戦に向けて練習をしてきた。しかし、ミシャ監督は試合当日に清水の裏をかくように秘策を打って出たのだ。

ナビスコカップ準々決勝のホーム新潟戦でみせた4-1-4-1のシステムと取り、左のサイドバックに宇賀神選手を起用し、練習でして来た前線から嵌めこむ守備には変わりがなかった。槙野選手が左のストッパーを務める3DFの時に、ボランチの阿部勇樹選手がDFラインに入るイメージで選手たちには戸惑いも迷いもなかった。

宇賀神友弥選手は「ナビスコの第2戦でもやった中で、やれる手応えはあった。ギリギリまで分からないと言われていたが、しっかりと出来ていたので問題はなかった」と話した。

浦和のキックオフで始まった試合は、開始直後に清水が圧力を掛けてきたが、浦和の可変的システムに戸惑っていたのは、清水の方であった。10分過ぎ頃から主導権を握った浦和は、守備になると前線から嵌めこみ、4DFは中をしっかりと固め、ボールサイドのワイドの選手が下りて来てスペースを消した。また、ワンボランチの柏木陽介選手の中央のスペースもシャドーが下りて清水にスペースを与えなかった。

ミシャ監督は「相手のチョン・テセとウタカ、(大前)元紀に時間とスペースを与えたら止めるのは難しい。供給出来ないように、アグレッシブに前からプレスを掛けるように指示を出した」とニヤリと笑うように試合後の記者会見で話した。

浦和は、攻守の切り替えが早く攻撃面ではサイドバックの森脇良太選手と宇賀神選手が高いポジションを取り、更に梅崎司選手と関根貴大選手も高いポジションでコンパクトにしてテンポ良く仕掛けることが出来た。

だが、最初に決定的なチャンスを作ったのは、清水であった。13分、ミッチェル・デューク選手の鋭いカウンターからチョン・テセ選手、大前元紀選手とパスが渡り、大前選手がシュートを放つも身体を張ったDFで上手く凌ぐことが出来た。

その直後、那須大亮選手がインターセプトからそのままドリブルで持ち上がり、高木俊幸選手のクロスを武藤雄樹選手がヘッドで合わせるが決まらず、18分には関根選手のマイナスのクロスに高木選手がワントラップシュートを狙うが決めることが出来ずにいた。

浦和が主導権を握り、テンポ良く仕掛ける中で森脇選手から関根選手へと縦にパスが通り、関根選手のクロスに武藤選手がしっかりと合わせたヘディングシュートは、決まったと思いきやオフサイドの判定。「関根から凄く良いボールが来てヘディングが決まったと思って喜んだのに、オフサイドの判定。自分の動き出しが悪かったから・・・」凄く悔しそうに武藤選手は振り返った。

チャンスは作るのに、決め切れない展開の中で、押し込まれた清水は、カウンターのチャンスを狙っていた。関根選手は「相手は、4-4-2にで、自分たちは前から嵌めこみ攻守の切り替えが大事だった。ボールの取られ方が悪かった時に、カウンターに持ち込まれた」と話した。

西川周作選手は「スライドの早さと、ボールを取られた瞬間に、一番近い選手が相手を見ること、前線から追って押し込むことが出来ていた。外を通されることは、割り切って中を締めていった」と攻守の切り替えと中を締めることを意識していた。

先制点は、意外な形で浦和にもたらされた。柏木選手のFKをニアで阿部勇樹選手が逸らし、相手DFがクリアーしたボールを森脇選手がヘディングで押し込み先制点を叩き出した。ゴールを決めて喜ぶ森脇選手を尻目に、「オウンゴール」の判定。

森脇選手は「自分のゴールだ!って思ったら、電光掲示板にオウンゴールってなっていた。試合後にシャワー浴びながらみんなに「あれは、モリのゴールだよ!」「可愛そうだったね」などと慰めてもらっていたら、強化部長に「あれは、モリのゴールに訂正されたよ」と言われた。そしたら、急にみんなが、手の平を返したように「あれは、オウンゴールだよ」と言い出して、その変わり身にビックリした」と変わり身の早いチームメートに驚きながらも、嬉しそうに話していた。

思わぬ形で先制点を手にした浦和であったが追加点を奪えず、38分には大前選手の左CKにチョン・テセ選手がフリーで飛び込み同点とされてしまった。西川選手は「上手く、フリーになられてしまった。ショートCKで来るのか、曖昧になった。もう少し、整理しないといけない」と話していた。

前半を1-1と同点で折り返し、勝負は後半へと持ち込まれた。

後半の立ち上がり決定的なチャンスを作ったのは、清水であった。ピーター・ウタカ選手がエリア内で身体を張って粘りミッチェル・デューク選手へパスを送るが、走り込んできたミッチェル・デューク選手のシュートは僅かにゴール右へと逸れて行った。

そして55分、梅崎選手が興梠選手へ縦パスを入れた戻りのボールを右エリアの深い位置に走り込んだ関根選手にパスを送り、関根選手のクロスにファーサイドに走り込んだ興梠選手が綺麗に右足で合わせて2-1とした。

アシストをした関根選手は「前の試合でクロスが、相手に引っ掛っていたから、武藤君に綺麗に入ったときはオフサイドだった。でもチャンスが出来るとおもった。後半、良い形で攻撃も流れが出来て、守備も出来ていた。周りとの関係で3点目はオフザボールの動き出しから慎三君が決めてくれた。練習で遣っていることが上手く嵌った」と嬉しそうであった。

興梠選手は「調子は悪くなかった。ポストプレーは上手く出来ていたが、チャンスがある中で決め切れずに悔しい思いをしていた」と安堵の表情を浮かべていた。追加点で波に乗る浦和は、66分高木選手がドリブルでDFを引き付けて武藤選手へと預け、武藤選手からオーバーラップしてきた森脇選手へと揺さぶってクロスを上げると、武藤選手が冷静にトラップから豪快なシュートを叩き込み3-1。

2点リードした浦和は、68分には高木選手に代えてズラタン選手を入れて興梠選手とツートップを組ませ、シャドーの武藤選手をボランチに落として4-4-2とシステムを変更した。

その5分後には、興梠選手に代えて青木拓矢選手を起用して青木選手にボランチを任せ武藤選手を前線へと上げた。青木選手は「4-4-2は、しっくりいった感じだった。陽介とボランチのバランスも良く、受けて捌くことが出来た。相手が攻めて来ていたので、取ったときがチャンスだと思った。相手が前掛りに来ていたから、早く付けて行こうと思った。メチャクチャ点を獲りに行く感じでは無かったが、獲れれば楽な展開だった。リスク管理も出来ていた」と笑みを浮かべた。

残留争いしている清水は、ピーター・ウタカ選手やチョン・テセ選手の個人技頼りのシーンが多く、後半だけで11本のシュートを放って来たが、浦和を崩し切ることが出来ないでいた。そして、ミシャ監督は手堅く、85分には関根選手に代えて平川忠亮選手を投入してゲームの締めに掛かった。

90+1分には、柏木選手のダメ押しのゴールが決まり、浦和が4-1で清水を下した。清水戦に勝利した浦和は、2ndステージを暫定3位に浮上し、年間順位で再び首位に立つことが出来た。エコパのスタジアムには「王国浦和」の誇り高き声が響き渡っていた。

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