浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「男は黙って汗をかく~加賀健一選手」

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

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必ずピッチで輝く日がやってくるはずだ。その日が来ることを信じて、多くを語らずに黙って汗をかく。

Jリーグ史上初の前人未到となる3年連続得点王を目指し、今シーズン21得点で得点ランキング単独トップを飾った大久保嘉人選手のニュースが、新聞紙上を華々しく飾った。

その紙面の下の方に、小さく小野伸二選手が札幌移籍後初得点を決めた記事が掲載されていた。昨シーズンの途中で札幌に加入し、怪我で戦線離脱もあって移籍後17戦目にしてのゴールであった。

小野選手のJリーグでの公式戦の得点は、清水時代の2011年10月23日甲府戦以来となり、実に4年ぶりのゴールであった。ポジション的に、ゴールゲッターではないが、浦和時代に「アシストをするよりもゴールを決める方が好きだ。ゴールは特別なもの!ゴールを決めた時の雰囲気が最高!」と小野選手が目を輝かせて話していたことを思い出した。

どんなに嬉しかったことだろう。ましてや4年ぶりのゴールが、チームを勝利に導く決勝弾となったのだ。小野選手を知る者にとっては、大久保選手の記事よりも小さな小野選手の記事の方が、心が躍った。

しかし、「天才」とまで言われたあの小野選手が、ゴールを決めたのが4年ぶりだったことに驚いた。怪我に苦しんだこともあるが、移籍や監督交代などによる環境の変化もゴールを遠ざけた要因でもあると思う。小野選手には、どこに所属してプレーをしていても、いつでもピッチで輝いていて欲しいと願う。

浦和を離れて約7年の年月が経っても小野選手のことは、今でも気になってしまうが、浦和に在籍している選手になると身近な存在だけに、もっと気になる。ゴールが決められずにメンタル的に苦しんでいる選手もいれば、思うようなパフォーマンスが出来ずに苦しんでいる選手もいる。公式戦から離れ、ベンチ入りからも遠ざかってしまっている選手になると、取材していてもその胸中の深い苦しみが手にとるように分かり、いたたまれなくなって来る。小野選手のように環境の変化に伴い苦しんでいるのは、加賀健一選手だと思う。

加賀選手は、高卒のルーキーとして2002年に磐田に加入して、2005年から2年間の札幌へのレンタル移籍で修業した後に磐田へ復帰し、右サイドバックでスピード力を武器に活躍し、1対1の強さも認められてセンターバックでレギュラーへと定着した。

しかし、頸椎骨折をして手術を受けて長期離脱してしまった。その後、11年の開幕戦から復帰を果たして30試合に出場した。12年には、活躍の場をFC東京へと移してセンターバックもサイドバックも起用にこなして重宝がられていた。

しかし、昨シーズンは頚部やハムストリングなど負傷が続きリーグ戦7試合出場だけとなった。しかし、プロになってリーグ戦153試合の経験とスピード力や対人プレーの強さを評価されて、浦和へとやって来た。

今シーズンの初めに加賀選手は「試合に出て、プレーで浦和のサポーターに認めてもらえるように、スピードを生かしたプレーを守備でも攻撃でも見せていきたい」と希望に満ち溢れ自信たっぷりに話していたのだ。

もちろん、浦和を愛する人々も即戦力として加賀選手に期待を寄せた。だが、今シーズン浦和に移籍して来た選手の中で一番苦しんでいるのは、加賀健一選手だと思う。

慣れない環境の上に、加賀選手が公式戦で最初に与えられたポジションは、今までとは全く違う右ワイドのポジションであった。浦和でのデビュー戦となった3月4日のACLブリスベン戦では、前半30分に右のストッパーを務める森脇良太選手とポジションチェンジをするほど加賀選手の特徴を生かすことが出来ず、ハーフタイムに選手交代を余儀なくされてしまった。

加賀選手は「ストッパーもワイドもどちらでもプレー出来るようになれば、プレーの幅も広がっていく」とスキルアップの決意をした。ミシャ監督の独特な3DFにも戸惑いながらも食らいついていった。

加賀選手の中で、やれる自信はあった。しかし、なかなかチャンスを物に出来ずに、今シーズンのフル出場は5月5日のACLブリスベン戦の1試合のみとなり、この試合を最後にベンチからも遠ざかってしまったのだ。

加賀選手は、折れそうになる心を支えるかのように、練習後もひたすらランニングを続けている。声を掛けると「俺と話すことは何も無いでしょう?!」と黙して語らず。自分がやるべきことに労を惜しまない。

今年の夏のある日、いつもよりも長めにランニングをする加賀選手の姿があった。その熱心な姿に胸が熱くなり「いつもよりも念入りですね?」と声を掛けると、加賀選手は「いやぁ~恥ずかしい話なんだけど、この間の練習試合の時にね、足が攣った。この俺が・・・。普段のハーフコートのミニゲームと実戦ではフィジカルが違う」と照れながら話してくれた。

そのフィジカルを補うために加賀選手は、ランニングの時間を長くしていたのだ。腕時計をはめてストップウォッチで時間を計り、ひとりで黙々と走る。加賀選手の滴り落ちる汗が、心の涙に見えてしまった。沢山の汗を流して、フィジカル強化だけでなく、心までリフレッシュすれば良いと思いながらランニングする加賀選手の姿を目で追っていた。

移籍や怪我で苦しんだ小野選手が、やっと結果を出したように、加賀選手も必ずピッチで輝く日がやってくるはずだ。その日が来ることを信じて加賀選手は、多くを語らずに黙って汗をかく。

Q.選手が試合中に接触して流血することがあります。効果的な止血方法を教えて下さい。

A.まず、出血が何かが大切です。出血には、動脈の出血と静脈の出血があります。この2つを間違えると大変です。動脈は、心臓から脈を打って押し出される血液なので勢い良くビューと出血し、酸素が沢山あるので赤いです。静脈は、心臓に戻る血液なので脈を打たずにゆっくりと流れるのでチョロチョロと出血し、二酸化炭素が多く含まれているので真っ赤な血と言うよりも黒っぽい血です。動脈出血は、勢いよく出血するので止まりにくいです。

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
http://www.kawakubo-clinic.jp/

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