浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「届けたい思い~森脇良太選手」

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

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自分がピッチに立って頑張り、浦和が栄光に輝き喜ぶ姿を見せたい思いがある

気が付いたのは、煌めく太陽が眩しい夏の初めのことだった。練習が始まる前にピッチに姿を見せた選手たちは、リラックスして談笑しながらボール回しを行なうのがいつもの光景である。

そのボール回しに阿部勇樹選手や梅崎司選手たちは参加をしないで、独自に練習前に身体を整えていることが多い。そのボール回しの輪の中で、弄られキャラクターでいつも賑やかに周りを笑顔にさせていた森脇良太選手の姿がなかったのだ。

一瞬、我が目を疑った。

みんなの輪から距離を置いて、たった1人で森脇選手がランニングをしていたのだ。怪我で別メニューか何かあったのか心配になったが、練習中も練習後も森脇選手の様子は特に何かあった訳でも無く、全く普段と変わらなかった。

だが、それからと言うもの練習前に森脇選手は、みんなの輪から外れて1人で黙々と走るのが日課となっていった。真剣な表情をして、ランニングをしながらストレッチをしている。森脇選手はその行動に付いて「怪我してからですね。そんな大きな意味な無いんですけど、身体を少しでも温めてと言うところだ。いつも、チームで2周ぐらいしますけどね。5周ほど走ることによって、今日の調子を把握している。練習の1時間前から、刺激を入れて外でも身体を温めている。以前からやっていたが、怪我をしたことによってそれでポジションを失うのはもったいないと思った。怪我して、変わりに試合に出場した選手が良いプレーするんで、危機感から生まれた」と照れながら教えてくれた。

6月6日の清水戦を左ハムストリング肉離れで離脱してから、練習前に筋トレルームと外でより念入りに身体を動かすようになったそうだ。

そればかりか、森脇選手は他の選手と違った行動をとっていたのだ。川崎戦を累積で出場停止となる森脇選手は、休みをもらわずにチームのスケジュール通り練習メニューをしっかりとこなし、仮想川崎のDFとしてスタメン組に対して厳しい守備をみせていた。試合の間隔が空いている時期に出場停止なると、3日間ほど休みをもらって心身ともにリフレッシュする選手が多いが、森脇選手は違っていたのだ。

「出場停止になると、多くの選手が何日間か休みをもらったりしているけど、僕が休んだら全員からブーイング食らう。「休みくれ~」なんて言ったら、監督から怒られるよ」と笑いながら冗談まじりに話していたが、「しっかり僕もトレーニングしたい思いがある。試合に出なくても一生懸命やりたい。今日なんか、慎三(興梠選手)にバチバチ行って、「今のままだとダメだぞ!」って言うと、慎三が「お前なんかすぐに抜けるよ!」って、切磋琢磨しながら意地と意地とのぶつかり合い。練習からそういうのを見せて行くのが大事だ」と森脇選手は話していた。

それは、試合に出場出来なくても、チームの為に何か自分が出来ることをしたい森脇選手の思いが隠されていた。「怪我だろうが、累積だろうが常に試合には出たい。でもチームを乱す行動は、必要無い。特別意識をしてやっている訳ではないよ」と森脇選手は笑っていた。

だが、その裏には、浦和が栄光と共に自分が頑張っている姿を届けたい思いがあったのだ。
それは、広島に在籍していた森脇選手の下に、入院中の病室から届いた1通のファンレターだった。「僕のことを応援してますって手紙で、『病気で苦しんでいるけど森脇選手がプレーしている姿やTVで喋っているしょうがないことでも笑える。笑顔になれる。有難うございます』って書いてあったんだ。何通かもらった時に、『症状が酷くて食事も取れないで大変だ』って書いてあったので、僕自身を応援してくれている人に勇気を与えたいって思った」と病室から届いたファンレターに、森脇選手の心が動かされた。

森脇選手は、シーズンオフにファンレターの差出人が入院している病院を調べて、たった1人で自分が試合で着たユニホームを持って、ファンレターの差出人のお見舞いに行ったのだ。元気になってもらいたい一心で森脇選手からファンレターの差出人へのサプライズだった。

「僕が、お見舞いに行ったことで生きる意欲じゃないけど、かなり病状も良くなったってご両親からもお手紙をもらったんだ。僕自身も嬉しかった。どこまで助けになるか分からないけど、僕のことを応援してもらっているんだから、僕も病気にと闘っているファンを応援したい思いがあった」と当時を振り返り、森脇選手は本当に優しい目をして話した。

その後、ファンレターの差出人は無事に退院し、今では広島から何回か森脇選手を応援しに浦和まで来られるまでに元気になったそうだ。「広島から浦和まで来てくれて、僕にとっても有り難いし、良い影響を与えられたら良いと思う」と森脇選手は言っていたが、間違いなく森脇選手の活躍が、病気と闘う勇気と元気の源となったと思う。

森脇選手は、自分がピッチに立って頑張り、浦和が栄光に輝き喜ぶ姿を見せたい思いがある。それは、ファンレターの差出人だけではないだろう。応援してくれる人々、全てに対してだと思う。

だからこそ、ポジションの危機感を持ち、練習中からもベストパフォーマンスで出来るように心がけ、チームの為に自分が少しでも役立てることを考えて取り組んでいるのだ。

自分を応援してくれるひとりひとりに、届けたい思いがあるから・・・。

 

Q.夏の疲労は蓄積されると言われています。疲労について教えて下さい。

A.肉体的疲労と精神的疲労があります。例えば、全力疾走で50mを走ると足が疲れます。これは、ひとつの筋肉疲労です。筋肉疲労には、慢性的なものと急性的なものがあります。炭水化物が分解され、エネルギーを発生させて筋肉を動かします。炭水化物はブドウ糖です。ブドウ糖が分解された時に、乳酸が発生します。この乳酸が蓄積すると疲労感がでます。

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
http://www.kawakubo-clinic.jp/

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