浦和フットボール通信

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<ハイライト動画付き>【河合貴子の試合レビュー】阿部「啓太との1番の思い出の試合は、ACLでチャンピオンになった試合。今日で終わりじゃない。まだまだ1月1日まで続く」Jリーグ2ndステージ第17節 vs神戸戦<ペトロヴィッチ監督、武藤、関根、柏木、槙野、加賀、阿部コメントあり>(2015/11/23)

今日のポイント!!「浦和の良い部分と悪い部分が明確に出た試合」

柏木陽介選手が、試合後に「ゲームコントロール」を課題に上げていたように、3-0となった後の試合運びだ。広島は、湘南戦で5-0と完封勝利を収めている。ハイテンポで攻撃を仕掛けて、3-0になった時点でゲームを落ちつかせるためにバックパスを多用することで、神戸はDFラインを押し上げることが出来た。本来の浦和であれば、バックパスも高い位置で回すことが出来たはずである。上手く、ゲームコントロールが出来ていれば、失点は防げたはずである。

3-2の状況に追い込まれてしまったことにミシャ監督は「3-1で不安定な状態になって進んでしまった。後半に入ってもあまり良い部分が出せずに時間が経過する中で3-2になってしまった。森脇、那須、興梠と重要な選手を怪我で出られない。槙野、柏木、ズラタンは代表に行って帰って来てからすぐだ。今日のゲームで、もしも全員が揃って良いコンディションで出場していたら、試合の中の交代で上手くいかなかった30分間(前半の30分過ぎから後半の15分)を修正出来たと思う。久しぶりに出場した選手がどれだけ持つか、交代カードが難しかった」と話していた。

1試合を全て自分たちが主導権を握るのは、ほぼ不可能なことであるが、流れが悪い時のゲームコントロールや流れを引き寄せる選手交代の重要性を痛感させられた。無失点で終わっていれば、鈴木啓太選手がピッチに立ち闘う姿が観られたと思うと残念でならない。

ただ、5得点を5人の選手が決めたことは、如何にも今の浦和らしいことだ。記録上は、1ゴール1アシストとなった李忠成選手は、全てのゴールシーンに絡んでいる。浦和のエース興梠慎三選手が不在でも、運動量豊富にしっかりと顔を出し、ボールを収め、判断良くパスを出し、またゴール前へと走った。李選手は「自分の良さが出た。自分の原点である我武者羅に頑張ることに立ちかえったところだと思う」と照れながら話し「久しぶりに自分のサッカーが出来た」と笑みが零れた。

浦和の良い部分と悪い部分が明確に出た試合でもあった。ただ、この勝利を弾みにして、タイトルを獲得したい。

リーグラストマッチ!有終の美を飾る

灰色の雲に覆いつくされた埼玉スタジアムに、52,133人が訪れ今シーズン最後のリーグ戦の行方に固唾を飲んだ。試合開始直前には、明るい日差しがピッチに降り注いでいたが、重たい空気は変わらなかった。

年間首位を狙う浦和は、神戸戦の勝利は必須だ。あとは、湘南が浦和の援護射撃で広島を打ち破ってくれることを祈る状況であった。浦和を愛する人々の悲願は「真の王者」だ。年間首位に輝いていても、シャーレも授与されずチャンピオンとして認められないレギュレーションだ。それでも、浦和のゴール裏には、浦和を愛する人々の気持ちが込められたコレオグラフィーが現れた。まず、チャンピオンの栄光の証を記すシャーレが出現し、選手が試合前に挨拶で顔を上げた瞬間に浦和のエンブレムが現れて選手を鼓舞した。記録にも歴史にも残らない年間首位。だが、自分たちの記憶に残る。年間首位奪還に向けて、ファン・サポーターのボルテージが上がっていった。

しかし、浦和の置かれた状況は、厳しかった。試合前日練習で、興梠慎三選手が今シーズンの春先に傷めた首を再発するアクシデント。そのうえ、前日練習ではチーム合流していた森脇良太選手と那須大亮選手もチャンピオンシップを見据え、大事をとってベンチ外となった。

神戸のキックオフで始まった試合は、浦和が置かれた厳しい状況を払拭するように、立ち上がりから浦和が主導権を握っていった。2分、関根貴大選手がドリブルで仕掛けたが、神戸のDF高橋祥平選手がクリアー、そのクリアーボールを冷静に阿部勇樹選手が左のバイタルエリアに走り込んだ関根選手へ、関根選手がゴール前にグランダーのクロスを入れると武藤雄樹選がヒールでゴールに流し込み、浦和が先制!

武藤選手は「1stよりも2ndのゴール数が減っていたので、ゴールを決めたくて試合に臨んだ。個人としては、余り良く無かったが、決まって良かった。自分の前に、相手が2人居て、股抜けて来て見づらかった。狙い澄ましたヒールではないんです・・・。足に当ったって感じだった」と少し困惑気味に照れながら話した。そして「僕のゴールで良い流れを持って来た」と笑った。

アシストした関根選手は「最初のチャンスで、決められたのが良かったと思う。ラッキーな形であったが、チャンスで決めてくれた武藤君に感謝です。ゲームの入り方が良かった」と嬉しそうに話した。

そして、9分には高木俊幸選手がドリブルで仕掛けてから、絶妙なタイミングでDFの裏に抜け出した李忠成選手にパスを送ると、李選手が滑りこみながらゴールを決めて2-0とした。更に13分、永田充選手がドリブルで持ち上がり、左ワイドの宇賀神友弥選手へと展開し、李選手へとスイッチからオーバーラップした槙野智章選手へと渡り、槙野選手のマイナスのクロスを柏木陽介選手が綺麗に合わせてゴールへと流し込んだ。浦和らしい、テンポのある攻撃で見事に神戸DFを崩した3点目となった。槙野選手は「ゴールは、練習とおりだった」と満足そうに話した。

3点のリードを許すこととなった神戸は、15分にボランチのチョン・ウヨン選手をDFライン下げ、北本久仁衛選手に代えて前田凌佑選手を入れて守備の修正を図って来た。神戸は、ワイドの選手が下がり5バックを作り、しっかりとした守備から攻撃を仕掛けてきた。

また、3点リードした浦和は気が緩んだのか、前半の立ち上がりから飛ばし過ぎたのか、少し間延びしてしまった。すると26分に渡邉千真選手とワンツーで抜け出した石津大介選手のシュートが決まり3-1にされてしまった。

武藤選手は「立ち上がりから全開で行って、ゲームを落ち着かそうと言うところだった。落ち着かそうとすると、バックパスが増えてしまい。相手に勢いを与えてしまった」と振り返った。

柏木選手は「満足のいく内容だったか?!と言ったらそうでもない。前半、勢いで行き過ぎた。ゲームを落ち着かせるのは、自分の役目だ。チームとして乗り過ぎて、そのまま行ってしまった。ゲームコントロールが必要だった。崩せた得点ばかりだったのは非常に良かった。チュン君(李選手)もフラストレーションが溜まっていて、結果が出て良かった。チュン君にボールが収まり、ゴールに向かって走っていくことが出来た」と自身のゴールを振り返りながらもゲームコントロールの課題を口にした。

槙野選手も「前半の途中で息切れした。9分間のゲーム運びを考えないといけない」と反省した。

3-0までは、良い流れだったが、失点してからはなかなか流れを取りも出せずに3-1で前半を折り返した。

後半の立ち上がりも、前半の悪い流れがそのまま入ってしまった浦和は、石津選手の切れのあるドリブルに翻弄させてしまいゲームを落ち着かすことが出来ずにいた。その展開を見たネルシーニョ監督は、59分に藤谷壮選手に代えて奥井諒選手を入れて右サイドからの攻撃の活性化を図ってきた。

ミシャ監督もそれに対抗するように、高木選手に代えてズラタン選手を投入し、ワントップをズラタン選手として攻撃の起点を作るようにした。すると62分には、武藤選手とズラタン選手のワンツーパスから李選手がシュートを放つもゴール左に僅かに逸れていった。

リズムを取り戻しかけた矢先の65分、永田選手からボールを奪った森岡亮太選手のドリブルシュートが決まり、3-2と詰め寄られてしまった。このゴールで目が覚めたように、浦和の反撃の狼煙があがった。

71分に武藤選手に代わった青木拓矢選手が、李選手にボールを預けてエリア内へと駆け上がり、ゴール左隅へと流し込んだ。青木選手の今シーズン初ゴールとなる得点で4-2と突き離し、浦和が息を吹き返した。残された交代枠は、あと1つ。しかし、75分に加賀健一選手が足攣ってしまい、梅崎司選手を投入し阿部選手をDFラインに下げることとなった。

加賀選手は「自分を出していかないといけない試合だった。立ち上がりに3点入ったが、3-1にされ、3-2になってしまった。そう言うところは、3-0でやらないといけなかった。チームで得点を獲れたことは良かったが、もっともっと出来る思いがある。リーグ戦、初スタメンでやらなきゃいけない思いがあった」と悔しそうに話し、「あんまり、攻撃参加で上がれなかったし、森脇だったら・・・とか考えた。怪我人が戻って来たら、最初から試合に出られるレベルじゃない。足が攣っただけ。申し訳なかった」と不甲斐ない自分に対する思いを話した。

81分には、今度は関根選手も足が攣る状況になってしまい、シャドーの梅崎選手をワイドのポジションとし、関根選手の守備の負担を軽減させて対処した。84分には、柏木選手からスルーパスをエリア内で受けた李選手が、ゴール前に折り返すと走り込んで来た梅崎選手が豪快に右足を振り抜き5点目を叩き出した。

5-2で神戸を下し勝ち点72としたが、広島が湘南を5-0と完勝し、年間首位に輝くことは出来なかった。この悔しさをチャンピオンシップで、広島を打ち負かすことで晴らしていきたい。

試合後には、鈴木啓太選手の退団セレモニーが行われた。「浦和の男として始まり、浦和の男として終わります」と引退を表明した鈴木選手に惜しみない拍手が送られた。鈴木選手は「お前ら!最高だ!!」と共に闘って来たゴール裏のサポーターに感謝の気持ちを籠めて叫びスタジアムを後にした。

阿部選手は「啓太との1番の思い出の試合は、ACLでチャンピオンになった試合だが、今日で終わりじゃない。まだまだ1月1日まで続く」と話し、タイトルを手にして最高な形で送り出すことを誓った。

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