河合貴子のレッズ魂ここにあり!「浦和の道も一歩から」
J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。
まだ道半ばであるが湘南戦で魅せた美しいゴールが、確実に浦和が前進していることを示してくれた
気がつけば、試合中に降っていた春雨がいつの間にか止んでいた。2-0で湘南を下したその日の夜は、勝利に酔いしれた。
試合後、ロッカールームを引き上げる選手たちのたちの顔は、誰もが輝いていた。もちろん、選手たちは口々に反省点や問題点を話していたが、武藤雄樹選手が「今日の勝利は、完勝に近かった」と笑い、興梠慎三選手は「やり甲斐がある」と実に楽しそうであった。選手たちの表情を見ているだけで、嬉しくて堪らなかった。
試合中、全てのプレーにおいて選手たちには判断が求められる。ちょっとした判断の遅れがミスに繋がり、相手にボールを奪われたり、決定機が生かさなかったり、攻撃のリズムも守備の連動も生まれて来ない。もちろん、判断が良くてもそれに伴う技術がなければならない。
そして、その判断はピッチに立つ選手たち全員が同じイマジネーションにより華麗なプレーとなって輝きを放つ。まさに、湘南戦の55分の興梠選手のゴールが象徴している。
武藤選手がヒールで興梠選手へ、興梠選手が中央へパスを送り、李忠成選手が相手DFを背負ってスペースを空けてスルーし、空いたスペースに柏木陽介選手が飛び込み回り込んで来た興梠選手へ、そして興梠選手が冷静に右足でダイレクトにゴールへと流し込んだのだ。
確かに、勢いよくスペースに飛び込んだために柏木選手はトラップミスをしたが、そこは技術でカバーしてボールを失わなかった。それにより興梠選手が後方から回り込む時間が出来た。ヒールパスを出した武藤選手は、その瞬間にはゴール前と走りこんでいた。その武藤選手のオフザボールの動きに釣られGKもDFも判断が遅れる。
柏木選手は「流動的で気持ち良かった」とゴールシーンを振り返った。このゴールシーンを何度見ても、心がワクワクする。選手たちが同じイマジネーションでゴールへ向かい的確な判断をしている。浦和のこんなゴールシーンが見られるなんて・・・。幸せを噛みしめながら、もう一度ゴールシーンを見てしまう。
磐田に1-2と情けない敗戦を喫してから、ミシャ監督は中から崩す攻撃のコンビネーションのクオリティーを上げる練習に取り掛かっていた。短時間では、コンビネーションのクオリティーを上げるのは、難しいことである。常にミシャ監督が練習で言い続けていることの1つに「判断力」がある。判断が良く、技術が伴わずにミスが起きてもミシャ監督は褒める。逆に、ミスを恐れて消極的なプレーをすると激怒する。それは、消極的なプレーからはスキルの向上がないからだ。練習で選手が判断をチャンレジする姿勢は、すでに身についていた。だから、ミシャ監督体制となり5年目のシーズンにもなれば、チームの熟成度は増しているために短時間で修正が可能だったのだ。
ハーフコートでテーマを持って行われるミニゲームで、中から崩す攻撃のコンビネーションのクオリティーを上げる練習に、選手たちはミスを恐れずにどんどんとチャレンジしていたのだ。上手くいかないと、選手同士で動きの確認やサポートの仕方、距離感など声をかけて話す姿があった。
武藤選手は「磐田戦では、各々が動いていて裏への動きも無く、連動性もなかった。何をやっているんだろう?裏への駆け引きやコンビネーションの意識、浦和のサッカーの精度を上げていかないといけないと思った。負けを意味のあるものにしたかった。磐田戦で上手くいかなかった分、意識して距離感を見るようになった。コンビネーションを生かすようになった。基本、中が出来ないと平凡な試合になってしまう。前線の3人の選手が代わっても、多少の違いがあるだけだ。普通にやっていたら勝てないと教えてくれた。だから、練習で中から崩すコンビネーションを意識して、前の距離感を保った。あそこまで崩し切れると決まったあとは、気持ちが良い」と話していた。
如何に磐田戦の敗戦が選手の意識に変化をもたらしただけでなく、練習で中からの崩しのコンビネーションのクオリティーを上げていたことを物語っていた。
サイドからの崩しと中からのコンビネーションの崩しを上手く状況判断で使い分けることを確立出来れば凄い。もちろん、選手の的確な判断でミドルシュートやロングシュートなどが盛り込まれ、セットプレーの強さが加われば鬼に金棒である。
視野を広く周りを見ること、判断を早くすること、攻守の切り替えを早くすること、球際に厳しく、走り、闘うことにより攻守に渡り連動した動きがスムーズに出来るのが、浦和が目指しているサッカーなのだ。「千里の道も一歩から」と言われるように、着実に努力を重ねていけば偉業を成し遂げることが出来る。
ミシャ監督体制となり、浦和の道も一歩から進んで来た。まだ道半ばであるが湘南戦で魅せた美しいゴールが、確実に浦和が前進していることを示してくれた。
Q. 遊離体はどうして出来るのでしょうか?
A. 怪我により損傷が酷く膝が変形したりすると軟骨がいくつも剥がれ落ちることもあり、膝の関節にある軟骨が剥がれると、それが関節の中に落ち栄養液によって育つこともあります。また子供の時に多いのは、離断性骨軟骨炎という病気があります。野球児に多いのですが、やり過ぎによって軟骨が剥がれて関節の中に落ちてしまうのです。
川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。http://www.kawakubo-clinic.jp/