<ハイライト動画付き>退いた横浜FMを打開出来ず引き分け。【河合貴子の試合レビュー】明治安田生命Jリーグ1st第5節vs横浜F・マリノス戦<柏木、興梠、武藤、青木、梅崎、関根コメントあり>(2016/4/11)
今日のポイント
あの手、この手を駆使しながらも何とか退いた横浜FMを打開しようとしていたが、ナビスコ杯をターンオーバーで闘った横浜FMとACL広州戦の死闘した浦和とのコンディションの差が後半になって明らかであった。
柏木陽介選手は「フレッシュだったら、点が獲れていた。DFに吸収されて前に行く守備が出来なかった。(浦和が守備の時)ブロックの前に立つ守備をしないと行けなかったのに、下がってしまった。疲れているけど、少しずつ前からプレスを掛けることをしていかないといけない。あれでは、前線の選手は点が獲れない。高い位置で守備が出来れば良かった」と話した。特に後半、浦和は攻守の切り替えが遅く、素早く前に行く推進力がなかった。そのため、横浜FMは守りやすかったと思われる。
また、興梠慎三選手も「守備に追われて難しい試合になった。うちのフォーメーションでは、嵌まらない。ボランチと俊輔さんが落ちてきて相手は守備していたが、うちは両ワイドが余ってしまうDFラインに吸収されていた。もう少し高い位置を両ワイドが取っていたら良かった。チュン君もゴールライン際まで追いかける守備をしていた。あれでは前に行く力が無くなってしまう。ボールを奪って、上手く捌きながらの攻撃が出来なかった。勝ちたかった。自分的には、勝つか、負けるかが勝負だ。お互いに攻めぎ合って負ければスッキリだった。情けない。俺に縦パスは入らない。相手のツーボランチとセンターバックが近くにいたし、パスの出しても入れ辛かったと思う」と引き分けで終わりモヤモヤしていた。
武藤雄樹選手は「守備を固めて来る相手で、個の能力がある選手がしっかり守っているとこじ開けるのが難しい」と嘆いていた。
あそこまで横浜FMがブロックを作り、カウンター狙いで最低勝ち点1、運が良ければ勝ち点3狙いで来るとは思わなかった。横浜FM側にしてみれば、チーム事情で致し方ないが、浦和側からしたらつまらない。浦和がベストコンディションであったら、前線から嵌め込む守備とブロックを形成する守備を使い分けて、良い守備から良い攻撃を仕掛けることが出来たはずだ。横浜FMは「負けなくて良かった」と思うだろう。浦和にしたら「勝てなかった」と悔しさが残る試合であった。
退いた横浜FMを打開出来ず引き分け。
日産スタジアムの周辺の桜はすっかり葉桜になり、少し歩くだけでも汗ばむ陽気となった4月10日。5節を終了した段階で首位に立った浦和は、横浜に乗り込んで3連勝で波に乗って4位に浮上してきた横浜FMと対戦した。
ACL広州戦の死闘を制し疲労困憊でコンディションに不安を抱える柏木陽介選手は、横浜FM戦に向けて無理をしない調整が功を奏し先発で起用された。横浜FMのウィークポイントのセットプレーを封じるためにファールをしない守備を「予測、インテリジェンス、チームとして行う」とミシャ監督が前日記者会見で話すほど警戒を深めていた。
横浜FMのキックオフで始まった試合は、開始早々にチャンスを作ったのは浦和であった。
遠藤航選手からDFの裏を狙った武藤雄樹選手が上手く合わせようとしたが、相手の守備陣の方が一歩早く決めきることが出来なかった。
9分には、柏木陽介選手からの楔の縦パスを受けた武藤選手が胸トラップからDFの裏を突いた興梠慎三選手がシュートを放つも決まらず、20分にも関根貴大選手のクロスをファーサイドで興梠選手が中に折り返し、李忠成選手がボレーシュートを放つも決まらず、ピッチの幅を広くサイドチェンジを織り交ぜながら外と中を使い分けて多彩な攻撃を仕掛けていった。
しかし、自陣に引き籠もりしっかりとしたブロックを作る横浜FMの守備に手を焼くこととなってしまった。
武藤選手は「しっかりと固められ、相手は引き分けで十分だった。6バック気味に来た。崩せると思っていた。ロングボールで3~4本受けた序盤で試合を決めたかった」と話していた。
コンディションに不安があった柏木選手は「行けるやろう?!って感じだった。昨日、頭と心がリフレッシュしていた」とニヤリと笑い「前半は、気持ち良くプレーをしていた。相手が攻めさせて、疲れさせるのが狙いだったと思う。やりやすかったけど、最終的に崩すのは難しかった。チャンスを作っていたが、決定的かと言えばそうでも無かった。武藤がDFの裏を抜け出したりしてもペナ(ペナルティーエリア)の一寸中に入った辺りだし、サイドを抉ってもペナの中に8人いて、シュートを撃ってもブロックされていた。今までブロックを作って来たチームよりも、形成されていた。チャンスはあったけど、絶対的なチャンスではなかった」と悔しそうに話した。
浦和は、横浜FMの攻撃に対し、DFラインを高めに設定しながら両ワイドが下がり網を張るような守備で構えミシャ監督が試合前から警戒していた危険なエリアでのFKを与えなかった。そして、コンパクトにして横浜FMの攻撃を封じ込めて、2次3次攻撃を仕掛けていった。
試合後の記者会見でミシャ監督は「浦和が、ボールを持って仕掛ける時間が長いゲームであった。ただ、ホームで闘っていたのはマリノスだ。我々のチームはリスクを追って、守備をしている相手に対してしっかりと仕掛け、コンビネーションを使い、外を使いながらチャンスを作れていたと思う。非常に中と外を使い分けながら選手たちは、意図を持って攻撃を仕掛けてくれたと思う。もつとスペクタルナゲームになると期待した方も多いとは思うが、片方のチームだけが、サッカーをしようとしても好ゲームは生まれない。ボールを動かしながら縦の仕掛けだったり、サイドチェンジからの仕掛け、あるいは遠藤選手からのロングフィードなど多くの攻撃のバリエーションの狙いを持ってやってくれた」と話した。
前半、浦和の放ったシュートは8本に対して、横浜FMはたったの1本であった。結局、浦和はボールを支配しながらもゴールネットを揺らすことが出来ず0-0で前半を折り返した。
後半も主導権を握っていったのは、浦和であった。前半と比べて、カウンター狙いの横浜FMに鋭さが増していった。49分には、前掛かりにポジションを取った森脇良太選手を上手く交わした遠藤渓太選手が鋭いドリブルで切れ込んでいった。
柏木選手は「危ないシーンだった。ボールを獲られてカウンター・・・。遠藤君だっけ?!経験を重ねていたら失点に繋がった」とまだ18歳の横浜FMユース出身でU-19日本代表候補の遠藤渓太選手の若さ故のプレーを指摘していた。
60分には、マルティネス選手にドリブル突破を許し、ゴール中央に走り混んだカイケ選手が放ったシュートの零れ球を中町公祐選手がフリーでミドルシュートを放って来た。徐々に中村俊輔選手を中心に攻撃の組み立てを図りだした横浜FMに対し、ゲームを流れを取り戻そうと62分、疲れが見え始めた柏木選手に代えて青木拓矢選手を投入。
柏木選手は「後半、始まった時間ぐらいからガックと落ちた。頑張ったんじゃないかなぁ~」と自分自身を褒めながらも「変なミスしてボールを獲られるのも嫌だった。みんな疲れていた」と話した。フレッシュな青木選手が中盤に入ると、また試合の流れは浦和が握っていった。
65分には、武藤選手の右CKをファーサイド李選手が思いっ切り振り抜くも中澤佑二選手の身体を張った守備に阻まれてしまった。68分には、阿部勇樹選手が直接FKでゴールを狙うも、71分には関根貴大選手のクロスの零れ球を青木選手がシュートを放つも飯倉大樹選手がガッチリ正面で押さえた。
青木選手は「もっとみんなのコンディションが良ければ・・・。あと1歩、危険なプレーが出せればよかった。クロスのセカンド拾えればチャンスだと思った。吹かさないようにと思ったが、真直ぐGK正面で素直すぎた」と頭を掻いた。
浦和に流れが傾くと横浜FMは、72分にカイケ選手に代え伊藤翔選手、77分に遠藤渓太選手に変え前田直樹選手をピッチに送り込んで込んできた。一方、浦和も79分に宇賀神友弥選手に代え梅崎司選手を投入。
梅崎選手は「両方がリスクを掛けない展開だった。高い位置でボールが来た時に仕掛けて、進入していく意識だった。けど、あまり高い位置でボールが貰えずに残念。もう少し、オートマチックにパスを回しが出来れば良かった。攻撃のテンポが同じリズムだった」と攻撃の糸口を見つけられなかった。
浦和は、最後の切り札として86分に武藤選手に代えて駒井善成選手を投入。駒井選手は「5分ぐらいしかなかったけど、裏に飛び出す、スペースに流れろと監督に言われた。ミシャ監督は最後まで点を狙っていた」と攻撃的な姿勢を最後まで持って闘い続けた。
90分には、槙野選手がミドルシュート、90+1分には、李選手とのコンビネーションから関根選手がシュートを放つもGKのファインセーブに阻まれてしまった。
関根選手は「コースも良かったし、練習通りだったから入ったかと思った。ニアに蹴ればたぶん入っていた。GKも読んでいた。そこのレベルを上げないといけない。更に工夫が必要だった」と悔しがった。
結局、浦和が横浜FMの3倍になるシュートを放ちながらも堅い守備をこじ開けられず0-0で引き分けとなり、勝ち点13と伸ばすも勝ち点1差で川崎Fに首位の座を明け渡し、鹿島に得失点1差で3位に後退となってしまった。