浦和フットボール通信

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【河合貴子の試合レビュー】ACLグループステージ第6節vs浦項戦<柏木、西川、森脇、イリッチ、高木コメントあり>(2016/5/4)

今日のポイント!

攻撃の組み立て、レフリーの不可解な判定、試合後の挨拶時の浦項の選手がとった態度、全てにおいて、モヤモヤとして後味の悪い試合になってしまった。

選手8名を入れ替えて、ACLグループリーグ首位通過を狙っていた。スタメンで出場機会がないメンバーであっても、自分たちが出来ることを証明したかし、スタメン組を脅かすようなプレーでポジション争いに名乗りを上げたかった。だからこそ、このメンバーで勝ちたかった。

柏木陽介選手は「このチームで試合に出ていない選手を引っ張って勝ちたかった。前半のチャンスで決められず、PKを獲られた。自分たちの時間を作れた時に点を獲る力が足りない。もっと自分が出来ることがあった」と悔しがっていた。

攻撃の組み立てが上手く行かない時に、攻撃のリズムやゲームの流れを変えることすら出来なかったことが残念でならない。ピッチに立って闘った選手たちが、一番悔しく無念だったと思う。この試合を通して感じたことを選手それぞれが生かして行って欲しい。

また、浦項選手が試合後の挨拶時の行動は、許しがたいものであった。試合後に外したテーピングを拾ったところまでは良かった。それをキャプテンマークを付けた選手が、拾った選手からもぎ取りピッチに投げ捨てた。何故?!浦和の選手たちが怒るのも当然である。どんな時でも笑顔を絶やさない西川周作選手が、いの一番に激怒してもみ合いになってしまった。

西川選手は「人としてやってはいけないことだ。ホームのグランドで許せなかった。ゴミは持って帰るものだ。スタジアムには、子供たちもいるし、見習って欲しくない。二人の娘を持つ親として言っている」と道理を説いた。

森脇良太選手は「テーピングがピッチにあったから、周作や慎三が拾えって言っていた。僕は韓国語が分からないから、フェアープレー!って何度も言った。悲しくなった。サッカーをやる以前の問題だ」と同じサッカー選手として浦項の選手の態度が悲しくて堪らなかった。文化や習慣、ものの考え方の違いはあるだろう。だが、最後の笛が鳴るまでお互い死力を尽くして闘い、試合が終ればお互いの健闘を讃え合う。そうあるべきだと思う。

後味の悪い引き分け。予選リーグを2位で突破に。

ゴールデンウィーク真っただ中の5月3日、強風が吹き荒れ埼玉スタジアムの上空も風が舞っていた。ACLグループステージ突破を決めている浦和は、首位通過を目指しホーム埼玉スタジアムで浦項を迎え撃った。

敗退が決まっている浦項は「1.5軍」と前日の記者会見でチェ・ジンチョル監督が話していたように、3月2日に対戦した時のメンバーからGKなど5選手を入れ替え、ベンチを含めた平均年齢は23.88歳と若手のチーム構成で挑んできた。一方浦和は、連戦と週末に控えている大一番さいたまダービーを考慮して名古屋戦から8選手を入れ替えた。

風下となった浦和のキックのオフで始まった。試合序盤から浦和が主導権を握り浦項陣内へと攻撃を仕掛けていった。

浦項は、5-4-1のシステムとし、ワントップのラザル・ヴェセリノビッチ選手を前線に残して縦に早い攻撃を見せ、守備ではブロックをつくりボールサイドへスライドしてきた。

浦和は、柏木陽介選手を中心に攻撃の組み立てを図るが、攻撃のリズムが合わずに苦しい展開となった。

柏木選手は「みんなを動かしながら、ボールの出し入れをしたかった。俺が声を掛けて、引っ張っていかないといけなかった。自分の足りなさだ。キャプテンだったのに・・・。悔しい」と話していた。

16分には、ラザル選手が左のバイタルエリアからグランダーのクロスをゴール前へ、イ・グァンヒョク選手が飛び込んで来たが僅かに届かず、浦和のゴール裏からは安堵のため息が漏れた。

相手DFを崩せずテンポの良い攻撃の組み立てが出来ない浦和は、34分西川周作選手のビルドアップでDFの裏に抜け出した駒井善成選手が持ち味のドリブルで突破からゴール前に走り込んだ石原直樹選手へ、しかし石原選手とタイミングが合わず、37分には柏木選手のFKを那須大亮選手がヘディングシュートで狙うも決められず、もどかしい展開となってしまった。

西川選手は「ピッチコンディションが難しく、濡れている所、乾いている所があって、風の影響もあった。風は、名古屋戦の経験を生かしてキックの種類を変えてトライした。8(ラザル選手)だけだった。相手のスローインの時とか最初はサンド出来なかったから声を掛けた。カウンターのリスクマネージメントはタイトに行ってくれていた」と話した。

前半の終了間際には、イリッチ選手のクリアーミスをラザル選手が拾って強烈なドリブルシュート!ここは、西川周作選手がスーパーセーブでゴールを死守した。浦項が前半に放ったシュートは、この1本だけであった。

浦和に主導権を握られ、前線のラザル選手が孤立するシーンが見られた浦項は、後半の頭からイ・グァンヒョク選手に代えてチェ・ホジュ選手、イ・ナムギュ選手代えてパク・ソンジュ選手の2枚替えを行い、ツートップにして前からプレスを掛けてきた。

柏木選手は「後半、プレッシャーに来られて恐がったところがあった。(DFラインに)下がって3枚回しの方が良かったと思う。試合の流れを変えるプレーが必要だった。球際だったり、声掛けて鼓舞したり、プレーで見せないといけなかった。上手く回し切れなかった」と悔しそうに話した。

50分ズラタン選手のポストプレーから放った石原選手のシュートをGKキム・ジニョン選手がスーパーセーブを見せると、54分には西川選手も負けず劣らずスーパーセーブでパク・ソニョン選手のシュートを止めた。

試合の流れを変えるために、ミシャ監督は58分に興梠慎三選手と永田充選手、森脇良太選手を呼んで、高木俊幸選手、那須大亮選手、イリッチ選手に代えて来た。

浦和でのデビュー戦となったイリッチ選手は「5ヶ月が過ぎて初のゲームになったが、60分、試合に出た達成感がある。疲れが出て選手交代になったが、嬉しかった」とピッチに立てた喜びを感じていた。そして「内容は、我々の方が相手よりも上回ったサッカーをしていた。Aチームを起用しなくても、上手い形で試合運びができ、Bチームなりに対応出来た。自分のプレーはOKだと思うが、もっとポテンシャルが高いプレーが出来る」と話した。

高木選手は「思ったよりも全然出来なかった。足下にいつもよりボールが入ってしまい、僕のサイドでタイミングを合わせて引き出せば良かった・・・。裏に抜け出さないとスペースが空いてこない。工夫も足りなかった。相手と言うよりも自分の精神状態だ。力が出せなかったし、チャンスを無駄にした」と悲しげな表情を浮かべていた。

65分、浦項のFKからゴール前の混戦の中、パク・チョンフィ選手がキム・ウォニル選手の足が顔面に当たり流血。しかし、何故か浦項がPKを獲得。PKをラザル選手が決めて浦項が先制することになってしまった。

森脇選手は「味方同士の接触なのに・・・なんで?って思った。あり得ない」と不満を露わにした。ミシャ監督も公式の記者会見で「私は、あのシーンは、浦項選手が浦項の選手に対してぶつかったのではないか、あれはレフリーのミスジャッチであったのではないかと思う。ただ、選手たちは同点、逆転すべき強い気持ちで闘ってくれた。勝つと言う意欲を見せてくれた」と話した。

リードされた浦和は、主導権を握り攻め続けた。駒井選手と梅崎選手がポジションを入れ替えて変化を付けるも上手く行かない時間が続いた。

森脇選手は「呼吸が合わなかった。楔を無理に入れたりしてコンビネーションを意識したが合わなかった。ミスが多くもったいなかったし、ロングボールが風に流されて押し戻されたりした」と攻撃の組み立ての難しさを感じていた。

興梠慎三選手も「自分のワントップだったが、ズラの(ズラタン選手)運動量が落ちていたので、バランス良くシャドウで組み立てられれば良いと思って下がった。組み立てが上手く行かなくて、退いて貰うことが多くなった」と悔しそうであった。

87分、退き気味の興梠選手の浮き球が、エリア内でキム・ジュンス選手のハンドを誘い、浦和がPKを獲得。ズラタン選手がGKの手を弾き飛ばす強烈なシュートでゴール左隅へと叩き込み同点。

浦和は、逆転を狙い攻め続けるも無情の笛が鳴り1-1の引き分けとなった。

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