<ハイライト動画付>【河合貴子の試合レビュー】明治安田生命Jリーグ 1stステージ第11節vsアルビレックス新潟<柏木、興梠、槙野、ズラタン、遠藤、梅崎コメントあり>
今日のポイント!
興梠慎三選手のPKが決まって入れば、試合の流れは確実に変わっていた。だが、興梠選手を責めるつもりはない。前半の良いリズムの中でゴールが決まらず、後半は決定的なチャンスを作ることすら難しい展開になってしまった。
リスクを追った攻撃によりカウンターの脅威にさらされていたが、落ち着いて対応が出来て無失点に抑えることが出来たことは良かった。
ミシャ監督は「コンビネーションをする中で、スペースに飛び出すような動き、あるいは相手を置いていくようなスプリントの切れが足りなかった。攻守の切り替えのところでアグレッシブさや早さが見られなかった」と厳しい口調で話したが、浦和らしいプレーをさせて貰えない浦和の良さを消した新潟の守備があったのだ。
新潟は、良く浦和を研究してきたと思う。全ては、この一言で集約出来る試合であった。
新潟は前半に右の2列目の小泉慶選手を下げて5DFを形成して、浦和のサイド攻撃を封じ込めていた。後半になると小泉選手を少し前のポジションへと移動させ、浦和がボールを保持するとまた下げてと変化を付けて攻撃のリズムを作ってきた。
吉田達磨監督は「ピッチの中で、マイケル(舞行龍ジェームス選手)のところに、いつ小泉が戻るか、戻らないか、そこから出て行くのか、行かないのか、選手たちの手によってジャッチしたいた試合だと思う」と満足そうに話していた。
サイドの数的優位をケアするために槙野智章選手も森脇良太選手も前掛かりになった。そのため、中盤にスペースを空けてしまった。
柏木選手は「全体的に距離が遠くなりすぎた。マキとモリが高い位置を取って、阿部ちゃんも後ろでカバーしている分、俺の周りには、レオ・シルバと加藤君と平松君がいて、3人を追い回す感じだった。正直、凄く疲れた。たぶん、大宮戦を観ていたと思う。蹴って、狙ってくるのを決めていたんじゃないかと思う。退いてくる相手の攻撃の仕方を考えないといけない」と話していた。
前線の3枚のうち誰が中盤のスペースに落ちるのか、もしくはワイドの選手が中に入るなど攻撃の組み立ての工夫を考えないといけない。改めて思い知らされたスコアレスドローゲームであった。この勝ち点1を決して無駄にはしない。悔しさを噛み締めながらロッカールームに引き上げて行く選手たちの後ろ姿があった。
無失点でもノーゴール。痛恨の引き分け
涼やかな風がピッチを吹き抜けていった5月14日。レオ・シルバ選手を中心とする新潟をホームに迎えた。新潟のキックオフで始まった試合は、立ち上がりから浦和が積極的に仕掛けていった。
4分、宇賀神友弥選手のアーリークロスを李忠成選手、落として興梠慎三選手がシュートを放つも身体を張った新潟DFがブロック。しかしこぼれ球から展開して柏木陽介選手がシュートを放つも決めきることが出来ずにいた。
浦和は、厚みのある攻撃を見せチャンスを作り続けた。一方新潟は、右の2列目の小泉慶選手がDFラインに入って5DFを形成して、浦和のサイド攻撃をケアして守備を固めてカウンターを狙って来た。
柏木選手は「前半は、自分のプレーに満足。余裕を持ってターン出来るシーンがあった。新潟は、基本4-4-2で小泉君が落ちて5-3-2でセカンドが拾え辛かった」と話した。
鋭い新潟のカウンターにさらされながらも浦和は、テンポ良くボールを保持して攻撃を仕掛けていった。だが、最後のクロスやシュートの精度が低くてゴールネットを揺らすことが出来ずにいた。
吉田達磨監督は「最初の15分は、ずっとビンタされ続けるのを覚悟しろ。それでも平気で立っていれば俺たちのリズムになる」と選手たちに話してピッチへと送り出していた。
決定的なチャンスを迎えたのは19分、武藤雄樹選手がDFの裏を突く興梠選手に合わせてパスを出すと、ペナルティーエリア内で思わず大野和成選手が興梠選手を倒してPKを獲得。獲得したPKを興梠選手本人が狙うが、GKの残った足で阻止されてしまった。
興梠選手は「良い崩しはあったし、PKで決められた試合だったのに、凄く苦しい試合になってしまった。外しても次で決めようとリラックスしていた。コースが合わなかった」と悔しそうに話し「真ん中蹴ろうと思った。上を狙ったつもりだったが、昨年のホーム新潟戦のPKで右に蹴って、蹴った方向に相手のGKが飛んだ。右と真ん中を迷った。失敗が迷いに繋がった」とリラックスしてPKに挑んでいたが、蹴る瞬間に迷いが生じて得点に至らなかった。
見事にPKを足1本で止めた守田達弥選手は「(ボールに対しての)入り方を見て、足を残さないといけないと思った」と冷静であった。
前半の終了間際には、新潟がカウンターから山崎亮平選手、小泉選手と立て続けにチャンスを作るもゴールネットを揺らすことは無かった。
浦和は、前半に主導権を握りながらも決定的なチャンスを生かせずに0-0で折り返すことになってしまった。
後半、浦和はボールの失い方が悪く立ち上がりから新潟にチャンスを与えてしまった。49分には、前野貴徳選手のスルーパスを受けた平松宗選手が放ったシュートはサイドネット。
53分、加藤大選手のシュートは西川周作選手の正面。54分、山崎選手がカウンターからシュート。56分には、山崎選手がタッチライン沿いで粘り阿部勇樹選手からボール奪い、勢いに乗ってドリブルシュート。
立て続けに新潟にチャンスを与えた浦和は、58分に武藤選手に代えて梅崎司選手を投入して悪い流れを断ち切ろうと試みた。それでも流れを変えることが出来ず、63分に宇賀神選手と関根選手の両ワイドをチェンジして反撃の糸口を探っていった。
柏木選手は「後半、相手がプレッシャーを掛けて来る中で、上手いこと下がれなかった。相手も俺のことを警戒して、俺が退いてもレオ・シルバが出て来るということがあったので、何とか工夫出来たら良かったのかなぁ。全体的に距離が遠くなりすぎた」と攻撃の工夫が足りなかったことを悔しそうに話していた。
槙野智章選手は「PKが入っていれば、ゴールが入っていれば、違った展開になった。カウンターを何回か受けたが、ゼロで抑えた。失った瞬間にボールを奪いに行く守備で1枚剥がされた裏を狙われた」と話していた。
少しリズムが浦和に傾き出すと、新潟は68分に田中選手に代えて端山豪選手を投入。対する浦和は、70分に宇賀神選手に代えてズラタン選手を投入し、シャドウに入っていた梅崎選手を右のワイドへとポジションを代え、ズラタン選手のワントップにしてゴールを狙っていった。
ズラタン選手は「難しい試合だった。早いタッチ数を多く使う前線のイメージのプレーをしないといけなかった。失った瞬間、相手の切り替えが早く危険なシーンになってしまった」と話した。浦和は、立て続けのCKのチャンスを生かすことも出来ずに苦しい展開へとなってしまった。
遠藤選手は「良いボールは上がっている。今日は、ゾーンでどこに入るか決めていた。良いボールなので、あとは決めきるだけだ」とCKのチャンスを生かせなかったことを悔やんでいた。
新潟は、82分に平松選手に代え野津田岳人選手、84分に山崎選手に代え成岡翔選手を入れて攻撃の活性化を図った。
浦和は、最後の切り札として83分に関根選手に代えて駒井善成選手を投入し、梅崎選手を左ワイドへとポジションチェンジし、右ワイドを駒井選手に任せた。
シャドーと両ワイドの3つのポジションを任されることとなった梅崎選手は「勝ちたかった。悔しさがいっぱいある」と話し「相手の守備が上手かった。数的同数の部分も多く、シャドウの時は、中間で受けられるか縦パスが入れば受けてターンのイメージ。ワイドは仕掛けて、プレスバックでモリかマキに落としてとイメージだった。前掛かりになりカウンターを受けるシーンがあった」と唇を悔しそうに噛んだ。
試合終了間際の90分には、槙野智章選手のクロスに李選手がシュートを放つも決まらず、90+3分には、駒井選手のドリブル突破からのこぼれ球に森脇選手が強烈なシュートを放つもゴール上に軌道が虚しく逸れて行ってしまった。
最後までゴールに向かう姿勢は見られたものの、後半は縦パスも入らず、前線のコンビネーションも浦和らしい攻撃のリズムも作れず、CKのチャンスも生かせないままスコアレスドローとなってしまった。
その結果、ACLの関係で1試合少ない浦和は、暫定であるが川崎に首位を明け渡すこととなってしまった。