【河合貴子の試合レビュー】明治安田生命Jリーグ1stステージ第17節・ヴィッセル神戸<平川、那須、李、興梠、駒井、高橋(神戸)、青木、梅崎、両監督コメントあり>
過密日程5連戦の最後、神戸戦に勝利し1stステージを締めくくった
日中は、雲の隙間から青空が顔を覗かせた6月25日。1stステージ優勝は、鹿島か川崎の2チームに絞り込まれ最終節を迎えた。最終節の神戸戦に勝っても負けても3位が確定している浦和の記者室は、物静かでガランとして浦和が置かれた立場の現実を突きつけていた。しかし、年間首位を目指す浦和にとっては、勝ち点3をコツコツと積み上げていく大切な一戦である。6試合連続未勝利が続く神戸をホーム埼玉スタジアムで迎え撃った。
累積で出場停止処分となった槙野智章選手を欠き、内転筋に張りがある宇賀神友弥選手は大事をとってベンチ外とした。試合前日練習では、右のストッパーを平川忠亮選手、左のストッパーを森脇良太選手を起用して後方からの攻撃の組み立て練習をしていた。しかし、試合では、遠藤航選手も右ストッパーとし3DFの真ん中を那須大亮選手に任せた。
平川選手は「セットプレーも必要で、マキ(槙野選手)もいない。高さが必要だったと思う。監督の選択を尊重している。何よりも、今日出場した選手たちは、素晴らしいプレーをしてくれた」と晴れやかな笑顔を見せていた。
今シーズン、リーグ戦初スタメンと那須選手は「出来れば、セットプレーで勝ってやろう。何としてでも抑える。その両方の気持ちでピッチに入った」そして、両腕を空に掲げてキックオフを待っていた。
神戸のキックオフで始まった試合は、立ち上がりから神戸が仕掛けてきた。しかし、神戸の勢いは立ち上がりだけの単発で、徐々に流れは浦和に傾いていった。
ネルシーニョ監督は「前半、立ち上がりはプラン通りの入り方とオーガナイズされた守備からカウンターができていた。途中から選手たちが、個々のプランを遂行する自信が無いのか、不安を抱え始めて少しずつズレが出ていた。相手は、経験のあるチームで気付かれて得点を重ねられてしまった」と残念そうに話していた。
浦和は、ピッチの幅を使って仕掛けセカンドボールも拾い厚みのある攻撃を魅せていった。
李忠成選手は「しっかり3枚で守って、攻めも徐々に相手のゴールに迫っていった。前半に2-0で良いゲームプラン内容だった」と話した。そして34分には、森脇良太選手からのロングボールをエリア内でGKキム・スンギュ選手と競り合いながら李選手がヘッドで折り返すと、走り込んできた興梠慎三選手が倒れ込みながら無人のゴールへと叩き込んだ。
李選手は「アシストは自分なりに評価したい。慎三が決め切れていなかったので、あの1点で吹っ切れたと思うし、これからに繋がる慎三のゴールだったと思う。慎三がドフリーなのは分かっていたし、落とせば勝ちだと思っていた。今日は、日本のオリンピックのためにアシストしました」と嬉しそうに話した。
先制点を決めた興梠選手は「モヤモヤした感じで試合に臨んでいたので、(リオデジャネイロオリンピックに出場)行くことを決断して、チームに迷惑掛けるので、何かしら結果を出したいと思っていた。ごっつぁんゴールでしたけど、あの1点で吹っ切れて部分もある。届くかなと思いながら中に入っていった。実際、チュンに上げたボールも良かった。折り返しも完璧だった」と4月29日名古屋戦以来のゴールで頭の中のモヤモヤした部分を払拭した。
浦和が主導権を握る中で1点を追う神戸は、カウンターからペドロ・ジュニオール選手がゴールを狙うも西川周作選手が左足1本で止めてゴールを死守した。
そして、前半終了間際の45+1分、遠藤航李選手から李選手、駒井善成選手の右サイドの崩しから李選手のマイナスのクロスを興梠選手が冷静に決めて2-0。
駒井選手は「最初にファーストタッチで相馬さんが、一発で来るシーンが何回かあったので、それを利用して縦に行こうかと思っていた。そしたら、相馬さんが縦を狙っているのが一瞬で分かったので一回中に切り返したら間合いが空いて顔を上げたらチュン君が良い動き出しをしてくれたので、パスの強弱だけ気を付けて出した。最初は縦にスピード持って行こうと思っていたが、相手見て逆とったのは自分の良さだと思う」とゴールに繋がる自分らしいプレーに手応えを感じていた。
浦和は、ゲームを支配して2-0で前半を折り返した。
ミシャ監督は「チュンソン(李選手)は、ハーフタイムで負傷箇所で出て、本人から続けるのは難しいと話しがあったので、ズラタンと交代せざるを得なかった」と話し、後半からズラタン選手をシャドーのポジションへ投入した。
ネルシーニョ監督は「中盤のプレーは、もっと前を選択すること」とハーフタイムにゲームプラン通り遂行することを強く要求していた。
高橋峻輝選手は「シャドーの位置で浦和は、バリエーションが多いのでやらせない。前線から嵌まらないと一気にひっくり返されてしまうので、ブロックするのか(プレスに)行くのかはっきりとさせて試合に臨んだ。そこで崩れると失点に繋がってしまう。1つでもズレてしまうとドンドンとズレてしまい。最後、失点に繋がった。本当にもったいない失点だった」と前半を振り返った。
すると、後半の立ち上がり48分に藤田直之選手の右ロングスローのクリアーボールを拾った小林成豪選手がゴール前へと放り込み、レアンドロ選手に決められてしまった。
試合の流れが神戸へと傾き始めると、ミシャ監督は武藤雄樹選手に代えて青木拓矢選手を投入しトリプルボランチへとシステムチェンジして中盤での守備をケアーした。
青木選手は「中盤でセカンドボールを拾われてバタバタしていた」と守備を意識してはいった。そして「焦って、前に早く行きすぎていた。もう少し落ち着いてやれれば良かった」と攻撃面では厳しい展開となっていた。
何とか流れを引き寄せようと69分、関根貴大選手がドリブルで仕掛けてズラタン選手へとスルーパスを狙うもシュートが撃てず、73分にはエリア内で興梠選手がシュートフェイントからゴールを狙うも決まらなかった。
そして、77分に足が攣り始めた駒井選手に代えて梅崎司選手を投入。自分たちのリズムを取り戻すために、柏木陽介選手をシャドーのポジションへと代えて本来のスタイルへと戻した。
「スタメンからと言う感触があって出られず、悔しかった。途中から何が出来るかイメージしていて、PKを獲れるんじゃないかなぁとイメージを作っていた。そしたら、絶対に蹴ってやろうと思っていた。まさか、本当にね」と笑った。
そして84分、柏木選手のFKからのトリックプレーから放った梅崎選手のミドルシュートが身体を投げした三原雅俊選手のハンドを誘いPKを獲得。「陽介くるかなぁ?!アイコンタクトは少し、阿部ちゃんがふらふらとして、僕のところに三原選手が付いていたが阿部ちゃんが引っ張ってくれた。集中してミートした感触のあるシュートだった」と梅崎選手は話した。
試合当日の11時に男の子を授かった梅崎選手は、PKを譲ることになった。しっかりと梅崎選手はPKを決めて、チームメイトと共に子供誕生の揺り籠ダンスを披露した。
3-1とした浦和は、その後しっかりとゲームコントロールして神戸の追撃を許さず1stステージ最終節を勝利で飾った。