浦和フットボール通信

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「昇格を争う試合で、サポーターの声が力になること感じた」 オルカ鴨川・北本綾子監督インタビュー

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ッズレディース在籍時はエースストライカーとして、2009年の初優勝に貢献。現在は、千葉県で活動する、オルカ鴨川の監督として活躍する北本綾子さん。昨季、オルカ鴨川FCはチャレンジリーグ優勝。プレーオフでも勝利して来季なでしこ2部リーグ昇格を果たした。昇格を決める試合では、サポーターの声が力になることを感じたという。北本監督にオルカ鴨川での指導者生活の苦労。浦和レッズレディースでの経験が今になって生きたことなどを聞いた。

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北本綾子 プロフィール
1983年北海道札幌市出身。東京女子体育大学時代にはU-19日本女子代表メンバーに選ばれて活躍。大学在学中の2004年にさいたまレイナスFC(現・浦和レッドダイヤモンズ・レディース)に入団。2009年にはレッズレディース初のリーグ優勝に貢献。日本女子代表メンバーにも選ばれて、2004年のアメリカ戦で代表デビュー。2011年に現役引退し、スクール活動などを行った後、2014年に当時千葉県2部リーグだった、オルカ鴨川FCのGM兼監督に就任。3シーズンで、なでしこ2部に昇格を果たした。

未知の世界だった指導者への挑戦

UF:チャレンジリーグを優勝。そしてなでしこリーグ2部への昇格おめでとうございます。
今日は、北本監督がオルカ鴨川の監督になってからの経験と現状を聞かせて頂ければと思います。まずは浦和レッズレディースを辞められてから、ここまでの経緯を教えて頂けますでしょうか。

北本:実はレッズレディースで一度現役を引退した時は、指導者などは私には無関係だと思っていましたし、サッカーに携わる仕事はしないと思っていました。自分自身の問題で突然現役を辞めて、最初は後悔もしたのですが、実際に今後どうしていこうかと思った時に、自分はサッカーしかやってこなかったので、それ以外に何の経験もありませんでした。私が出来ることとして、サッカーをもっと身近な存在に感じてもらいたい。体育が苦手な子などにもサッカーを通じて身体を動かしてもらいたいと考えて、それがサッカーへの恩返しが少しでも出来るのかなと思って、レッズの方も力も借りて、レッズランドの近くの浦和西体育館や桜区区役所の体育館や元監督のフットサル場などを借りて、スクール活動をやらせて頂いていました。

UF:スクール活動からスタートして、その後指導者への道に繋がっていったわけですね。

北本:JFAの活動である夢先生やトレセンの活動などもさせていただく中で、色々な方と出会うことができました。その中で、私に監督をやらないかという話をして頂いた方がいました。最初はスクール活動もあり、いきなり監督という話は荷が重かったので、お断りをしたのですが、最終的にお話をお受けすることになりました。そうして鴨川に来て、オルカ鴨川の亀田代表も元々サッカーも知らなかったですし、何の縁のない中でも一生懸命やられている姿をみて、自分も監督をやってみようかなという直感的なところがあって、自分に出来るか分からないけれども、一年はやってみようということで、オルカ鴨川の監督を務めることになりました。

UF:当時は県の2部で活動しているチームでしたが、最初は現役に戻る形を選択されたのですね。

北本:初日の練習は私と元レッズレディースのチームメイトである木原梢、仙台、マリーゼで活躍していた中村真実と、レッズレディースにいた森本麻衣子と、病院にいたサッカーが好きという子の5人でしたので、否が応でも自分もプレーをすることになりました。短期間でチームを昇格させていくことが、クラブやチームのために目標達成に必要なことであればということでプレーをしました。

UF:オルカで頑張ろうという原動力となったものは、なんだったのでしょうか。

北本:裏方のことを本格的にやることは初めてでしたので、裏方の方たちが一生懸命やっている姿をみたら、自分もやる気になっていました。

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指導者になって気づいたレッズレディースでの経験

UF:浦和レッズレディースでの経験は生きていますか?

北本:レッズレディースでは、先輩たちが素晴らしかった。当時は先輩たちがなんでこんなことを言うんだろうと思っていたことが、指導者になってから良く分かりました。自分は大事なことを出来ていない側として経験をしてきたので、それを伝えていきたいですね。先輩たちに言われたのは、人として大事なことがサッカーに繋がるとか、レッズレディースの選手として見られているという意識も、正直、現役時代はあまり分かっていませんでした。それが結果に繋がったり、地域にどのように思われているかに繋がってくる。サッカーの部分でも勉強になることが多く、監督が言っていたことが指導者になって理解できるようになり、当時の監督に申し訳ないという思いにもなりました(笑)。

UF:特に今に生きている指導者の方はいたのでしょうか。

北本:出会った人全員ですね。伝えることが上手な人や状況判断出来る人や一人一人を見ようとしている人。声がいい人。それぞれの特長があった。学べない指導者の人は一人もいませんでした。

UF:もともと監督志望だったのでしょうか。

北本:伝える仕事よりも自分で表現することが好きだったので、監督になる気は全くなかったですし、コーチ業をする気もなかったくらいです。

UF:実際に監督になって、自分はどのような監督だと思いますか。

北本:どのようにしたら良いのかという模索の3年間だったので、良い所を取り入れていければ良いと思っている段階ですね。選手との距離感を一定の距離感をもって、一人一人見ているよという表現の仕方だったり、気を遣いますね。

UF:選手目線というのを気にするものでしょうか。

北本:選手が自分をどう思うか関係なくて、選手達がしっかり取り込めていたら成功だと思っていますね。

UF:昨季は理想通りの結果で終わりましたが、シーズン前のスポンサーの激励会では、1位で自動昇格すると言い切られていたので、有言実行したということで印象に残っていました。

北本:正直、自信があったわけではありませんでした。最初はチームとしてまとまりがなくて、選手達が個性的なのは良いのですが、チームとして同じ方向に向いていないと感じていた頃だったので、その時は選手も不安だったかもしれないです。ただ、自分はこうなりたいと言うことによって、中途半端に2位狙って入れ替え戦を狙いますと言ってもつまらないですし、目標をしっかりと持たないと上がれないと直感的に思ったので、1位で昇格するとお話しました。

UF:そして見事な自動昇格を決めるシーズンとなりました。

北本:実力の差はあると思いましたけども、なかなかそれが内容に表れず、内容に納得できない試合もたくさんあると思います。その中でも選手達は立派だったと思います。チーム内の中で、色々な試合はありましたけど、目標達成に向けて頑張れたと思います。

UF:これから北本監督として、チームをどうしていきたいかという理想はありますでしょうか。

北本:オルカも3年目になって、1年目の選手がいなくなってきました。1年目は現在の人工芝のグラウンドが草むらの状態の中でやっていて、それを経験している選手がいなくなることで、逞しさがなくなってきたら嫌だなと思っています。オルカは新しいチームなので、逞しい部分の気持ちも伝えることを忘れないようにして、周りの人に支えられてサッカーがやれているということを理解した上で、サッカーをプレーしてもらいたい。見ている方も逞しいプレーをする方が楽しいと思います。サッカーが分からなくても何か頑張っているねという地元の方もたくさんいるので、オルカは、倒されてもすぐに立ち上がって頑張っているねと言われるようなチームを目指したいですね。

UF:アマチュアの県リーグからスタートして、来季からは、なでしこリーグ所属のチームになることで、チームマネジメントは大変になってくるでしょうね。

北本:今までも自分達はプロ意識をもってやるべきだと思っていて、それを伝えてきましたし、それを伝えられるベテラン選手もいたので、それがオルカの強みになっていました。もちろん意識の改善が必要な選手はいますけれども、去年ベテランの選手に揉まれながら気づかされたことがある若手がたくさんいるので、彼女らが今度はチームを引っ張っていて、どこのチームでも負けないという逞しさをもってスタートできれば良いと思っています。

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昇格間近のプレーオフの試合で、ファン・サポーターの声の力を感じた

UF:オルカ鴨川は女子リーグでありながら、観客動員数も多いですが、なぜここまでの人気になっていると思いますか。

北本:普段の練習を見てくれた人がいたとか、たまたま試合を見た人が伝えてくれた人がいたとか、ポスターを一緒に配ってくれたとか、学校で子どもたちと触れ合えるきっかけがあったとか、色々なことが要因としてはあると思いますが、色々な人たちが伝えてくれたということでしょうね。一回会った人が、オルカというチームが自分達の街にできたから応援してあげようということが着実に伝わってきた。たくさんの方のボランティアにも支えられています。その意味でも地元の力が大きいですね。なんでも一人じゃ出来ないということを感じます。

UF:今後、 オルカ鴨川は何を目指していきますか。

北本:自分達も成長をしていきたいですが、私達で作り上げたというよりも、地域または俺達が育ててきたという誇りがもってもらえるクラブになりたいですね。

UF:浦和から学ぶことはありますか。

北本:たくさんありますね。それは浦和の街全体にもあります。特に浦和で、私が衝撃を受けたのは「俺達の声で勝敗を変えられる」とサポーターの皆さんが言っていたことです。それを実際に経験できたのが、今年のプレーオフのバニーズ京都SCとの試合でした。前半で0-2になった時に、応援している人たちの声が大きかった。声が力になるんだということを感じることができました。そういう人たちの想いを感じると、埼スタに行ったり、駒場に行くと、レッズの選手はもっとやらないといけないと思いますね。自分がレッズにいた頃の後輩とは話をしますけど、どこか忘れているんじゃないか?何しに浦和にいるんだと感じてしまうと、そういうことが試合に出てしまう。浦和でプレーする以上は、いつも応援してくれる人の顔を思い出して奮い立たせて欲しい。あれだけの応援の声がある、浦和の選手は幸せだと思います。我々もより魅力的で、応援されるチームになりたいと思います。

(了)

オルカ鴨川FCオフィシャルサイト
http://www.orcakamogawafc.com/

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