「もっと、もっと心身共に強くなる」菊池大介が初スタメンで感じたこと【河合貴子のレッズ魂ここにあり!】
J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。
力が出しきれなかった初のスタメン出場となった東京戦
闘うピッチに立つ以上は、自分の全てを出し切り闘う。例え、それが最後の笛が鳴るまでピッチに立っていなくても、全力を出し切り走れなくなるまで闘い、勝利のために仲間に託すことができれば、思い残すことなく堂々とピッチを後にすることができる。だが、自分の力を出し切らないままピッチをあとにすることになると悔いが残る。
4月16日、味の素スタジアムで開催されたJリーグ第7節FC東京戦。菊池大介選手にとってやっと回ってきたスターティングイレブンで活躍できるチャンスであった。
FC東京戦を控えて「やれる自信はある。今まで試合に出場できずに悔しい思いだったり、湘南で培ってきたものがある。関根や駒井、ウガ君(宇賀神選手)のプレーを見て学んできているものもある。同じようにやりたいが、自分らしく攻撃に関わっていきたい。前線にボールは収まるし、上手く自分が合わせれば得点も獲れると思う」と菊池選手は意気込んでいた。
仙台戦で関根貴大選手が脇腹を痛め、上海上港戦では駒井善成選手が右足を負傷した。大きな怪我ではなかったが、連戦が続く中で得た試合出場機会であった。
湘南では、左のワイドのポジションで狭い局面でも打開できるドリブルのテクニックがあり、さらにスピードもあり、ハードワークもできる選手で、背番号10番を背負ってきた。
「湘南の至宝」とまで称された菊池選手であったが、浦和では激しいポジション争いと浦和独特のコンビネーションプレーの前に苦しみ、その片鱗をまだ魅せてはいなかった。FC東京戦は、得意の左のワイドではなかったが、菊池選手にとって絶好のチャンスであった。
しかし、51分に菊池選手に代わり関根選手がピッチに送り込まれた。交代を告げる無情な場内アナウンスを耳にしながら、菊池選手は俯きながらベンチへと下がっていったのだ。菊池選手の本来の持ち味は、ほとんど発揮されなかったのだ。自分自身に悔いが残る交代であった。
「個人的には、悔しい思いが強い」と菊池選手はFC東京戦を振り返って話し出した。そして、「あの時間で交代されると言うのは、何か足りなかったからだ。自分の中でも、特に最後の質は物足りなかった。素直に受け入れないといけないし、この悔しさを次に繋げないといけない」と襟を正した。
そして、「後ろに行くプレーが多かった。空いているところが見えているのは良いところだが、もう少し自分で仕掛けたり、切り込んで行ったり、相手の脅威になる動きがもっとあったら良かった。後ろに逃げてしまうプレーが多かった」と反省していた。
菊池選手が言った「逃げのプレー」とは、ある意味、安全策である。菊池選手が、本来の自分のプレーができなかった要因の1つに、この後ろ向きの「逃げのプレー」があった。ドリブルで仕掛けることができるタイミングでも失敗を恐れて消極的なプレーになってしまったのだ。
初めてスターティングイレブンを飾る選手は、4つのタイプに分かれる。1つは、スタジアムの雰囲気に飲み込まれてしまい何もできなくなるタイプ。2つ目は、何か良いプレーをしないといけない思いで空回りしてしまうタイプ。3つ目は、ミスを恐れて無難にプレーしようとして本来の自分の持ち味を消してしまうタイプ。4つ目は、与えられたチャンスを最大限に生かして、冷静沈着に与えられた役割に徹しながらも自分の持ち味を発揮して躍動するタイプである。
残念ながら、今回の菊池選手は、3つ目のタイプになってしまった。ピッチに立って闘う以上は、誰だって活躍したい、チームに貢献したい、結果を出したい思いは強い。初スタメンだと、尚更その気持ちが強いために起こってしまうメンタル的な現象なのだ。
更に、育って来た湘南を飛び出して浦和にやって来たからには、何としても結果を出したい思いが強かったはずだ。それ故に、菊池選手は力が発揮できないメンタル的な現象に陥ってしまったのだ。
「1人で対応していて、カバーリングがいたら空いてる選手を使って、もう一回攻撃を組み立て直そうという考えもあった。無理に仕掛けて獲られるのならば安全なところに逃げようという思いもあった。それが、良い方向にいかなかった。強気で前にいくプレーをしても良かった。結果的に消極的なプレーが多くなり、自分にとっては残念なことになった。全力で取り組んできて、それが認められてスタメンで使ってもらったのに・・・」と菊池選手は、歯がゆくて堪らない様子であった。
それでも菊池選手は、折れそうな心を奮い立たせて「続けていくことが大事だと、自分の中で再確認できた」と前を向いた。そして「FC東京戦では右で出場したが、左と同じように自分らしさを右でもだせるようにしていかないといけない。改めて思った。これからも連戦が増える。自分のプレーの幅を広げるために、右でも左でもできるようにならないと。右足のクロスだったり、カットインからの左足のシュートとか、練習で取り組んでいく」と話した。
「湘南の至宝」とまで称された菊池選手。宝の持ち腐れで終わるはずはない。浦和でもっと、もっと心身共に強くなる。そして、様々な経験を積んでいつの日か「浦和の至宝」と称されるようになるだろう。
Q.精神的な疲労について教えて下さい。
A.運動をし過ぎることにより精神的に疲れると、身体の中のホルモンのバランスが崩れて筋肉の回復を遅らせてしまいます。オーバーユース症候群中には、精神的疲労もあります。意欲が落ちれば、ホルモンの分泌が悪くなりパフォーマンスが落ちてしまいます。軽いトレーニングをしながら、リフレッシュすることが大切です。トレーナーさんたちが、メニューを作り食事管理し、乳酸値を図ったりケアーをしていきます。40℃ぐらいのお風呂にゆっくりと浸かりリラックスして疲れを取ると良いでしょう。
川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
川久保整形外科がリニューアル開院しました。平成28年5月6日(金)より新クリニックにて診療を開始しています。MRIなど最新施設を備えて、より良い環境の下での医療とサービスをご提供していきます。http://www.kawakubo-clinic.jp/