河合貴子のレッズ魂ここにあり!「惜別の思い」(10/27)
J開幕から浦和レッズを追いかけ、ケーブルテレビのパーソナティなどで活躍をしている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。
大宮に惜敗し、J2降格圏内に陥ってしまった試合後の記者会見終了間際、浦和広報の言葉を遮る様にペトロビッチ前監督は「浦和レッズを愛するハートがあるので、残り5試合全力でクラブのために闘う事を誓います」と前置きした後に「5試合終わったら、自分は次の年は残らない事を決定しました」と辞任を示唆した。
記者会見での内容を受けて、橋本代表は「直接聞いた訳では無いから、何も言う事では無い」と冷静にこの日ノーコメントを貫いた。
その翌日、練習前に橋本代表とペトロビッチ前監督の話し合いがもたれた。会談を終えた橋本代表は険しい表情で「もともと契約は1年、気持ちとしては出来るだけ長くして欲しい。辞任は了承していない。今までと変わらずサポートする。J1残留が最大の課題」と話した。
練習後に記者達に囲まれたペトロビッチ前監督は「今日は皆さんの質問を受けますが、明日からは受け付けません。今日限りにして頂きたい」と辞任騒動に終止符を打つ様に話し出した。「結果が良くないのは何が原因か分かっている。これからも選手を信頼して、残り試合に標準をあわせる。もう一度言う!レッズのために、全てをやる。全てを出し切り仕事する。全員一丸となってレッズを救う」と力強く話し、そして「自分は人として、男として正直に接して来た。監督として正直に思った事を言うのは変わらない」とペトロビッチ前監督は話した。
J2降格圏内になった厳しいチーム状況の中で、ペトロビッチ前監督の「辞任」を示唆する発言には、人それぞれの捉え方があるだろう。「浦和レッズを愛するハートがある」と明言するペトロビッチ前監督が、何故この状況で辞任を示唆したのだろうか?何度も、記者会見の録音聞き直し、何度も取材ノートを目通し、考えて見た。
ペトロビッチ前監督は、プレミアリーグ・ウエストハム・ユナイテッドFCのコーチ契約する時も、レッズからオファーが来たら契約を解除出来る内容だったため、僅か4ヶ月余りでウエストハムを辞めて、浦和レッズの監督に就任出来たのだ。「浦和レッズのためなら、何でもやる」それは、選手時代もレッズを離れていても、監督になってからもペトロビッチという人間は変わらない。色んな事が頭の中を駆け巡る中、この辞任を示唆する発言は、ペトロビッチ前監督の信念と言う物が見えて来た。
チーム状況が厳しい中では当然の様に「次期監督候補」「監督解任要求」など雑音が多くなる。ここで、辞任を示唆する事により、雑音を排除する事が出来る。また、大宮戦に敗れた事により心無いファン・サポーターから選手批判を受けて、選手が自信を失わないためにも、自分の発言により、監督自身が矢面にたった様にも感じた。ネガティブに捉えようとすれば、違った考え方もあるだろうが、ポジティブに捉えれば、全ては、浦和レッズを愛するが故の事である。
しかし、こんなにも「浦和レッズを愛するハート」を持っていたペトロビッチ前監督が、リーグ残り5試合とナビスコ杯の指揮を執る事は許されなかった。成績不振は監督だけの責任では無いが、やはり現場の指揮を執る監督責任は大きい。解任後、ペトロビッチ前監督は「何処かに問題が有っても、責任転換はしない。このクラブは必ずこの状況を脱出して、大きなクラブになると思う。Jのトップになる事を祈っている」と話した。
ペトロビッチ前監督の胸中を思うと切なくなってしまう。ペトロビッチ前監督の下、ナビスコ杯を決勝まで勝ち進んで来た功績は決して忘れない。柏木陽介選手は「ペトロさんに色んな意味で感謝している。優勝してナビスコ杯をペトロさんに捧げる」と思いを話した。ペトロビッチ前監督の意志を継承し「浦和レッズを愛するハート」を持って、ナビスコ杯を必ず鹿島から勝ち取る。
Photo by (C) Kazuyoshi Shimizu