浦和フットボール通信

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【This WEEK】週刊フットボールトークVol.68(12/21)

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:今年も残すところわずかになりましたが、浦和レッズは天皇杯の戦いを残しています。先週末は、熊谷で愛媛FCとの対戦でした。クラブ内では様々な出来事が起こり、騒がしい中でしたがチームは、しっかりと勝利して準々決勝に駒を進めました。マルシオ・リシャルデスのFK、CKと今季期待されていたセットプレイからの得点があったのは大きかったですね。

豊田:TV観戦のみですが、マルシオのFKは良かったようですね。今季はセットプレーからの得点が絶望的で大きな問題点だと思っていたのですが、こういうゲームから彼本来の感覚が戻ってくれればと期待しています。得点シーン以外でも惜しいセットプレーからのトライがありましたが、トップレベルの相手でも通用するパターンの確立は急務でしょう。天皇杯もここから先は手強い相手と競った勝負になると思うので。

椛沢:試合後には、レッズゴール裏から、三上コールが起きました。現在は愛媛に所属している三上卓哉選手がこの試合をもって現役を引退するとのことを受けてのコールでした。三上選手は、浦和生まれ浦和育ちで、武南高校から駒沢大学に進み、2002年に堀之内聖と共に浦和レッズ入団しました。愛媛の得点は彼らしいクロスからのアシストでした。浦和出身選手が現役から退くのは寂しいですね。お疲れ様でした。

豊田:スタンドには新監督に決まったミハイロ・ペトロヴィッチ監督も視察に訪れていましたね。レッズの現状を正確に堀監督から引き継いで、再建への足がかりを考えて欲しいと思います。引退した三上卓哉選手は、兄の和良選手(元大宮アルディージャ他)ともども2000年代初頭の地元出身Jリーガーを代表する選手でした。和良選手もヴィッセル神戸時代は独特のキャラクターでチームを盛り上げる欠かせない選手だったと神戸サポーターから聞いたことがあります。いまはURAWAに戻って料理店の経営をされているそうですね。卓哉選手もサッカーを引退しても多方面での活躍を期待したいと思います。

椛沢:今季は暗い話題ばかりが続くシーズンでしたから、天皇杯で久しぶりの元日、国立を目指して有終の美を飾りたいところです。そして来季、指揮を獲るミシャ・ペトロビッチ監督には、チーム再建という大きなテーマを課されての招聘ですから、浦和レッズが再び輝くために力を注いで欲しいと思います。

豊田:ミハイロ監督はオーストリアの名門プロ・SKシュトゥルム・グラーツでは選手として主将を務め、指導者時代にはイビチャ・オシムの現場を体験しています。先日お会いした木村元彦さん(『オシムの言葉』著者)も、浦和レッズの今後には大きな関心を寄せていた。そうそう、その際に彼からいただいた自著の『争うは本意ならねど』(木村元彦著・集英社インターナショナル 12月20日刊行)をちょうど読了したところです。さすがにあちこちの版元からオファーがあった“ピクシー本”を一蹴して木村さんが書き上げたドキュメントだけあって読み応えがありましたね。

椛沢:具体的にはどんな内容なのですか?

豊田:メインは川崎フロンターレのストライカーだった我那覇和樹選手(現JFL・FC琉球)のドーピング冤罪です。疑惑を晴らすまで周囲で彼を支えた人々のドキュメントなのですが、これが我らが浦和レッズにも大きく関わっているテーマなんですね。冤罪への切り札となる人物が、浦和レッズのメディカルディレクター・仁賀定雄さん(川久保医院・スポーツ医学センター長)。そして我那覇選手と彼の母親の心の支えとなる手紙を書いたファンが、埼玉スタジアムで川崎時代の彼のプレーに魅せられた沖縄出身のレッズサポーター……。

椛沢:全く知らなかったエピソードです。なんとも興味深い展開ですね。

豊田:加えて注目すべきは、問題の佳境となる時間帯。2007年の秋です。何と私たちレッズとレッズサポーターがACL決勝ラウンドで燃え上がっていたさなかに、仁賀定雄ドクターは激務の合間を縫って他チーム選手の名誉回復のためにも尽力されていたと……。そういう展開を見せるストーリーです。

椛沢:仁賀ドクターが関わっていたとは驚きですね。

豊田:以下、著者・木村さんからのレッズサポーターへのメッセージです。
「浦和レッズは類を見ない苦難の時代に突入していると思いますが、クラブ人材の中にはスポーツとフットボールを守るために自著に記したような働きをされた地元のドクターも含まれています。どうかホーム浦和の皆さんは“サッカーどころ”の誇りを見失うことなく、レッズを見守って欲しい」

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