浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「街にフットボールがある幸せ」(2/24)

J開幕から浦和レッズを追いかけ、ケーブルテレビのパーソナティなどで活躍をしている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

愛媛滞在中に感じた、フットボールの街の幸せについて綴っています。

1週間ばかり、浦和を離れて両親の出身である愛媛に帰省する事になった。愛媛と言えば「ミカン」しかし、フットボール好きにしたら、松山市を中心とする愛媛県内全域をホームタウンにしている愛媛FCである。その愛媛FCのお膝元の松山市は、観光客が1年中訪れる道後温泉があり、夏目漱石や正岡子規、高浜虚子等おなじみの文豪達が残した文学の風を感じる事が出来る。毎年夏には俳句甲子園が開催され熱い討論が繰り広げられるそうだ。同じJリーグがある街でも、文学の薫り漂う松山とフットボール文化が根付いている浦和との温度差をどうしても感じてしまう。

松山市は、市域面積429.05平方キロメートル 人口約50万人 世帯数約23万世帯。さいたま市は、市域面積217.49平方キロメートル 人口約123万人 世帯数約53万世帯である。ザッと考えれば、松山市はさいたま市の約2倍の面積に、およそ半分の人達が生活している地方都市となる。さいたま市内を歩けば、当然の様にレッズの旗やレディア達がすぐ目に入って来る。しかし、松山市内で愛媛FCの旗やキャラクターのオ~レくん達を探すのは至難の業である。逆に、誰もが俳句を投函出来る俳句ポストが目に付く。

それでもフットボールを求めて、愛媛FCの練習場を訪ねる事にした。松山市駅から伊予鉄道高浜線に乗って18分、もちろん電車は単線で3両編成。潮風が優しく包み込む梅津寺駅で下車。電車から降りると、目の前は穏やかな早春の海。1991年に放送された人気ドラマ「東京ラブストーリー」の最終回で赤間リカ(鈴木保奈美)が永尾完治(織田裕二)と待ち合わせして「バイバイカンチ」とホームの欄干に結び付けた有名な駅である。未だにドラマの名残がプラットホームには残されていたが、この地に愛媛FCの練習場がある案内も愛媛FCを応援する旗も無い。駅舎にポスターが2枚貼ってあるだけであった。梅津寺駅前には「蒼天の島山と海裸の子」と俳碑があった。やはり俳句の街なのだと少し淋しさを感じ、潮騒の音を聞きながら練習を見学する事にした。練習場は小ぢんまりとしていて、人口芝であった。選手との触れ合いゾーンがあり、ネット越しに練習を見学出来て選手を身近に感じる事出来る。

警備員さんが案内するまでも無く、練習場に足を運ぶファン・サポーターも2~3人。新聞記者の姿も無い。何故か時計が止まっているかの様にゆっくりと時が流れて行く。練習後に、埼玉県出身で浦和に在籍していた大山俊輔選手と話をする事が出来た。大山選手は「此処にはフットボールの文化は無いですよ。浦和とはかなり違いますよ」と淋しそうにつぶやいた。「愛媛県内にフットサル場は3カ所かなぁ・・・。需要が無いと言うかぁ・・・」と戸惑いながらも大山選手と教えてくれた。フットボールに関係する事柄が街のいたる所に点在する浦和の環境が、フットボールを愛する人達にとっていかに恵まれているのか、肌身に沁みた。

愛媛には愛媛の良さがある。与えられた環境の中で愛媛FCの選手達はJ1を目指して頑張っていた。愛媛に新たなフットボールの芽が芽吹いている事を感じた。だが、浦和の喧騒が懐かしく、フットボールが根付いている街の幸せを感じずには居られなかった。

「潮騒が 運ぶ思いは 遅き春」

「異文化に 触れて戸惑う 早春賦」

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