浦和フットボール通信

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(写真差替)「レッズ2012月刊ライブディスカッション」Vol.2

レッズ密着取材を続ける河合貴子氏に、本誌・椛沢編集長が浦和レッズの現状や選手達の思いを毎月訊く「レッズ2012月刊ライブディスカッション」。開幕から約1ヶ月が経過。まずまずのスタートを切った浦和レッズは、現在どのような状況なのか。お話をお訊きしました。(浦和フットボール通信編集部)

■焦らず慌てず一歩ずつ階段を登っている。

椛沢:開幕してからリーグ戦、カップ戦の6試合を消化して3勝1分2敗という成績です。新チームがスタートした中ではまずまずのスタートを切れた印象ですが、河合さんはどのような印象を受けていますか。

河合:ここまで見て、焦らず慌てず一歩ずつ階段を登っているという印象を受けます。どの選手が出場をしてもチームとして、これをやるんだという方向性がミシャ監督の下、しっかりと定まっていると思います。先日の川崎戦は二人少なくなった時に意地でも守ってやるんだという戦い方を見せてくれました。

椛沢:ここまでの試合を見て、勝負強さを感じるような試合が増えてきているように思えます。特に昨年までなかったセットプレイ、フリーキックでのゴールが増えてきていますが、このような現象が表れているのには、何か要因があるのでしょうか。

河合:色々な要因はあると思いますが、フリーキックやセットプレイで点が取れるようになったといっても練習でその練習をさんざんやっているわけではありません。スモールフィールドの練習の中で、セットプレイ、コーナーキックの練習も続けて確認でやろうというくらいです。それで、どこが変わったのかというと、みんな同じ意識でやろうということが見えてきている。守備の部分では、5バックになろうが、2バックになろうが、攻撃の部分では、1トップの2シャドーでも3トップでも5トップになる時もあるけれども、みんなで上手く出来てきているのかなと思います。

椛沢:信じられる場所、目指すところがあるから戦いやすいということでしょうかね。

河合:そういうことがあると思います。ミシャ監督もチャレンジしてうまくいかないことには何も言わないので、選手も伸び伸びプレーが出来ている。ゼリコの時もそれはなかったのだけども、ずっとレッズに染み付いていたリスクを犯さないという意識があった。その意識が少しずつ変わってきているのかなと思います。選手も明るくなってきるように思えます。

椛沢:これはシーズン序盤であり、新しいチームですから致し方ない部分ですが、内容で言うと、必ずしも完璧なことはなくて、まだまだ向上する余地があるものだと思います。点を取ると引きすぎるきらいがあるのは気になるところですね。

河合:槙野も「1点を獲って守るのはしんどい。苦しい時間での得点が欲しい。」と川崎戦の前には言っていたんですね。ただチームとしてやることははっきりしてきていて、その課題は理解をしていて、磐田戦の後の練習では、コンビネーションからのシュート練習をかなりしていたので、“ゴール”という意識があるのかなと思いますね。ミシャ監督もポジティブな要素として攻撃の形が出来てきていると手応えを持っていて、それから必要なことはゴールに向かうコントロールが正確だとか、その崩しの部分でしっかりと崩せているのか、崩した時にしっかりとシュートが打てるのかというところになってくる。このチームで追加点を取れるようになれば、そのあとは守れるんじゃないかと思いますね。勝つためにどうするか、という所で、まずは守備、そこからのステップアップという段階に入ってきているんじゃないかなと思います。

椛沢:そういう意味では、シーズン序盤にある程度の結果を残すことが出来たのは、チームが進んでいく上では良い状況になったと言えますね。

河合:自信をなくすことが一番怖いことなので、結果が出ることで自信がついているのは良いと思う。結果が出ないと色々なことが疑心暗鬼になってくるとチームが厳しくなってきます。今は選手達が練習中から楽しそうですよ。

■ミシャ監督は、この人についていきたいと思わせてくれる監督。

椛沢:ここまでのミシャ監督の仕事ぶりは、側で見ていてどのように感じますか?

Photo by(C)Kazuyoshi Shimizu

河合:ミシャ監督は選手ひとりひとりに対して暖かさを持っている監督で、この人についていこうと取材をしていても思ってしまうので、選手はもっとそう思っていると思います。選手の接し方を見ていてもこの監督についていこうと思える。磐田戦の野田のミスでもチャレンジしたミスだから良いんだと言ってくれましたからね。私も心が暖かくなって、よりサッカーが好きになっています。“サッカーは一人で戦うんじゃないんだ、みんなで戦っているんだ”と思える。ここまでの試合で苦しいゲームもある。うまくいかないこともあるけれども、それでも勝つためにこうしようということも見えてきているし、その後の修正も練習でしっかりとやっている。すごく明確で分かりやすいので取材もしやすいです。磐田戦までに、ほとんどの選手にチャンスを与えている。選手達をしっかりと見極めて選手を信頼して起用をしている。信頼して選手を送り込める監督ですね。永田を見ても開幕の広島ではベンチだったけれども、次の柏戦ではスタメンを勝ち取っている。そこで永田は結果を出して、仙台戦では価千金のゴールを決めて、そこからは起用し続けている。ただ、少しでも腐ったり、ちょっとでも気を抜いたりしたら使われない。

椛沢:そのおかげで、永田もそうですし、ランコも競争意識をもって戦っているという姿がピッチでも見えますよね。

河合:監督の信頼、仲間の信頼を勝ち取るために選手は必死ですよ。そういう部分でも監督のモチベーションの持っていき方はうまいと思う。選手達も頑張るし、その頑張りをサポーターもみて応援しようという気持ちにさせられるんじゃないですか。川崎戦の「WE ARE REDS」コールは、私は泣きそうになりましたよ。本当にお願いだから守りきってと願いました。あのような気持ちが見える試合は応援したくなりますよね。坪井選手も試合後に、苦しい時にあの声が聞こえて頑張ることが出来たという話をしていて、昔のレッズが戻ってきたと思えた試合だった。サポーターも選手も一丸となって戦っている。

Photo by(C) Kazuyoshi Shimizu

椛沢:ここまで結果が出ているのは偶然の産物ではなくて、背景に確かなものがあるということですね。

河合:練習の仕方、選手の気持ちの持って行き方など全てが影響をしての結果であると思います。監督はまったく練習を非公開にしないので、自分で見て、チームがどう進んでいるのかを確かめて下さいとオープンにしている。何を聞いても隠すことはしない。すべての責任は私が負うというようにしている。だから、私もサッカーが好きになってきています。勝てば選手が良くやった。負ければ監督責任だということを私は教えられてきて、またそういう想いを取り戻すことが出来ています。

椛沢:練習から見える監督が目指しているものは何でしょうか。

河合:規律を重んじていて、そこプラス、判断力を選手には求めている。ミニゲームなどで、選手をいちいち止めてボールを受けるタイミング、受け方を細かく指示している。選手も頭を使いながらやっていますよ。“組織プラス個”ということが練習中からも見られるかと思います。

■阿部、槙野、柏木がチームを支える。

椛沢:個々の選手の話をしますと、イングランドから戻ってきた阿部がキャプテンにもなり、ピッチでも存在感を出して、重要な役割をこなしていると思います。

河合:阿部の存在は大きい。色々なキャプテンのパターンがあるけれども、阿部ちゃんは自分の背中を見てついてこいという寡黙なキャプテン像です。プレーでは十分な存在感がある。阿部ちゃんがボランチに入るのは大きい。ボランチはハンドルという言葉だけど、心臓になっていると思います。

椛沢:その阿部ちゃんをボランチで起用することが出来た背景には、永田が最終ラインのセンターポジションをこなしていることも大きいですね。

河合:永田はあのポジションを自分のものにしてきた。フィード能力が高いと聞いていたけど、去年はそのように感じることがあまりなかった。今季はそれを感じるシーンが何度もある。それは必ずしも永田だけの問題ではなくて、受け手とのコンビネーション、阿吽の呼吸というものが必要だったので、永田はチームに馴染むまでに時間がかかったのかなとも思う。彼はパスの長短の使い方がうまい。本人も最終ラインのセンターのポジションを、やれる自信がありましたからね。それはコラム「自分を信じること」にも書きましたから、彼がどういう思いでやってきたかはコラムを参照して頂ければと思います。

椛沢:こちらも新加入の槙野については、どうですか。

河合:槙野はいいでしょう。100%の力を出しきって、行くときは行く。守る時は守る。自分がシュートで終わらなければ戻る時間が大変だということも分かってプレーをしている。彼はお祭り男だけど、実際はすごく真面目ですよ。そうでなければ、あのような気持ちの入ったプレーは出来ない。ただのお祭り男ではなくて信念をもったお祭り男ですね。今までの浦和レッズにはいないキャラクターで、新しい風が吹いている。良い南風が吹いているかもしれません。北風ではサクラは咲きませんからね。

椛沢:柏木陽介も今季は変わった印象を受けます。チームの主力としての存在感がようやく出てきたようにプレーから感じます。

河合:パフォーマンスについては、本人はまだまだと言っていて。私もまだまだだと思う。こんなものではない陽介は。昨年までは彼のノールックパスが、難しかったり、もう少し丁寧に出そうと思うプレーがあったけれども、今季になって堅実なプレーにはなってきている。彼がミシャのサッカーを一番理解をしている人ですから、広島時代は、最初はじゃじゃ馬だったようですけど、また一から浦和で怒られるようでは、あなたは広島で何年やってきたんだという話になりますから、その部分はわきまえていると思う。彼は監督が求めること、求められること、自分がやらなければいけないことを常に分かっている。今年になって変わったということはないと思うけど、浦和に来て結果を出さなきゃいけないと思っていたところがあって、更に去年彼は何のために浦和に来たんだと悲しい想いをして、そこを一つ乗り越えた所はあるのかもしれないですね。

Photo by(C) Kazuyoshi Shimizu

椛沢:ここまでの浦和レッズの状況は、良い方向に進んでいると捉えて良いですね。

河合:中盤でのバランスがもう少しもてるようになると、もう少し余裕をもってボールを回せられるようになる。そこが次のステップになってくるんじゃないかな。あとは苦しい時間帯をどう修正するのかということも少しずつ、試合を通して出来てきているのかなと思う。磐田戦後も永田は、アウェイだから勝ち点1でも良かった。最後の所でもっと試合を落ち着かせればよかったと後悔しているという発言をしていました。誰か一人に頼るサッカーではなくなってきているという点では成長してきている。サクラが咲き始めてきていますけど、レッズのサクラはまだちょっと堅いつぼみ。そこに少し暖かさがやってきて、まだ咲かないけど、絶対に咲くよという意志が見える状況。そう思えるここまでの戦いだったと思います。今のレッズの話をしているとすごく楽しい。まだ花見はできないけど、良い花見が出来る期待感がある。信じてついていこうという思いが、ここまでの戦いで感じることが出来たと思います。ミシャさんも「昨年我々は残留争いをしたチームなのだから、降格するかもしれないということを絶対に忘れてはいけない」と必ず言う。それを聞く度に、常に謙虚さを持たなければいけないと思う。それがなければつぼみは開きません。

 

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