浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク拡大版 Vol.83(4/13)

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:先週末の鹿島戦は、敵地カシマスタジアムでは2007年以来、5年ぶりの勝利となりました。カシマスタジアムで歌う勝利の凱歌“WE ARE DIAMONDS”は最高ですね。例年よりも鹿島に集まったサポーターは少なかったようにも感じられましたが、アウェイゴール裏だけに留まらず、メイン、バックのアウェイ側にもレッズサポーターが席を真紅に染め、レッズを後押ししました。対する鹿島側は恒例のデカ旗お披露目が試合前に行われて数々のデカ旗が広げられていましたが、チーム状況もあってかどこかサポーターも元気のない様子でした。

豊田:このゲームは応援に徹したいがために、本誌webで『大原ネイチャーノート』を担当されている百瀬浜路さんのご主人のクルマに同乗させてもらって参戦しました。

椛沢:試合は、キックオフと同時に攻勢をかけてきた鹿島に2分に先制を許す展開となりましたが、次のプレーでマルシオが同点ゴールを決め、更に5分にはポポが逆転ゴールを決めるという序盤から目まぐるしい展開となりました。

豊田:アントラーズの先発メンバーを見て改めて世代ギャップを感じてました。これだけ戦績を積み上げてきたクラブでも、こういう節目を迎えるのだなと……。三冠時代等を支えた曽我端や小笠原、岩政らに対して、攻撃を担うコマは一気に大迫勇也(21歳)、梅鉢貴秀(19歳)、土居聖真(19歳)という面々になる。彼らを中心にした早々のパワープレーは先制点を取った後もボルテージ高く、かなり前がかりで行なわれていましたね。

椛沢:そして、浦和は25分にもPKを奪い、マルシオが決めて3-1とします。

豊田:上滑りが見えた相手のスキを突く巧妙な攻撃だったと思います。マルシオとポポのコンビネーションに柏木のテクニックが加わってタメを作ると、後方から阿部や槙野が一気に加速してアタックに加わってくる。あの追い越しに相手ディフェンスラインは相当に動揺したと見えました。まあ、同点ゴールのマルシオの「トラップからシュートまで」は昨シーズンの出来からはかけ離れたもの。鹿島は真正面から撃ち合って、初めて今季のレッズの変化を実感したのではないでしょうか。

椛沢:鹿島はジョルジーニョ新体制への変化と共に、田代、野沢という主力も抜けたことで、戦力的な問題ということもあるように感じました。今季は特に苦労しそうなシーズンかもしれないですね。キックオフと同時に攻勢をかけてきた鹿島からは浦和戦にかける意気込みを強く感じましたが、逆に鹿島らしい余裕や勝負強さがなかったように感じます。その隙を浦和が安易とついて逆転、そして追加点と前半の早い段階で試合を決めてしまったかのような試合だったと思います。

豊田:ただキックオフ直後の急展開の中で、レッズサイドにもGK加藤がロングキックを焦って蹴る場面が相次ぎ、修正してスローで持ち直そうとすると今度は敵にそのままカットされ……という非常にバタついた場面がありました。同点になった後、5人が最終ラインに並ぶ引いた布陣から盛り返した守備メンバーの経験値が大きかったと思う。でも坪井、啓太、平川、阿部と軸がベテランぞろいですからね。特に前半のような攻守の入れ替わりの激しい展開になると、右サイドで攻守に渡って起点になる平川の負担は間近に見ていても辛そうに見えるレベルでした。セカンドチョイスを徹底させるところでミシャ監督の次なる手腕が発揮されるところとなると思います。

椛沢:ベテラン選手の経験値がミシャサッカーを創る上で大きく貢献しているのは事実でしょうね。将来に繋げていくためには、豊田さんの言うとおりセカンドチョイスを育てていくかということが課題になってくると思います。そして試合は、そのまま終了しました。ナビスコ磐田戦、この鹿島戦を見ても徐々に攻撃の形が見えるようになってきました。3点を獲る流れはいずれも狙い通りの形だったのではないでしょうか。終盤こそスローダウンしたものの、完全にハマった形で鹿島に完勝した試合だったと思います。

豊田:着席した時から感じていたことは、熱気の衰退と空席の多さですね。あのカシマスタジアムがレッズ戦で2万3千人レベルとは……。日ごろから鹿島サポーターの方たちとは連絡を取らせてもらっているのですが、「ウチは勝ち続ける以外に道はないんです」との彼らのコメントと照合すると、今後にむけてこのレッズ戦の敗戦は観客動員も含めての大きなダメージとなるかも知れません。でも宿敵を心配する余裕はない。ホームで行なわれる次のレッドダービーがさらに盛り上がるように、全力でイレブンをサポートしていくしかありません。

椛沢:昨シーズンから話題になっていた社名変更についても発表があり、2012年4月17日のJリーグ理事会の承認を経て、20日に株主総会で特別決議、5月15日に正式に社名変更を行うそうです。この意義について橋本代表は「今一度、地域に愛されるクラブとして、これまでの活動を推進していきたい。地域に密着する上で、チーム名と法人名が同一になるのは望ましい」と会見で話し、株式を50・6%保有する筆頭株主の三菱自動車の名前が法人名から消えることについては「(三菱自動車からは)経営に関してはサジェスチョン(意見)をもらっているが、編成はレッズの判断に任されている。出資比率に変更はなく、母体企業として支えられていることに変更は一切ない。三菱との関係が変わるものではない。(法人名変更は)レッズの地域密着活動の意思表示と捉えてもらっていい」と強調したそうです。この発言通り、名前という部分だけではなく、中身の部分でも「地域密着」の姿勢を更に強めることを期待します。これに加えて、駒場スタジアムのネーミングライツについても浦和レッズが取得したという話題がありました。さいたま市がNACK5スタジアム大宮に続いて、駒場スタジアムにもネーミングライツを導入したいという意向があり、最終的に愛着のある「駒場」の名前を持ちたいという、浦和レッズがネーミングライツの権利を取得することになったようです。名前については、公募によって決定され、「浦和」「駒場」が必ず入る形でのネーミングになるとのことです。個人的にも名前は「浦和駒場スタジアム」のままで、浦和レッズが名前を守ったという話になった方が美しいのではないかと思います。ネーミングライツについては、名前を浦和レッズが持つことよりも、ネーミングライツを持つことによって「駒場」を使った地域との関わり方の拠点として浦和レッズが有効活用していくようなビジョンを持つことのほうが重要であり、有益なものになるのではないかと思います。

豊田:報道があった後に偶然に顔を合わせた橋本代表から編集長にサインが送られる場面があったそうですね。タウンミーティングでのサポーターの気持ちをくんでのメッセージであるならば、クラブと手を携えて開催した意味も大きかったということではないですか?

椛沢:橋本代表としても皆に約束したことは守るという意思表示がありました。ところで、次号特集のためにお会いした木村元彦さんのインタビューも興味深いものでしたね。

豊田:旧ユーゴスラビアの指揮官たちがそろって脚光を浴びている時節だけに、彼のミシャ監督を始めとする采配と人物評価には非常に頷かされるものがありました。対談のテーマ自体は彼の最新作『争うは本意ならねど』に関するものなのですが、何しろイビチャ・オシムのドキュメント以来、外国人監督の逸話については外せない論客です。次号も楽しみにお待ちください。

椛沢:さて、ヴィッセル神戸とのホーム戦ですね。大型補強を行ったものの3連敗で失速気味のチームではありますが、鹿島から加入した野沢など、勝利に対して強かさのあるチームになっていると思いますので、油断は大敵。徐々にステップアップしている浦和レッズですが、まだまだ未完成ですから、変わらず一体となってがむしゃらに勝利を求めながら、進むべき道を進んでいきましょう。

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