河合貴子のレッズ魂ここにあり!「飢えた狼~岡本拓也選手」(8/24)
J開幕から浦和レッズを追いかけ、ケーブルテレビのパーソナティなどで活躍をしている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。
天皇杯2回戦の出場を目指して
群れを成して集団で狩りをする狼は、まず1匹が狙いを付けた獲物の前方を塞ぎ、そこに向かって仲間の狼が獲物を追い込む。狼の狩りは、牙で狩るのではなく、脚で狩ると言われている。狼は、決して脚の速い動物では無いが、持久力がある。要するに、狼は獲物を追いかけ、疲れさせてから牙を剥き獲物を仕留めるのだ。この、狼の狩りに対する習性をTVで見た時、思わず岡本拓也選手を思いだしてしまった。
普段は、チームメイトから何かと頼まれごとをされ、名前を文字って「岡タク」とまで呼ばれるほど面倒見が良い。ちなみに、「岡タク」とは「岡本タクシー」の意味合いも含まれている。本当に人の良い好青年である。しかし、いざピッチに入ると、その姿は豹変する。まるで、満月を見ると狼男に変身するかの様に、ピッチに入るとギラギラと目を輝かせて、ボールに喰らいついて行く。以前、練習中にポンテ選手に対してガッツリとスライディングでボールを奪いに行った時、ポンテ選手の逆鱗に触れた事があった。練習後に、ロッカールームでポンテ選手に謝罪を入れた岡本選手であったが「一応、謝罪はしましたが・・・。確かに、ファールだったかもしれないけど・・・。そんなに汚いプレーだったとは思えない。試合だったら、あのぐらいのプレーは当然有りだと思う。練習中から試合と同じ様に意識してやらないとだめだと思う」と若手ながら臆する事のない一面を見せた。
当時のプレーは牙を剥くだけであったが、今は更に牙の剥き方に磨きが掛かって来た。ミニゲームの紅白戦で対峙する梅崎司選手がボールを持つ前から、駆け引きを繰り返し、梅崎選手に思い通りのプレーをさせない。梅崎選手にパスが出ると、まずはインターセプトを狙う。梅崎選手にパスが通ってしまったら、身体を寄せてプレーを遅らす。遅らしている間に味方がやって来て、挟んでボール奪う。味方の対応が遅れても、しつこく着いて行き、梅崎選手は堪らずバックパスをして後方から攻撃の組み立てを作り直すしかなかった。正に、狼の狩りの様である。狙いを付けた獲物の前方を塞ぐ1匹の狼が、岡本選手なのだ。そして、獲物が疲れ追い込まれた所で、鋭い牙で岡本選手が止めを刺す。練習後、苦虫を噛み潰した様に梅崎選手は「あぁ~!今日は悔しかった!」と言葉を漏らした。してやったりと満足そうな笑みを浮かべて岡本選手は「梅さんには裏(DFの)を取られない。来たらガッツリ行く。身体を寄せて、その間に秀仁(小島)が来てくれてボールを拾ってくれた。上手く行った」と話してくれた。
岡本選手は、決して足の速い選手では無い。その分、ポジショニングに人一倍気を使っている。「喰らいつくのは良いけど、その後のポジショニングの修正と攻守の切り替えをしっかりとやらないといけない。FWとの駆け引きは大事だ。相手にプレッシャーを掻い潜られたらやって行けなくなってしまう。坪さん(坪井)のプレーを観ているとミスが無い。ミスを失くさないと試合には出られない。」と警戒を高める。そして、攻撃面に関しては「僕の所からしっかりとくさびのパスを入れられるシーンを増やさないといけない。近くしか見えていない。もっと遠くを見たい。このままでは駄目だ!天皇杯が、今の自分にとっては一つの目標!天皇杯まで練習試合が何試合かあるから、頑張ります」と燃える様などん欲な目をしながら課題を話した。岡本選手の目の先には、9月8日に駒場スタジアムで行われる天皇杯があった。
”飢えた狼”岡本選手は、獲物の狩り場を試合のピッチへと移すために、走り負けない持久力と鋭いつめ、そして最後に獲物を仕留める牙に、目を爛々と輝かせながら磨きをかけている。