河合貴子のレッズ魂ここにあり!「立ちはだかるプロの壁を打ち破る時~矢島慎也選手」(9/28)
J開幕から浦和レッズを追いかけ、ケーブルテレビのパーソナティなどで活躍をしている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。
リーグ終盤戦、若手の台頭がチームを底上げする!
優勝するチームには、苦しい試合展開の時に、必ず途中から出てきて試合の流れを変え、勝利に導く仕事をする選手が必ず存在する。田中達也選手には十分にその力はあるが、幸運を運ぶ「ラッキーボーイ」的存在に、矢島慎也選手がなるのではないか?と私は秘かに期待を寄せている。
ナビスコ杯の活躍が認められて、3月24日に行われた札幌戦で、Jリーグ戦デビューを輝かしく飾った矢島選手。しかし、その後はベンチに入ったり、ベンチ外だったりと混沌とした日々が過ぎた。矢島選手は「リーグ前半戦は、怪我人が出た中で試合に出場したが、リーグ戦の中で結果が出ずに、インパクトが足りなかった。リーグ後半戦は、帯同してもベンチ外だったり・・・。監督からは、アウェーでもサポーターが来る雰囲気を感じて貰いたいって意図があって、ベンチ外でも良い経験になった。練習でも、良い日と悪い日があって、安定したプレーが出来ないんです。継続する事が一番難しい。」と話した。6月23日仙台戦に、後半84分に矢島選手にチャンスが回って来た。短い時間の中でも決定的なチャンスがあった。宇賀神友弥選手からの折り返しには僅かに合わず、終了間際にもゴールを狙った。「仙台戦、凄い緊張感の中で、自分も緊張したが、経験出来た事は良かった。最後、シュート撃った時、相手にあたって終わってしまった。あの時、かわしてシュート撃てたら世界レベルですかね?!」と苦笑いした。チャンスを生かす事は出来なかったが、仙台を脅かす事は出来た。
とにかく矢島選手は、スペースを使う動きが上手い。DFの裏を狙ったり、DFを釣って味方にスペースを作ったり、「スペースの魔術師」とまではいかないが、独特の視野の広さを持っている。本人は「サッカーの試合を見る時に、メッシのドリブルよりも、セスクがどう動くか?イニエスタがどうか?って見てしまう。ボールコントロールの技術があってのスペースの動きが、良いプレーに繋がる。負けたくない!良いプレーがしたい。」と目をキラキラと輝かせながら話した。
しかし、矢島選手の前にプロとしての大きな壁が立ちはだかった。仙台戦を最後に、試合からは遠ざかってしまった。更に、追い打ちをかける様に、8月4日のFC東京戦以降はベンチにも入れない現状。「試合に出てない事が人生の中でなかった」と言うぐらい、ここまでの、矢島選手のフットボール人生は順風満帆であった。試合に出られない初めての経験に戸惑いを隠せないでいた。「レベルの違いはあるが、自分が負けているとは思いたくない。動き出しの質は陽介さんやマルシオの方が高いが、運動量では負けない!」と意気込む。練習中に常に対峙するのは、海外経験もあり日本代表の槙野智章選手である。「槙野君を背負っている中で、ボールを受けても、フィジカルが違うし・・・。練習のコートは狭いし・・・。まだ、勝てない。逆サイドは坪さんだし・・・」と弱気になりながらも「向かって行くだけで、成長出来ます」とチャレンジ精神で大先輩にぶつかって行く。
「練習で頑張れば、必ずチャンスは来る」と矢島選手は言う。若手の台頭はチームの大きな力になる。試合に出場したら「スペースを使うのも、点に絡むため。点に絡むために動いている。全ては点です」と笑顔が零れた矢島選手。
厳しいプロの立ちはだかる壁を打ち破って、矢島選手がピッチに立った時、本物の「スペースの魔術師」となるだろう。