浦和フットボール通信

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URAWA TOWN MEETING 004 「レッズジュニア創設、地元の才能育成をどうするか。」(2)

「サッカーの街を名乗りながら、サッカー指導の現場で地元トッププロとホームタウンの連携がない」――― さかのぼれば、このテーマは浦和とレッズがJスタートに際して以来の懸案だった。折しもレッズのジュニア年代へのアプローチが本格化し、レッズアカデミーと地元指導者が連携して地元少年団選抜メンバーを育成するジュニアアカデミープログラムも始動から2年目を迎えている。ホーム浦和の育成は改革されるのか。そこにはどんな未来設計があるのか……。先週に引き続き、FC浦和・町田隆治監督、北浦和少年団・吉野弘一監督、矢作典史レッズアカデミーセンター長をパネリストに迎えて開催された、注目の第4回『URAWA TOWN MEETING』の模様・第二回をお届けする。浦和フットボール通信編集部

2012年10月11日(木)北浦和 ワインバール・ピノキオ

司会:椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)、豊田充穂
ゲスト:矢作典史(浦和レッズアカデミーセンター長) 町田隆治(FC浦和、別所少年団監督) 吉野弘一(北浦和少年団監督)

豊田:『浦和フットボール通信』が2008年に取材した折に、FC浦和は全国少年サッカー大会いわゆる「全少」において全国制覇を達成しました。ちょうど埼玉サッカー100周年の年。記憶に残る優勝でしたね。町田監督は別所少年団で指導をされるかたわらFC浦和の指揮を兼任し、この偉業を果たされたわけです。我々も取材しながら、この77年国立の南高校を彷彿とさせるFC浦和の戦いぶりに感じ入りました。

町田:(笑顔で頷いている)

豊田:ファイナルに近づくに連れ、対戦相手はヴェルディやレイソル、グランパスのジュニアなどJのプロ組織が率いるエリートイレブンになって来るわけです。しかし、スタンドとピッチを見くらべても、FC浦和が登場すると熱、つまりボルテージが違うんですね。子どもたちとホームタウンから和気あいあいと一緒にやって来るのがURAWA。そんな子どもたちが、プロスタッフにしっかりとガードされて入場するレイソルジュニアの子たちを向こうに回し、ピッチ上で“選抜軍”とは思えない堂々たる組織プレーを披露する……。何か久々に誇らしい気分がしたことをよく覚えています。

町田:ありがとうございます(笑)。

豊田:Jヴィレッジで予選リーグを勝ち抜き、決勝トーナメントに進むために東京に戻ってくる移動バスの中で、選手たちから自然発生的に合唱が出たとか。FC浦和の首脳陣はその時に勝利を確信されたというお話しを聞きました。町田さん、その時のエピソードをお聞かせ願いますか。

町田:はい。Jヴィレッジでは準々決勝までやって、ヴェルディとの対戦だったのですが、その試合はPK戦で勝利。Jヴィレッジで試合をする時の最初の合言葉は「西が丘に行こう」でした。その目標をクリアしてJFAが用意してくれたバスで西が丘に帰ってきたわけですが、疲れているはずの道中に子どもたちの間から誰かれとも言わず、手を叩きながらの大合唱になりました。選抜チームだったが、そんな彼らがひとつのチームとして出来上がってきたとすごく感じましたね。その後も最後まで諦めずに戦おうということで、準決勝、決勝も厳しい戦いながらクリアが出来たのかなと思います。

豊田:我々は西が丘でも取材を続けたのですが、ピッチ上は連日35度前後の猛暑。あれは準決勝と記憶していますが、レイソルジュニア戦が最大のヤマ場だったと思います。大接戦の末にFC浦和の勝利が決まると、負けて号泣しているレイソルの選手たちを助け起こすFC浦和のメンバーが複数いました。レイソルのクラブスタッフの監視を逃れて(苦笑)レイソルの選手たちに話を聞くと「浦和の少年団で一緒だったんです」というわけですね。つまり同じURAWAの少年団出身の少年たちがレイソルのユニフォームを着て同じピッチ上に少なからず立っていたということ。別れぎわに「悔しいだろうけど、また頑張ってね」と声をかけると「今日やったFC浦和のメンバーと、またやりたい」と言ってくれたことが強く印象に残っています。

町田:はい。レイソルのほかにもヴェルディやジェフなど、浦和36団からは毎年何人かがメンバー入りしますので。

豊田:ですよね。このように「URAWA育ちの才能が、頂上決戦に臨む」という醍醐味。これを我らがホームタウンで再現したいという思いから、椛沢編集長以下の『浦和フットボール通信』は広く地元36団と浦和レッズのジョイントを計っていきたいと考えるわけです。さて矢作さん、先日の浦和近県招待大会では挨拶を頂き、ありがとうございます。これも少年団幹部の皆さんから「せっかくレッズランドで開催している伝統があるわけだから、レッズとの絆の証としてアカデミーの矢作さんにご挨拶を頂けたら」という希望を承って、浦和レッズの畑中さんにもお願いをして実現をすることができました。私も今日も来場いただいている土橋さん、内舘さんがコーチとして加わったFC浦和の戦いぶりを感慨深く見たわけですが、大会をご覧になっての印象を伺えればと思います。

矢作:大会にお呼びいただいたことは大変嬉しく感じました。実は私も川口の出身。少年団も川口のチームに所属していましたので、子供の時は浦和に来て、北浦和とかで試合をした経験があります。昔からURAWAのサッカーは少年団が支えているという印象がありました。その意味で皆さまが昔から連綿とやっておられることがこの街のサッカーを支えてきたということ、それに対してレッズとしても感謝をしているという挨拶をさせて頂きました。

(町田・吉野、深く頷いている)

矢作:そういうパワーが、もともとここ浦和という場所にはあります。それがFC浦和というチームに作り上げられれば、それは強いです。拝見していて(このチームで試合に臨むときは)子どもたちも何か背負うのではないかと感じました。とにかく粘り強いし、こんなのが入るんだと思うゴールが試合の中で出てくるわけですね。気持ちとか狙いとかがないと、ああいうゴールが入りません。URAWAを背負えば、これは強いなと実感した次第です。

椛沢:ありがとうございます。では実際にレッズと地元少年団がどう連携をしていくかを模索しましょう。まず少年団とレッズジュニアの連携現状という所では、すでにアカデミープログラムが2010年5月より実施されています。これは浦和地区の少年団から選抜された5、6年生の選手を対象に、レッズのコーチが定期的に直接指導を施す、というものですね。

町田:はい。昨年5月から始めておりまして、矢作さん以下土橋さん内舘さんと大原のクラブハウス・グラウンドで指導を実施していただいています。子どもたちが、もしかしたらレッズの選手に会えるかも……という場を提供していただいているわけですね(笑)。これは浦和の少年団所属であることが条件。我々浦和のトレセンの活動の中で、少年団の中から子どもたちのピックアップを行い、より高いレベルへの到達を狙うという試みです。毎回40名ずつ5月から11月までの1年間活動し、私もすべて参加させて頂きましたが、レベルが上がってきたなという手ごたえがあり、その意味でも感謝をしております。今年もぜひ継続したいと考えています。

椛沢:これは浦和の少年団とレッズが始めてコラボレーションした形ですね。

町田:初めてクラブスタッフの方々と少年団指導者がともに考えながら開催を実現したという大きな流れだと思います。

椛沢:矢作さんも一年間、浦和の子たちを見てきたと思いますが、どのような印象を受けましたか。

矢作:発端は指導者評議会の近藤技術委員長さんからのご提案でした。選手たちにしてみれば土橋とか内舘とボールを蹴れるというだけでも刺激になるし、指導者の方ともども来ていただいてプロ選手を見るだけでもモチベーションが上がると思う。そのようなクラブとホームタウンのメリットをホーム浦和の子どもたちに満喫して欲しいという想いがありました。かなり優れた子たちが来てくれまして。僕たちも楽しくやれましたし、実際に活動を通じて上手になったと思います。ジュニアユースの選考会に来ていただいた折には、気心も知れているだけに逆に大変だった部分もあったのですが(笑)

椛沢:従来までにも北浦和少年団から山田直輝選手、矢島慎也選手などを輩出している実績がありますが、その経緯の中で連携、交流というものはあったのでしょうか。

吉野:直輝君はお兄ちゃんもユースでやっていましたし、クラブスタッフの中にも北浦和少年団OBがいるので、そういう中で色々な話は聞いておりました。私は幸い色々な交流を持たせてもらっているのですが、一般的な指導者の方々にとってはクラブ側の指導者と会うこと自体が敷居も高いと思います。そこを取り除いてもらい、いつもフランクに色々な話が出来ると良いなと思う。子たちは平気でも指導者の方が敷居が高いと思っている部分もあると思うので、選手同様に指導者交流もあればと感じます。今回のような交流機会を多くしてもらえれば理解し合えるし、意見を出しあえるのではと思いますね。

Photo by(C)Kazuyoshi Shimizu

椛沢:クラブと少年団がどのように連携して地元才能育成が出来るかという部分で、町田・吉野両監督に対談をお願いした折にアイディアをいただきました。それをご紹介します。「レッズ主催の大会で、レッズジュニアが地元少年団と対戦する」「レッズ、地元指導者での各地域研修ツアー」「試合の戦評会」など、様々なアイディアが出そろっていますが……。

吉野:全日本少年大会に向けたツアーを組んで一緒に見るというのも一案と思います。去年一人で見に行った時にレッズの人にも会いましたし、そこでみんなで見て共有して話をしたり、URAWAのことを考える機会もあるのではと感じましたね。

町田:そのような観戦がてらの交流も良いですし、レッズにはハートフルクラブもある。もしお時間あるならハートフルの指導者にも少年団に出向いていただき、練習なり指導者交流をいただければと考えています。

矢作:面白い意見と思いますね。地域に支えられて良い選手を輩出するというのがクラブ以下私たちの責任のはずですから。その時に大事なのは知識やノウハウの出入りがあるオープンな形式を作るのがベストと思います。ヨーロッパのサッカー界が70年代から90年代までに進化をとげたのはEUになって開かれてからと思います。そう言う意味では私たちレッズもオープンに、あかれていかなければならないと考えます。これはぜひ進めたい動きですね。レッズのコーチ陣も自らのスキルなどを詳らかにすることが大事だと思う。ただ、こういう海外は意外とこういうシステムを造る時にアバウトなんですよ。日本人の特性としてこういう時に几帳面にやりすぎる傾向が強いですが、そうするとなかなか動きが取れなくなるときがある。まずは信頼関係をしっかりと築き、アバウトにやりながらビジョン共有をして大雑把に大胆に……という感じが良いのではないでしょうか?

≪以下、次号(11月8日配信予定)に続く≫

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