浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.114 (11/16)

高校サッカー選手権、浦東vs南高、激闘の試合にURAWAの原点を見た。

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:さてサッカーニュースでは、ヴィッセル神戸の西野朗監督が残り3試合を残して突然の解任となりました。突然のニュースに驚きました。監督だけではチーム構築はなされないということを再認識する出来事でした。

豊田:さっそく拙著に登場してもらったこともある佐野タケシさんという神戸サポーターに連絡をとりました。現役幹部のサポーターリーダーの面々からは、「残留を祈ります」とメッセージを送った彼に対して「無理!」のひとことが返ってきたとのこと。クラブ幹部と支持者たちの乖離は相変わらずのようで、佐野さんも「実は私自身も降格競争を楽しんでいるフシがあるのです。信じられないかも知れませんが、タイガースとヴィッセルに対しては(地元は)こんな空気なのです。ヴィッセルサポーターは、こういう局面に慣れ過ぎてしまって、何か熱いものが消えてきているように思います」との報告メールを追伸で送ってきました。まあ、私たちからみれば確かに信じられないですが(苦笑)、やはりいかに西野さんと言えども動かせない局面は組織の中に多々あるのでは?と予想できます。

椛沢:昨日発行された本誌Vol.48にも登場してくれた、矢島慎也選手も出場していたU19日本代表はイラクに敗れ、3大会連続でU20のワールドカップ出場を逃してしまいました。矢島選手はイラク戦で同点ゴールを決める活躍を見せてくれたのですが、残念ながら出場まであと一歩届かずでした。

豊田:バイタルエリアにスルスルと潜入する得意の動きからシュートコースをつかみ取り、一撃でゴールに収めました。瞬時の判断とボールコントロールは彼らしさが出せたと思います。ただ、イラクに遅れを取ったのは痛いですね。このところ日本サッカーの育成年代のアドバンテージが失われがちなところが気になります。

椛沢:そして今週末は、レッズは首位広島を埼玉スタジアムに迎えての一戦です。久しく勝っていないホーム埼スタで勝利が見たい。高校サッカーを見ていても「勝ちたい」という気持ちが作るパワーの強さを感じました。「レッズの勝利が見たい」当たり前の共通の思いを全ての人間が結集して、広島を打ち破りましょう。

さて高校サッカー選手権は、駒場で正智深谷vs本庄第一と浦和東vs浦和南の2試合が行われ、正智深谷と浦和東がそれぞれ決勝戦に進出しました。浦和同士の対決ということで、駒場には多くの高校サッカーファンが詰めかけていました。その浦和東と浦和南の“浦和ダービー”は死闘でしたね。序盤は探りあいの中での展開になりましたが、浦和東が36分に、得意のリスタートから先制点を奪い、逃げ切りに入ったのに対して、野崎監督も「先制したことで気持ちが受け身に入り、浦和南の圧力に全く前に進めなかった」と語る通り後半は浦和南の一方的なペース。それでも浦和東が耐え続けていましたが、試合終了間際の80分に浦和南がリスタートから同点ゴールを決めて、そのまま20分間の延長に入りました。延長前半の86分に、浦和南が勢いそのまま逆転して、勝負あったかと思いましたが、「1点ビハインドを想定したシチュエーションで右サイドバックを上げることを練習してきた」と野崎監督の采配がずばり決まり、延長後半96分に浦和東が同点に追いつきます。最後はPK戦での決着となり、こちらもPK戦を想定して登場した浦和東のGK長谷川君が3本シュートストップして3-2でPK戦を制して浦和東が勝利しました。

豊田:編集長にひと言。あのカード、バックスタンドの客席も確認しなければだめですよ。レッズサポーターとしては耳が痛いことですが、ホーム浦和のサッカーファンにはおなじみの駒場の帰り道で知り合いや周囲のファンの間から「これだから浦和は高校(の試合)がやめられない」「レッズにこの熱気を見せてやりたい」という声が上がりました。



椛沢:この試合は監督の声も拾うために、記者席で試合の模様を眺めていましたので、スタンドの様子は細かく覗うことはできませんでした。

豊田:南高と東高、互いの同点ゴールの瞬間に1階席天井に響いた音響…… 観客数は少ないのに、このところの埼玉スタジアムではついぞ感じたことがないピッチ上と客席の一体感を感じました。こういう雰囲気には伏線があります。まずはハーフタイム。先制点を取られた南高が駆け足で東高イレブンを追い越して控え室に戻りつつ、全員が丁寧にグラウンドに一礼するマナーを忘れなかった。このタイミングで私は東高校サイドの最後列周辺にいたのだが、前席で川島永嗣君の噂話をしていた東高OBらしき30代くらいの男性グループから速攻で声があがった。「南高、気合いだし、鍛えられてるよ。後半は来るぞ」と……。

椛沢:なるほど。

豊田:至極もっともな指摘と思いますよ。こういう大一番でも、ふだんからのマナーを生かして臨む姿勢を崩さない。しかも両軍の応援席がOBや父兄を含めイレブンのそういう振舞いまでを見逃さないわけです。嫌でも後半への集中が高まる気配が生まれる。こりゃ、ビッグマッチになるかも?と期待して南高の応援席サイドに席を移してみると、果たして「応援、おつかれさまです」の熱い麦茶があちこちで振る舞われていました。ひと目で部外者と分かる僕にまで……です。

椛沢:頷けますね。南高の2点はまさにスタンドの応援も含めた気迫で奪ったものだったと言えると思います。

豊田:後半の入りも印象的でした。バックスタンド前に近寄ったGKの村松君以下のイレブン円陣に大声援が送られましたが、間隙を縫って「攻めても(相手カウンターを)摘み取る位置は抑えろ」「いま出来ることだけを考え通せ」の鋭い客席指示が飛んだ。このくらいの結束になると、終了間際までリードされていようと“悲壮感”みたいなものは感じられないんです。秋山監督の花道という背景もあるのでしょうが、客席とピッチ上に絆が出来上がっていて、雑念も入らない雰囲気。勝敗を別にしても「自分たちが見守ってきたチームが恥ずかしいゲームで終るはずがない」という信頼関係ですね、あれは。

椛沢:野崎監督も「さすが南高だった。私も南高出身者で、南高魂があるから子どもたちの気持ちが痛いほど伝わってきた」と南高イレブンの気迫のプレーを讃えていました。南高が相手ということもあり「PK戦は直視することが出来なかった」と特別な思いを持って試合に挑んでいたようです。

豊田:そういう勝負だから、地元サッカー好きの間にも「こういうサッカーならまた観たい」という気運も生まれるのでしょう。ダービーの熱気を差し引いて客観視すれば、勝った東高校を以ってしても予選決勝、全国での戦いは厳しいものになることは間違いない。でも例えばこういう駒場の空気感を起点にして、レッズ支持者は「浦和らしいサッカー」という永年のテーマを考えて欲しいですね。「必死なプレーが感動を呼ぶ。だから負ければ後がない高校サッカーは往々に大人のリーグ戦よりもファンの心を打つ」という森孝慈さんの言葉を思い起こさせる一戦だったと思います。

椛沢:森さんは、その思いもあってJリーグでも必死のプレーをレッズの選手たちに求めていたのでしょうね。負けても負けても次こそ勝とうという空気感がレッズにあったのは、その姿勢と思いがピッチとスタンドで共有されていた思いだったのではないかと思います。野崎先生の名将らしい采配で決勝まで駒を進めた浦和東は2年連続全国出場を目指して、決勝で正智深谷と対戦します。「強烈な個がある」と野崎監督が評する正智深谷を相手に、どんな戦いを見せてくれるのか、今週末の試合が楽しみです。

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