浦和フットボール通信

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「 レッズ2012月刊ライブディスカッション 」Vol.8 2012シーズンを総括す。(1)

レッズ密着取材を続ける河合貴子氏に、本誌・椛沢編集長が浦和レッズの現状や選手達の思いを毎月訊く「レッズ2012月刊ライブディスカッション」。昨年の残留争いを経て、出直しを図り、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督を迎えてスタートした今季、選手たちは新たな戦術を習得しながらシーズンを過ごした。中盤戦以降から3位以内に入り、優勝も視野に入る時期もあったが、仙台戦など勝負所に敗れ優勝の可能性は潰えた。その後、3位以内に入ることで得られるアジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場権獲得を目指し、終盤戦は戦い最終戦で名古屋に勝利し、鳥栖、柏が敗れたことで、3位に浮上。5年ぶりのACL出場を決めた。そんな2012シーズンを振り返ると共に、豊田充穂も加わり、メディア、ホームタウン、スタンド、それぞれの立場の2012年の評価、採点も行った。(浦和フットボール通信編集部)

一貫してやり方を貫いたことが結果に繋がった。

椛沢:鳥栖戦に敗れて5位に下がりましたが、最終戦で名古屋に勝利してACL獲得をすることができました。

河合:棚からぼた餅だったけどね。それでも良いと思う。

椛沢:そうですね。結果的に良い終わり方が出来たシーズンだったとおもいます。今シーズンは15勝9敗10分で勝ち点55。得点47(9位タイ)失点42(リーグ6位)という結果でした。今シーズンの総括としては、どのような印象ですか。

河合:一歩間違えれば下に行った可能性もあったし、良い意味で一歩間違えれば優勝できたと考えれば、新体制一年目のミシャ体制でここまで行けたのは、満足いく結果だったと思います。

椛沢:ここ何年間ない良い終わり方でしたよね。実際に最終戦の勝利は、リーグ優勝を決めた2006年まで遡る勝利ということでした。

河合:去年、一昨年を考えても最悪の終わり方だったよね。終わりよければすべてよし!(笑)。天皇杯もそう行こう!

椛沢:今季、チームとして伸びた部分はどこだと感じていますか?

河合:やはり一貫してやり方を貫いたことだと思います。それが結果につながった。確かに波があったけれども、敗戦から学んだ部分はあったと思う。開幕戦の広島戦でチームの熟成度の違いを見せつけられた試合だったけれども、その後、柏に勝って札幌に勝利と良いスタートを切ることが出来た。しかしアウェイで大宮に負けたことは痛かった。大宮は身体を張って守って、守ってという試合で、サポーターから「必死さが違う!」と言われた試合だった。

椛沢:ダービーとしては嫌な負け方だったと思います。

河合:浦和のプライドとしては許せない負けだったね。

椛沢:波というと、ハマる試合とハマらない試合がはっきりしていたのかなと思います。

河合:極端に引いて守ってくるチームには崩しきれなかった。最初の頃は、引かれた時になんとかしないといけないと慌てて、無理して入れた縦パスを取られてショートカウンターを狙われるパターンがあったけれども、徐々に落ち着いてボールを回せるようにはなってきたと思う。終盤のフロンターレ戦では負けた試合だけれども、内容は悪くはなかった。0-5で負けた時のガンバは本当に強かった。こんなサッカーができたらどこのチームもかなわないと思うくらいの内容だった。あと終盤戦では、負けちゃいけないと思える札幌戦の負けは大きかった。

椛沢:終盤戦の札幌戦での負けで一気に勢いが削がれてしまったことはあると思います。その後、仙台にも敗れて今季初の連敗を喫しました。

河合:あの辺りで感じたのは、優勝を意識してから選手の動きが固くなりすぎた所があると思います。

エースストライカー不在が勝負弱さに繋がった。

椛沢:そこの勝負弱さは経験の無さですかね。

河合:浦和レッズとしては様々な経験をしてきたけれども、現状チームの中では経験がないということなんだと思う。

椛沢:勝負強さという部分では、勝負を決められる選手の存在の有無ということなのかなと思います。

河合:そういう意味ではアウェイの柏戦は勝負強さを見せてくれた試合だったと思いますね。

椛沢:あのようにポポが常時、力を出せるような選手であれば勝負強いチームと言えたのかもしれないですね。レッズが勝負強かった時はワシントン、ポンテという勝負を決められる選手の存在があった。その意味では、今シーズンはエースストライカー不在のシーズンだったと思います。

河合:ミシャさんが「0トップというけれども、登録の名前を変えただけじゃないか。日本人はポジションとか名前に拘るところがある。日本はFWの固定観念があり過ぎる」という話を最終戦の時にしていました。

椛沢:FWに勝負を決める選手が多いというイメージはありますからね。

河合:今のレッズはエリアの中に何人の選手がペナルティエリアに入っていける?何人の選手にシュートチャンスがあるかというと、5人くらい入っているんですね。宇賀神が左サイドにボールがあったら、平川が入って行っても良い。そこには規制はない。元気が楔を受けた時に、その前のスペースを誰が使うのかとか。その意味では誰もがゴールを決めれば良い。だから、FWがいなくても他の選手が決めれば良い。

椛沢:得点で言うとマルシアの9得点がチーム得点王ですから、そういう選手がいなかったのは確かです。

河合:決定的なチャンスは作れたけど決めきれなかったのは多かった。クロスバーとかポストにやたら嫌われたシーズンだったと思う。最終戦の槙野のFKはポストに当たって入ったのは絶対にACLを獲りたいという気持ちがサッカーの神様を呼んだんじゃないかと思う。槙野も試合後に「気持ちには引力がある」と言っていて、本当にそうだなと思いました。

椛沢:優勝をするためには、20点くらい獲る選手がいないと厳しい。上位チームをみても、広島は佐藤寿人、仙台には赤嶺、ウィルソンがいて、鳥栖には豊田がいました。

来季に向けた課題はなにか。

河合:そのくらい決められる選手がいればもっと上に行けたのかもしれないね。その中でもサンフレッチェ戦は2-0で勝ちました。あれは前からチェイシングをかけてチェイシングがはまり、守備が安定をして優勝チームの広島に仕事をさせないで、浦和のプライドが勝ったという試合だった。開幕の広島と序盤になってからの広島戦は、成長の具合が見えた部分だと思う。でもその後の鳥栖戦では前からチェイシングがなぜ出来なかったのかという話になるよね。

椛沢:サッカーは、相手があることだから、広島のように一度、引いてくるチームにはチェイシングが出来たけれども、鳥栖も前からプレッシャーをかけてくるチームで、それに負けて、それで、はまらなかった試合になったのかなと思います。そのように波があるのは未熟な所がまだあるということでしょうか。

河合:少しずつ成長はしているし、選手たちも向かっている方向は間違いないと言っていて、私も現場で練習をしている風景を見て、ミシャ監督の求めていることや選手が実行をしていることを見ていると向かっている方向は間違っていないと胸を張って言える。ただ、来シーズンも同じ結果が出るかというと別だとは思う。

椛沢:その意味でも来季に向けた課題は、どこになるでしょうか。

河合:まずは補強でしょう。24人ではACLは闘えない。

椛沢:メンバーが少ないことの理由なのかもしれませんが、ミシャはメンバーを固定してきましたよね。

河合:メンバーを固定することでコンビネーション、イマジネーションが上げていくという手法なのだと思う。そういった中でも誰が出ても同じことが出来るということをミシャは求めている。宇賀神は、途中から出てきて役割を果たせたし、梅崎はサイドでもシャドーの位置でも役割を果たした。課題という意味では、星取り表を見ても、波があったという言われ方をするのは致し方ないのかと思います。

椛沢:相手によって出来る、出来ないが出てしまっているので、どのチームにもある程度のクオリティの高さを維持出来るかということが課題なのかなと思います。

河合:それはそう思う。「誰もが札幌には勝てるという甘い考え方がある時が危ないんだ」とミシャさんは言っていたんだけども負けてしまった。札幌戦に負けた後のミシャさんは本当にずっと負けたことを言っていた。仙台戦で負けた後もため息をついて「仙台にも負けた。札幌にも負けたのが…」と言っていた。落としてはいけない試合を落としたという意味では、札幌、大宮、川崎、鳥栖戦が悔やまれます。

レッズは広島化していくのか?

椛沢:未熟であり足りないものがあるところの隙をつかれた試合が多かったですよね。
気になる補強の状況ですが、たかネエが知る所ではどんな状況でしょう?

河合:山道さん(強化本部長)は頑張っています(笑)。私が望むように、なっている所となっていないところはある。噂が先行しているところもある。私は、いらないと言われるかもしれないけど、ガンバから今野が欲しいなあ。

椛沢:広島から森脇が来るという噂もあります。

河合:そうなるといらないよね。現状、ディフェンスラインは年齢が高い。だからこそ、水輝にはもうちょっと頑張ってもらいたい。

椛沢:水輝は修行に出して頑張って経験を積んで来いという気持ちがありますね。鳥栖戦の出来を見ていても、このまま浦和にいて大丈夫なのかと思う。

河合:本人もそこは一番分かっている。鳥栖戦では豊田が一枚も二枚も上手だった……。

椛沢:ミシャ監督の一年間の功績という所ではどうでしょうか?

河合:いや、良いでしょう。去年や一昨年を考えるとみんながサッカーを楽しむ雰囲気が出来たかなと思う。もちろんチームを整備したことも大きな仕事だったけれども、雰囲気を変えたことも大きいね。ミシャさんは選手をすごく大事にしてくれる。出ていない選手に対しても。使われない選手は何が足りないかを考えて努力をする。与えられるのを待っているのではダメ。宇賀神や野田を見て欲しい。だから秀仁がんばれ(笑)彼もちょっとずつ、ちょっとずつ焦らず行こうとしている。

椛沢:ミシャはもっと頑固な監督だと思いましたが、浦和に合わせる所は合わせるという印象も受けました。

河合:サポーターの人によくサッカー王国の浦和が広島の植民地にならないといけないんだという声を聞くけども、その意見に対しては、私はあなたの見方が違うだけで間違っていると言いたい。ミシャさんは広島をそのまま持ってきたのではなくて自分の持っているスタイル、サッカー観、監督としての手腕、考え物の見方を浦和にミックスさせて新たに作り出している。広島の真似をしているわけでも広島をそのままやっているわけでもない。

椛沢:それでも広島の選手が来るとそのように見えてしまいますよね。

河合:そうなんだけども……。選手がなぜ来るかというとミシャさんの下でやりたいと思うからでしょう(笑)

今季のMVP、ベストマッチは?

椛沢:タカねえが選ぶMVPの選手は誰でしょうか?

河合:候補はいっぱいいるんだよね……。私は誰も選ばない選手かもしれない。私の中では候補は4人いて、坪井、永田、平川。そして本当にMVPをあげたいのは原口元気。

椛沢:え……、MVPですよ?(笑)。

河合:なぜかと言ったら自分が得意とするプレーを封印してまでチームプレーに徹する動きをした。ボールを持っていない時の元気を見てあげて欲しい。本当だったら、こういうことをしたいんだろうなとか、元気だったら右のコーナーに流れて受けたいんだろうなというのが見えるけども、それを我慢しながらやっている元気を私は評価したいと思う。原口は今シーズン、我慢をしてプレーの幅を広げた。

椛沢:それは頑張った賞ではないですかね(笑)。

河合:普通の人は選ばないよね。柏木とか槇野を選んだりするよね。私は元気に甘いって言われるよね……。これからは自分の得意とするプレー。プレーの幅が広がった所での裏に抜ける動き、引いてもらうチームプレーに徹した動きに磨きをかけて、来季は元気が15点決める選手になって欲しい。そうしたらMVPだね(笑)。そうやって考えると本当のMVPは誰だろう……。一年間フル出場をしているのは阿部ちゃん。そう考えると阿部ちゃんかな。プレーからしても黒子の活躍で浦和を支えていたと思う。

椛沢:最終的には普通でしたね。誰もが言わない選手と言っていたのに(笑)。

河合:椛沢は誰だと思う?

椛沢:私は、加藤順大ですかね。得点が少ない中で失点を抑えられたことが3位になった要因だと思います。その守備面での貢献は大きかった。今季はGKまでビルドアップに参加する中でも、繋ぎの部分で彼のミスで失点をするようなケースはほとんどなかった。シーズンを通して貢献度は高かったと思います。

河合:加藤君はまだまだ物足りないなあ。私は高校時代からずっと見てきていて、彼に言い続けてきたのは後ろからのゲームコントロール。ミシャ監督になって、そこをさらに求められています。足技は外から見ていてもすごい。でも彼はもっともっと伸びる要素がある。

椛沢:今季のベストマッチはどの試合でしょうか?

河合:最終節の名古屋戦と言いたいけども……。柏戦も最後の最後で諦めたら行けないという気持ちが見えた試合で好き。サンフレッチェ戦は気分が良かったね。あのような試合をいつも見たいので、ベストマッチは、サンフレッチェ戦ですね。椛沢はどの試合?

椛沢:内容とかではなくて、試合として勝って良かった!と一番思えたのは柏戦ですかね。ゴール裏から見ていると、ちょうど正面だったのでゴールに向かって転がってくるのが見えて、やった!勝つんだ!というのが分かったんですね。あの時のアドレナリンが出る感覚はサッカーを見に来て良かったと思える瞬間でしたね。

河合:それは嬉しいよね。あの時は、ポポがつま先でなんとか触ったので、ボールの勢いが強くなかったので途中で止まらないで!と願っていた(笑)。あの試合は、浦和らしい試合だったね。最後まで諦めない姿勢が大きかったと思います。

(第2弾に続く)

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