浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.120 (1/4)

5年ぶりのACL出場を起爆剤に2013年への期待。

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:あけましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願いいたします。2013年は、浦和レッズが5年ぶりにACLの舞台に復帰するということで、アジアでの久しぶりの刺激も受けながら、浦和レッズの盛り上がりを再燃させていく一年としていきたいところです。

豊田:今年もよろしくお願いします。年末年始にかけて何人かのJ周辺のマスコミ関連の方々や浦和レッズ支持者たちと浦和レッズの2013を語り合う機会がありました。2007シーズンからのレッズのACL連続出場は初年度におけるクラブワールドカップ3位という成果も含めてインパクトが高く、その後のJクラブのアジア挑戦の原点として深く認識されていることを知りました。多くの人たちの共通認識は再び「世界への舞台」にレッズが戻ったことへの期待感ですが、それは特にホーム浦和のレッズに対する改めてのサポート熱の復活とか、その後の経験を積んだレッズサポーターがこのチャンスをどのように捉えているのかという興味に根ざしたもののようです。

椛沢:クラブワールドカップでは、ACミランと対戦をして、世界との差というものを感じた部分もありましたし、本気の対戦をしたことで、目指すべき世界の位置というものも分かり、世界との勝負をこれから目指していくんだという気概を持ったのを今でも覚えています。反面、地に足をつけるという部分では、上を見たことで疎かになってしまったのかもしれないというのは、今振り返って思うところもでもあります。

豊田:多くのレッズ支持者の間では共通認識なのですが、ACL出場初年度における藤口光紀政権、あえてオジェック政権とは言いませんが(笑)、当時のクラブ方針としてのアジア制覇へのモチベーションに関しては多くのエピソードが語られています。藤口さんはレッズの出場が決定するや「予選ラウンドからホームゲームは例外なく埼玉スタジアムで開催し、世界挑戦の口火を切ったレッズの姿を多くの皆さんに生で見ていただく」との代表声明を発表。サポーターも含めた総力戦のアジア挑戦をアピールしました。緒戦となったペルシック・ケディリとのホーム戦では、その藤口宣言に呼応したサポート中心部が集結。寒風の平日夜というのにゴール裏をほぼ満杯の状態にしてレッズをバックアップした……あの光景はレッズが誇るべきJ史を変えた一コマと思います。あの瞬間に「レッズとレッズサポーターがアジアに行けば、何か革新的なことが起こるのではと感じた」との第三者証言もあります。それまでに出場していた他クラブにおいては、ACL予選はプレシーズンマッチの1試合。ガラガラの客席で行なわれるのが通例だったのですから。

椛沢:アジアでの戦いは、レッズサポーターが夢を見てきた舞台でしたからね。盛り上がらないはずがない。なぜ他のクラブが未だにACLで盛り上がれないのかが不思議なくらいです。アジアでの戦いで世界と繋がっていることを感じられるのはフットボールの醍醐味。あの2007年のACLデビュー戦となった試合の数々は忘れられない思い出です。サポーターが世界との挑戦を言い続けてきて、それが現実になった時にクラブも本気でそれに対して挑んだ。それがACL初出場、初制覇の原動力であったことは間違いないでしょう。

豊田:そういう意味においてもACLと併催される今季の私たちのサポートは、ミシャ以下の選手やクラブまでを含めた「総合力」を試される見せ場、そして厳しい舞台になることを認識しておきたいです。これもすでに多くの人たちが指摘していることですが、クラブは組織マネジメントを、サポーターはモチベーションコントロールを万全を期して臨まなくてはなりません。ACLは劇薬。根拠のない華やかな結末ばかりを夢見て飛び込むと、鹿島やFC東京のようにリーグ戦でのツケを払わされることになります。

椛沢:生半可なことでは太刀打ちできないことはアジアを経験しているクラブ、レッズサポーターは理解をしていると思います。全ての総合力が試される一年であることは、同意です。久しぶりのアジアでの舞台。レッズが帰ってきたぜ!とアジア、世界に対して特にアウェイの舞台で示していきたいと思いますね。ACLの醍醐味のひとつだと思います。これを起爆剤にレッズを盛り上げる配信もしていきたいと思います。さて、現在開催中の高校サッカー選手権は、全国初登場となった埼玉県代表の正智深谷高校が埼玉スタジアムで、京都橘と対戦をして、2-2の末、PKで敗退となってしまいました。前半早々に失点をしてから、点を取り合う展開となりましたが、常に追う展開となってしまったことで、苦しい展開を強いられてしまいました。2点を奪ったものの正智深谷の攻撃力を存分には出せなかった印象です。

豊田:新風が期待されていただけに残念。テレビ観戦でしたが、県大会では功を奏していた守りのリスク管理が出アタマの場面で崩されたのが痛かった。予選では全員で隙のないプレー布陣を敷いて勝ち上がった正智らしい堅実さが消え、浮き足立ってしまう時間が長くなりました。そつなくそこを突かれて後半も早々に先行される展開に……。選手たちはもちろんですが、全国初陣に立った小島監督も悔いが残るのでは? 終了間際の判定もPK戦の結末も運がなかった気がしますが、これも含めて「全国の戦い」です。県北勢がこの経験を積んだことの意味は大きい。今後の地元高校サッカー界の発展にも注目して行きたいです。

椛沢:話はレッズに戻って、今月末には始動するチームにあわせて、補強選手の発表が行われて、今年の体制も固まっていきます。興梠選手の獲得発表が秒読み段階で、最後は、外国籍選手の獲得があるのか、どうかという状況かと思いますが、2季目となるミシャが、どんなサッカーを創り上げていくのか楽しみにしていきたいところです。

豊田:興梠選手は動き出しの上手さはご存知の通り。クロスへの反応も早く、DFを引っ張って潰れるプレーもできます。従来の浦和レッズにはいなかったタイプのストライカーだけに、期待はもちろん大いに興味もわく。ミシャの采配はボールキープを前提にして自軍戦術を能動的に積み上げて行くやり方ですから、フィニッシャーは戦績に直結するワンピース。彼の役割はもちろん重要ですし、どこまで機能できるのかを見とどけたいです。しかし他ならぬアントラーズの得点源を獲得という側面から見ても革新的ですよね。地元のレッズを救うためにそろって入団した室井市衛、阿部敏之コンビとケースとはまったく異質。フロントが力を尽くして果たした補強成果が実ることを願って止みません。

椛沢:専門家の間でも興梠選手の評価は高いですね。そして鹿島のエースを引き抜いたことは画期的な補強であることも間違いないですね。それだけにレッズサポーター心理としては簡単に受け入れられない気分もあると思いますが、それを払拭するには、ピッチで活躍を見せて、レッズへの貢献を見せることしかないと思います。

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