【This Week】週刊フットボールトーク Vol.121 (1/10)
大型補強の浦和は金満クラブなのか?
椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)
椛沢:今年のストーブリーグは各チームとも動きが激しくなっていますね。その中でもミシャ2年目のシーズンを迎えるレッズが主役となり、盛り上げていました。補強の動きは現状で決着をしたようです。ここまでの移籍の動きをまとめますと、他クラブからDF森脇、DF那須、MF関口、FW興梠と代表経験の有力選手を各ポジションで補強。明治大からレッズユース出身で、高円宮杯優勝メンバーのFW阪野。DF永田拓也が草津から復帰。田中達也、エスクデロ、ポポ、原がそれぞれ完全移籍。濱田が新潟にレンタル移籍となっています。他クラブからの補強選手に関しては、ミシャの強いリクエストから実現した選手のようです。
豊田:なにやらミシャでずいぶん長い期間を過ごしたような気分になっていますが、彼の構想を軸に駒を揃えられるのはこれからでしょう。ポジションごとの補強布陣を見ると、クラブの需要と応じてくれた選手たちの顔ぶれによって、「Jにおけるレッズの現状評価」が読み取れるように思います。ACL出場権というカードの奏功によって漕ぎ着けた結果といえるのでは? 興梠選手の新加入などは非常に刺激的ですが、個人的には槙野選手の完全移籍がいちばん手ごたえを感じましたね。昨年はゲーム中に限らず、ピッチ上の彼の動きすべてを丹念に見させてもらいましたが、埼玉スタジアムの空気感にはかなり触発されるものがあったのだと思います。でなければ完全移籍の決断は無理だったと思う。本格的に「レッズの槙野」としての色を出せるのは今季から。監督の思いをピッチ上で表現する役割を全うして欲しいです。
椛沢:槙野選手は最終戦のゴールとその後の歓喜。達也の最後の涙などで浦和の勘所というものを肌で感じたようです。今季、彼がもたらす好影響に期待したいところです。噂となっていたオーストラリア人FWなど外国人選手は見送り、欧州にあわせた夏のウインドウで動きがあるかもしれません。ヴォルクスブルグの長谷部誠についても復帰について、クラブ側は強い意欲を持っているようで、こちらも夏での可能性を探ることになりそうです。補強については高評価の内容だと思いますが、アジアを含めた戦いの中で、インパクトのあるストライカーを獲ることが出来なかったのは、マイナス要因になるかなと思います。その意味でも70点くらいでしょうか。来週には入団選手発表などがあり、1月20日からトップチームが始動します。
豊田:守備の主軸が担える那須大亮選手の獲得時点で私は評価80点としましたが、FWに関しての見解はその通りと思うな。フィニッシャーのバリエーションを使うという意味でも、オーストラリア人FWのような大型のアタッカーは重要ピースでした。ただ、フロントとミシャには焦らないで欲しい。点取り屋は劇薬です。過密日程が必至の現状で、チーム情況に適応できない補強は大きなリスクを招く可能性があるので。
椛沢:このような移籍があると浦和は金にものを言わせていると、周囲からは揶揄をされますが、リーグを引っ張っていく存在になるためには、このくらいは当たり前ではないかなと思います。この手の話をすると、それじゃあ補強した他所の選手だけで固めるのか、いや、育成した選手だけで固めるのかという、どちらかに振れた話になりがちですが、トップクラスの選手を補強しながら、浦和のアイデンティティを繋いでいく軸となる選手は生え抜きの選手を育てていくということが両面で必要だとは思います。
豊田:私もレッズ支持者および他クラブのファンからも言われましたよ。「今季も広島より下だったらどーするんですか?」とか(苦笑)。編集長言うように、まあリーグを引っ張れとは言わないまでも、指揮官の統一視点から布陣を作るためにバジェットに合った補強をするのはサポーターに対する最低限の回答でしょう。要はスジが通ったクラブ成長の軸が作れているかということ。URAWAの場合はこのポイントも含め、クラブを見守り、評価をし、声も上げなくてはなりません。タウンミーティングでも橋本社長とも意識共有を謀った部分ですので、コメントを本誌WEBでご覧頂きたいと思います。
椛沢:個人的な理想としては、マンチェスターユナイテッドのようなトップクラスの選手とアカデミー選手が共存するバランスあるチームになって欲しい。タウンミーティングレポートの中でも橋本代表が話をしていますが、今年から小学生年代のジュニアチームを発足させて、数々の才能を育ててきた、浦和の地元少年団と連携を図りながら、育成を強化する流れは大きな第一歩だと思います。浦和の育成土譲については、フィンケ前監督も日本でもこれだけボールを蹴っている子供がいる地域という意味で可能性があると評して頂いたこともありました。この可能性ある土譲を活かさない手はない。トップチームにおいては、選手を育てながら戦うことになると勝つ確立が下がるという現実もある中で、マンチェスターユナイテッドがまさにそうですが、他クラブなどで修行をさせながら、トップオブトップの選手がレッズのトップフィールドに戻ってきてプレーができるという流れができるくらいのクラブになれば、磐石の体制を築いていけるのではないでしょうか。
豊田:先のインタビューで「浦和の育成の力を示したい」と意気込みを語った矢島慎也や、彼の先輩・山田直輝、草津から復帰した永田拓也らにはやはり注目したいです。浦和レッズの長い経緯から見ればここから後のキャリアが築けるか否かが分岐点。試合数から見ても出場チャンスは来ると思うので、逃がさずモノにして欲しい。
椛沢:明治大学経由で復帰した阪野豊史選手も含めると高円宮杯優勝メンバーは5人になりました。豊田さんのおっしゃる通り、プロ人生でも分岐点になるくらいの時期にきたと思います。彼らの台頭がURAWAのスタジアムを盛り上げる大きな要因にもなるので、活躍を期待したいところです。