浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.100拡大版(8/9)

ロンドン五輪でのフットボールタウンは?インターハイ武南準優勝、全少で新座片山が優勝、FC東京戦について。

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:ロンドン五輪観戦から豊田さんが帰ってきました。記念すべきフットボールトーク100号目になんとか間に合いましたね(笑)。今回は五輪観戦の他、欧州通信のラッセルとも会ってきたそうですね?

豊田:長らくのお休みで失礼しました。だいぶ前から本誌欧州担当・マンチェスター在住のマーク・ラッセルさんが主宰する「パンクサッカー」と連携をとる事務所への要請があり、ロンドン五輪開催も重なって時期を見計らっていた次第です。まあ、周囲の人たちにもお見通しで指摘されてしまっているが(笑)、直輝君や濱田水輝君が出場することを想定してのスケジュールだったことは否定しません。

椛沢:ロンドンで快進撃を見せる男女の日本代表チームをフットボールの母国イングランドで見られたのは貴重な体験でしたね。取材されたのはニューカッスルで行われたモロッコ戦ですよね?

豊田:そもそもパスも無いので取材とは言えないですね。観戦したのはそのモロッコ戦のみ。それもラッセルさんとゴール裏に陣取って君が代を歌って日本コールをするという「応援」そのものです。このポイントに関しても直輝君や原口元気君が選出されていれば、情況は違っていたのでしょうが……。ただ日本の五輪代表が男女とも予想を上まわる快進撃を続けているので(8月8日現在、女子決勝進出、男子三位決定戦)、メディア関係の仕事仲間からは「現地に行きながらよく見届けずに帰って来れますね」と呆れられている最中なわけで。

椛沢:なるほど(笑)。では豊田さんが見た五輪舞台となったサッカー母国の焦点は?

豊田:これは『浦和フットボール通信』読者の皆さんに共感してもらえる部分と思います。ローカルな熱を持つ北イングランドのクラブ地元の民衆が、オリンピックという現代のビッグイベントをどんな思考で迎え、どんな行動で反応するのか……それを探ろうというテーマを持って訪英しました。

椛沢:そのテーマに対するマーク・ラッセルの見解はどのようなものだったのでしょう。

豊田:それはもう「望むところ」という……。

椛沢:予想通りです(笑)。

豊田:平和を象徴する民族の祭典というオリンピックの側面を尊重しながらも、その風潮に染まらないフットボール・ライフはどのように継続されるのか。その雰囲気を伝えるために北部イングランドを象徴する幾つかのクラブのホームタウンとスタジアムを彼にコーディネートしてもらい、取材させてもらいました。

椛沢:半ばお祭り的な要素が強いオリンピックに対して、文化として根付くフットボールが、どう相まっているのか興味深いですね。日本においては、まだまだスポーツ文化が根付いていませんから、その考えを参考にしたいところです。

豊田:まあ、普通にオリンピックムードに乗っただけでは、『浦和フットボール通信』にはならないと思うので(笑)。そうそう、ちょうど本誌ウェブサイトで椛沢編集長と吉沢康一さんの緊急対談が掲載されていましたね。マーク・ラッセルさんとアンフィールド・スタジアムと周辺区域のサポーターを取材した当日夜に、彼とそのコーナーを読みました。通訳が即席で彼に対談内容を伝えたのですが、マークいわく「ミスター椛沢がゴール裏の意図を上手く引き出している。ここに書いてあるマインドは今日あなたとリバプールで取材した空気と同じじゃないか。私にはURAWAが持っている原点が理解できます」と……。

椛沢:イングランドで、あの対談をラッセルと読んでいたんですね。まるで示し合わせたようなタイミングですね(笑)。彼らがフットボール文化を構築するために何を考えて創ってきたのか、彼らが発信することで見えてくることもあるでしょうから楽しみです。

豊田:彼も「これはタイミングを合わせた連動企画ですか?」と笑っていました。ロンドンではなでしこジャパンが見事に決勝進出。男子は44年ぶりの銅メダルをかけて日韓戦に臨むという興味深い展開となっています。マーク・ラッセルほか北部イングランドのマニアたちが見た日本のプレーとサッカー界の印象等は、次号のこの対談コーナーで紹介しようと思っています。

椛沢:さて、国内に目を移すとお話した高校総体の決勝が行なわれ、決勝まで勝ち上がった武南高校が残念ながら敗れてしまいました。決勝戦の相手は、こちらは初出場の神奈川県代表の三浦学苑でした。この学校は近年、人工芝を整備して、J下部組織出身の選手を集めるなどして力を急激に伸ばしてきている学校だそうです。先制点を許すも、今大会大活躍の室崎君が同点ゴールを決めて、武南が粘る展開だったようですが、一瞬の隙をつかれて追加点を奪われて1-2の敗戦になってしまいました。先日登場頂いた西武台の守屋監督もおっしゃっていましたが「武南の2年生はレベルが高い」という評価が証明された大会になりました。西武台も2年生の代に自信があるとのことでしたので、今から、来年以降の埼玉の争いが楽しみです。

豊田:大山監督にとっては覇権奪還の大きなチャンスだっただけに残念ですね。しかし武南ジュニアからの一貫した育成を目ざした先生の理念は、徐々に身を結びつつあるように感じます。また本誌でもお話を伺う機会を探そうではありませんか。一方の少年団情報ですが、こちらは嬉しいファイナルを見ることができましたね。夏恒例の全日本少年サッカーの決勝戦、これまでも輝かしい戦績を誇る埼玉県代表・新座片山FC少年団が見事に全国制覇をなし遂げてくれました。

椛沢:新座片山は、名古屋、柏とお馴染みのJ下部組織の強豪を次々に倒して、16年ぶり回目の全国制覇を果たしてくれました。J下部組織のチームを破って、街クラブである新座片山やFC浦和が優勝していることは、埼玉の少年サッカーレベルの高さを証明してくれています。これは本当にすごいことですね。

豊田:帰国した翌朝に静岡・沼津で行なわれたファイナルの様子をTV観戦したのですが、全員が短髪にしたイレブンが力強いフットボールで前回王者の柏レイソルU-12とわたり合うシーンは眼に焼きつきました。16年ぶり2度目の優勝に拍手を送りたいと思います。それにしても左腕の負傷をおしてプレーを続け、大会13得点でリーディングスコアラーになった「片山の翼くん」こと寺山翼選手の決定力と気迫には驚かされました。

椛沢:新座片山は、相当厳しい練習を積んでの制覇だったとのことです。子供たちの頑張りはさることながら、指導者、支えている支援者の方の勝利でもあったのでしょうね。この中に来年はレッズのジュニアチームが参加します。既に活動しているアルディージャに加えて埼玉の戦いはより激しさを増してレベルが上がっていくのではないでしょうか。こちらも楽しみです。

そして、先週末には、FC東京戦がありました。試合前から、「ニッポン」「権田」「徳永」コールを繰り返して、おそらく浦和には一人も五輪代表がいないだろ?という皮肉の意味で叫ぶ東京のスタンドがありました。東京が元気なのは、この時間くらいだったわけですが、そんな代表選手が抜かれて元気の無い東京に対して、前半はレッズが目指すべきスタイルを貫徹させて素晴らしい内容のゲームを見せます。その流れの中で前半早々に、セットプレイのこぼれ玉を宇賀神がスーパーなミドルシュートを突き刺して先制します。その後もレッズペースが続き、こちらも素晴らしいプレーを続けている鈴木啓太から、裏に抜け出した梅崎に繋がり、折り返したボールをマルシオが詰めて、完璧な形から追加点を奪います。前半は完全なレッズペースで折り返しますが、後半に入るとギアを上げてきた東京に押し込まれる展開が続きます。押し込まれた時に、ラインが下がったまま押し込まれ続けてしまう悪い癖が出てしまいました。2点リードという心の余裕もあったのかもしれません。この失敗を無駄にすることなく、これ以上繰り返さないように、次に繋げてもらいたいと思います。今週末は、敵地にて西野朗監督率いる神戸との対戦です。前節大敗を喫している相手ですが、最近では相性があまり良くない相手ですから気を引き締めて、レッズのサッカーを貫いてもらいたいと思います。

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