浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.108(10/4)

劇的勝利の柏レイソル戦を振り返る。

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:先週末の柏レイソル戦は劇的な勝利でした。柏がレッズサポーターの大量動員を見越しての国立競技場でのホーム開催ということで、柏が普段使っているホームスタジアムである「日立台」での試合を開催させないということで、ホームのような条件で試合を行うことができました。これはサポーターの力が試合に影響をした現象のひとつだと思います。実際にガンバ戦の大敗のあとでしたが、こんな時こそチームをサポートしようと集まったレッズサポーターが、スタジアムの半数以上を赤く染めていました。前節の大敗を受けてゴール裏のスタンドも、この日にあわせて「フォルツァ浦和レッズ、フォルツァ浦和レッズ、俺たちの誇り、共に行こう」という歌詞通りの想いを込めた新チャントで選手を迎い入れました。そして”この試合は引き分けでもダメ。勝利だけを求める”という強い姿勢で挑もうという意気込みでのサポーティングでした。

豊田:国立競技場はサッカー聖地としての歴史もある上に、東京ベースの独特の「ニュートラルな緊張」があります。ここで行なわれるゲームでは、一般のサッカー好きも客席やメディア経由でレッズとレッズサポーターを見ている、という情況が前提にある。よくコラムにも書いたことですけど。ヴェルディがまだ川崎時代のころ、キックオフに遅れて国立に向かっていても、浦和と川崎のどちらが攻勢に出ているかがスタジアム外からでもよく分かりました。聞こえて来る歓声がまったく違っていたので。ヴェルディが攻めているときは「キャー」で、レッズが攻めているときは「ウォー」(笑)。

椛沢:そんな雰囲気の中で、試合終了間際まで「PRIDE OF URAWA」のチャントが木霊す中で、ポポがラストプレーで、執念の決勝点を決めて勝利したことは、チーム、サポーターのレッズが一体となって得た勝ち点3だったと言っても過言ではないと思います。終了のホイッスルと共に叫ばれた「WE ARE REDS」の大合唱はすごい迫力でしたね。各メディアもレッズサポーターの威力に驚きの声を上げていました。

豊田:外苑の公園エリアなど周囲の人々も含めての反応も興味ぶかかった。これもずっと親しんできた国立のゲームの悦しみです。ゲーム中は、すぐ後ろがレイソルサポーターの若者グループ。「監督変わって、浦和生き返っちゃったじゃん」「また代えてくれないと勝てないよ」と、けっこう的確。また、営団地下鉄の駅近くに知り合いの店があり、そこへ寄りながら帰るのですが、マスターの声が例によってはずんでいた。この人は根っからの野球好きで、ヤクルトファンなんですが。「うーん、やっぱ今夜の音はレッズサポーターでしたか。サッカーはサッカーでも、浦和レッズねえ」と……。

椛沢:レイソルサポーターが嘆くほど、昨年の完敗の試合から一年で状況が引っ繰り返ってしまっているのも面白い現象ですね。試合を通じてもこの試合は勝ちたいという気持ちが選手たちの球際でのプレーからも感じられました。前半にリスタートから先制点を奪われる形になりましたが、啓太の代わりにボランチに入った柏木、阿部勇樹がサイドを効果的に使ってリズムを作り、同点ゴールの形も右サイドからのサイド攻撃で、平川、マルシオと繋いで梅崎が決めて狙い通りの形だったと思います。

豊田:中盤の当たりは双方とも気合いが入り、なおかつフェアーで流れもとめない。スタンドの前めにいれば、プレーヤーたちの激しい叱声も聞こえてくる。あの渡り合いは見ごたえがあった。赤のプレーヤーからは、ガンバ戦のにがさを無駄にしないという気概も見えました。思い起こせば昨年最終節と同じカード。レッズのメンバーを照合すると、鈴木啓太と山田直輝を除けば、ほぼ同一のラインナップなんですね。支持者としては複雑な思いもする。レイソルサポーターの声の通り、それがまるで別のチームになってしまう。サイドチェンジから攻めの姿勢に入る場面などは、イレブンの意思疎通がしっかり伝わって来ました。

椛沢:原口に代わって入ったポポは前線からのチェイスを諦めずに行い、それが最終的にあの決勝点のプレーにも繋がったと思います。しかもあのプレーに関わっているのは、前節に5失点を喫してこの試合で雪辱を果たしたいと思っていたGK加藤のスローイングから、久々の出場でアピールしたいと意気込んでピッチに入った矢島が頭ですらして、先発ではなくても出た時に仕事をすると準備を怠らなかったポポが決めるという「気持ち」の得点だったと思います。このようなゴールだったからこそ、感動を呼んでいるんだと思います。国立競技場は試合後しばらくしても興奮が冷めやらぬ雰囲気でした。

豊田:順大君は期するものがあったでしょう。問題のセットプレーからオウンゴールで失点する嫌な展開だったし、スローで勝負するチャンスはあの1回きりだったと思う。満を持していた勝負プレーがロスタイムにぴたり嵌った。仕上げもミシャが交代で切った2枚……。せっかく掴んだこの流れ、大事にしたいです。

椛沢:怪我をおして出場したものの前半の早い段階で交代を命じられて、不服の態度をあからさまに示してしまった原口に対しては、今週掲載のタカネエとのライブトークでもこの件については語っていますが、もう普通の若手選手ではなく浦和レッズを背負っている選手としてもっと大人になって欲しいというのが率直な想いですが、負けず嫌いで、自分に不甲斐なさに腹が立って我を失ってしまうというのも彼の特長でもあるのも事実です。この件については監督ともしっかりコミュニケーションが取れているようですから、あとは原口にこのあとの終盤戦で汚名返上をするプレーを期待するだけです。そのような期待に応えられるのも原口元気だと思いますから、この経験を無駄にせずに肥やしにしてもらいたいと思います。

豊田:実は現場ではピッチに気をとられるあまり彼の交代後のアクションには気づいていませんでした。帰ってから録画みて、アップ画像に驚いた次第。ましてや交代出場で出たポポがあの決勝点だから、原口にとっては忘れられない記憶になるでしょう。周囲のベテランサポーターからは当然に厳しい声も聞かれます。でも、誤解を恐れずに言わせてもらうなら……知っての通り、サッカーで切り札になるくらいの駒はエキセントリックな一面も有るもの。その駒に値するかを見定めながら原口を使うのはミシャの専権事項です。ゆえに彼がピッチに立ったからには、チームメイトも彼の扱いやサポートを自分の責務にする覚悟は固めて欲しい。これはクラブも私たち支持者も同様です。以後は優勝を争う「セブン・ファイナルズ」。かけがえのない経験が積める。迷いは消してゲームに臨みたいです。

椛沢:その「セブン・ファイナルズ」の一発目は、今週末の札幌戦です。札幌は前節J2降格が早々と決まってしまったチームですが、そんなチームに弱いのも浦和レッズだということは、浦和モノの皆さんであれば感じていると思います。古巣のレッズ戦では、別人となってプレーする河合竜二の存在も気になるところ。「J2降格が決まった札幌だから大勝できる」なんて気持ちでは足元をすくわれる。決して簡単な試合にはならないでしょう。ガンバ戦での経験を無駄にせずに、緩めた空気を作らず、札幌を全力で叩きましょう。

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