浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.138 (5/15)

Jリーグ20周年アニバーサリーマッチ・激闘の鹿島戦を振り返る。

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:Jリーグ20周年アニバーサリーマッチに唯一指定された鹿島戦は、戦前の予想とおり激戦でした。生憎の天候の中、46,649人が集まり20周年記念に相応しい熱狂の雰囲気を創っていました。試合前にはJリーグ20周年セレモニーが行われて、ロブソン・ポンテ氏、アルシンド氏と浦和、鹿島の両レジェンドが挨拶をするなど、20周年を盛り上げました。式典を見ていて、なんだか感慨深い思いになりましたね。

豊田:ポンテ登場は嬉しかった。レッズサポーターの記憶の中にある海外のレジェンドの中でも、あのセレモニーにもっともふさわしい人選でした。ACLの勝ち上がりが伴っていれば一層の喜びだったでしょうに、そこだけが残念。国際舞台で彼が見せた統率や気迫を私たちはいま一度思い起こさなくてはならないと強く感じました。アルシンドも懐かしかったですね。すでに欧州チャンピオンズリーグを体験していたポンテと異なり、こちらはまさに創成期のJリーグで磨かれた無名選手でした。ゲームでも散々に痛い目に合わされた相手ですが、何か憎めない純粋さを持つストライカー。93年のステージ初制覇を駒場で達成した後、いまは取り壊されてしまった浦和東武ホテルで行なわれた会見でジーコを絶賛する奇声を発して記者団は驚愕。アデランスのCMに出演して当時全盛だったカラオケボックスのボーイ役をやって喝采を浴びたりしていた(笑)。あの広告一連を担当していた制作陣に同年代の知り合いがいたのですが、彼はトレードマークだった“河童禿”にこだわりを持っており商品現物プレゼントも辞退したそうです。こりゃ相当なキャラだなと感心したことをよく憶えてる。

椛沢:アルシンドが活躍した93年には、駒場で鹿島初優勝を決められた苦い思い出があります。そんなアルシンドも、当時、浦和のスタンドの熱狂に憧れを持っていたようですね。Jも開幕して20年が経ち、Jクラブも増えてJ1は18チーム、J2は22チーム。全国津々浦々にチームが存在するようになりました。また2002年にはワールドカップも開催がされて、埼玉スタジアムのようなサッカー専用スタジアムも出来て、そのスタンドが赤く染まっている。Jリーグ20年が経っての光景は素晴らしいものになりました。この後の10年、20年、100年構想の80年後はどうなっていくのか、その歴史を創るのも私たちです。

豊田:セレモニーを見ていても感じたのですが、つくづくレッズとアントラーズは対照的な歴史を辿ったクラブだと思います。タイトルを獲り続けて全国に名を轟かせなければ生き残れない宿命を背負ってそのタスクを実践したチームと、負け続けで注目もされない存在でありながら、サッカーを愛する民衆とそれに応える努力を続けたスタッフに支えられたチーム。アニバーサリーにふさわしいビッグ2に昇りつめた今後も、かけがえのないライバルであり続けたいと感じます。

椛沢:試合は、鹿島が4-4-2と最もミシャサッカーが得意とするシステムを採用しているチームなので、はまった形が幾度も見られると思っていましたが、さすがの鹿島も小笠原、柴崎のダブルボランチを中心にポジショニングをしっかり取り、穴を作らずレッズに、なかなかチャンスを作り出させませんでした。

豊田:前半20分以降あたりの鹿島のゲーム作りには熟練を感じました。最終ラインから忠実に速いタテパスを織り交ぜての繋ぎを作り、タイミングをみてサイドを使った崩しにかかる。毎度おなじみの4バックから始まる作りなのだが、メンバーが変遷してもリズムが途絶えないあたりは憎たらしいというか……。レッズはこのところのポゼッションの高さもこの相手に対して保つことができませんでした。

椛沢:互いにチャンスは作るものの拮抗した形のまま前半を終えました。後半は、宇賀神の怪我により途中出場となった梅崎が好調さを見せて左サイドを活性化させてリズムを作りますが、63分野沢に一瞬の隙を突かれて鹿島に先制点を許してしまいました。ここ数試合続く嫌な流れでしたが、それを吹き飛ばしたのは那須のヘディングでした。66分に柏木のCKをニアであわせて価値ある同点ゴール。これでレッズは息を吹き返し、78分には梅崎のクロスを興梠が頭であわせて逆転。オフサイドではあったと思いますが、それもサポーターが作り出す雰囲気もあっての“ゴール”でしょう。

豊田:今日(14日)に協会審判委が誤審を認める声明を発したそうですが……。確かに映像判定までを試みれば、オフサイド判定が妥当でしょう。ただ、あの時点までの判定のバランスに照らして、ジャッジに潜在的な“清算”の意識が働いた可能性はあると思います。激しい渡り合いは見ごたえがあったし、興梠君はそのくらい厳しいポイントを休むことなく突いて狙ってる。今回はその積み重ねが有利に働いたと言えるかも知れません。鹿島時代にもこの手のきわどい場面はあったでしょうしね。鹿島サイドには「これもフットボールのうち」と諦めてもらうしかない。

椛沢:逆転の後もレッズは攻撃の手を緩めずに興梠が起点になり、カウンターが発動すると原口が切り込みシュートを放ち、そのシュートのこぼれ玉を梅崎が押し込み、終了間際の89分にダメ押し点。セレッソ戦では勝ち越してから追いつかれただけに、それを改善することができた、貴重な追加点となりました。

豊田:ここ数試合でやられていたことを、ようやくこちらがやり遂げられた気分です。スタンドは指定席通路まで、雨水も消し飛ぶのではという感じのガッツポーズの嵐……。

椛沢:大宮、清水に連敗、アウェーのセレッソ大阪戦では引き分けに持ち込まれるなど、ここ3試合で“勝ち点3”を挙げられなかっただけに、このライバル鹿島に勝利できたことは今後の流れを考えても大きな勝利といえると思います。

豊田:試合後にもらった周辺からのサポーターメッセージとしては「確かにアルディージャにはしてやられたけど、こういう雰囲気はURAWAだけのものでしょ?」というもの。はいはい、という感じですけど(苦笑)。ただ、この熱狂も多くのサポーターやホームタウンの人材がなし遂げてきた成果と実績の上に咲く華ですからね。自戒も込めて、レッズをJリーグの理念を体現するクラブとして支え続けていかなくてはなりません。

椛沢:浦和人にとっては、最高の鹿島戦になりましたね。次節もホーム埼スタで鳥栖戦になります。鹿島戦の勢いを持続させるためにも難敵鳥栖を全力で潰しにいかねばなりません。

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