浦和フットボール通信

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浦和レッズ2013ライブディスカッション 「レッズの愛は少しずつ戻ってきている」(後編)

レッズ密着取材を続ける河合貴子氏に、本誌・椛沢編集長が浦和レッズの現状や選手達の思いを毎月訊く「レッズ2013月刊ライブディスカッション」。ここまでの各選手たちの印象について、20周年を迎えたJリーグとレッズとの歩みについて、河合さんにお話を訊いた。(浦和フットボール通信編集部)

各ポジションの争いが激しくなってきている。

椛沢:現在のスタメンを見ると、確かに、年齢は高くなってきています。ただ啓太は年々成長をしている印象を受けます。啓太は晩成型だったのかと思うほどです(笑)

河合:そうだよね!啓太のロングフィードといい、戦術見はさらに磨きが掛かっている。

椛沢:啓太がボールをさばくシーンは良いゲームになっている。逆に、彼がうまくさばかないとボールがまわらなくなる。それくらいのキーマンになっていると思います。

河合:柏木がボランチの位置に下がってという選択もなくはないけれども、彼の場合は、守備の部分で難がある。まだまだ、ちょっと雑なプレーが見える時があって、もっと丁寧なプレーをしようという部分があるけれども、もともとクオリティーのある選手だから、北海道合宿で上げてくると思う。陽介は、レイソル戦のFKがすごかったね。ゴールに吸い込まれるようなFKだった。少しずつ、調子は上向いていると思う。

椛沢:サイドもポジション争いは激しいですね。

河合:平川選手や宇賀神選手が怪我をしても代わりに入ってきた選手が良くやっている。
梅ちゃんは最高でしょう!

椛沢:正直、右だと存在感が薄かったけれども、左に入ってからの彼の活躍は目を見張るものがありますね。彼自身も左がやりやすい所があるのですかね?

河合:左がやりやすいと思う。ただ、そうなると攻撃が、左ばかりになってしまうんだよね。仙台戦では、スタメンで関口がきた時はおっと思った。練習では違うかなと思っていたのだけど、彼の古巣に対する思いを知っているから、仙台戦で使われると嬉しいと思ったけども、ミシャさんは、そのような思いでの起用はしないだろうなと思っていたけれども、リーグ戦初先発で使った。

椛沢:ACLの試合では出ているので、ミシャの中では、スタメン起用するラインにいる選手なんでしょうね。正直な所、フレッシュな関口には、仙台戦ではもう少しやって欲しかったなという思いもあります。

河合:試合の後は、「前半から高い位置を取ってチャンスメイクが出来ていたけども、中の的とのポイントがあわなかった。あえばもう少しいけたかなと思う」と話していました。仙台もレッズを研究してきて、潰してきた。前半は攻撃の二手くらいまでは行けるけども、最後の部分はうまく潰されていた。そこは、手倉森さんはすごいなと思ったね。関口もここからじゃないかな。

マルシオがジョーカー的存在で効いている

椛沢:サイドもそうですが、シャドーの位置でもポジション争いは激しいですね。

河合:マルシオはスタメンでいける選手だけど、現在はベンチスタート。今は、マルシオが入ってから流れが変わっている。相手にとっても後半つかれた時にマルシオが入ってくると嫌だと思うよ。彼がジョーカーになっているのではないかと感じている。本人は納得しないかもしれないけども、チームの役割分担として私が監督でもジョーカーとして使いたい。相手が嫌がることをしないといけない中で、彼を途中から起用できるのは大きい。

椛沢:ジョーカーに使うにはもったいない選手ではありますよね。年俸を1億円以上払っている選手ですから(笑)

河合:値段じゃないよ!でも彼も選手である限りはスタメンで出たいとは言っていて、それを目指してコンディションも上げています。でもマルシオには、「あなたの活躍、リズムの変え方、これは誰にも真似できないものがある。あなたの実力は誰もが認めている」と言っちゃった。レイソル戦でも仙台戦でも彼が入ってリズムが変わった。脅威だよね。今までは、流れが悪い時にリズムを変えられる選手が欲しい時には、田中達也を使え!と言っていたけども、今はマルシオじゃないかな。

矢島慎也の負けん気に浦和魂を感じた。

椛沢:途中交代で活躍を見せている選手では、矢島慎也もチャンスを少しずつ生かしています。

河合:矢島慎也も流れを変えられる選手だよね。彼も本当に面白いよ。

椛沢:何が面白いですか?

河合:コラムにも書いたけれども、彼はモノマネから入るらしいんですよ。何度も何度も参考になる選手のプレーを見て、やってみようと思う。彼はスペースを使うのがうまい。

椛沢:それは少年団の監督も言っていました。そのような特長が小学校の頃からあったようです。

河合:それを自分のものにしている。セスク(スペイン代表)のプレーを何度もYOUTUBEで見ているそうです。どんなシーンかと聞くと、全て流れを答えられる。でも、何戦かと聞くと、どこ対どこかは覚えてない(笑)。YOUTUBEで探せば分かるといわれて、彼が一番好きな選手のシルバのゴールシーンがまとめてあるものがあって、それをじっと見て、このシーンかなと思い当たるようなシーンはありました。サッカー選手として、これは大事なことで、色々な選手のプレーを見ることは大事。柱谷哲二さんが日本代表の時はどのプレーで流れが良くなるのか、悪くなるのか、自分のプレーをビデオテープで見ていたと言っていた。やり方はそれぞれだけでも、そのようなことを矢島はやっている。なおかつ、矢島はスポーツ漫画が大好きで、そこからの熱い言葉を胸に刻んでいるそうです。好きな言葉は、『できるか、できないかではなく、やるかやらないかだ』。『あひるの空』というバスケットボールを題材にした漫画からの言葉だそうです。今後も彼には注目して欲しい。

椛沢:彼の初ゴールの時も、喜ばずに逆に悔しがっていたというのを聞いて、もっとサッカーが上手くなりたいんだという気持ちをもつ浦和っ子らしいなと思いました。

河合:セレッソ戦で、自分がゴールに絡む動きが出来なくて、その交代で入った原口が、ドリブルで持ち込んでいってゴールを決めた。それを彼は「個人技かもしれないけど、原口君は、すごいドリブルで、結果を出したんですよ!すげえ悔しかった!」と怒り爆発をしていた。元気は、怪我から復帰の試合で、「今、サッカーをやりたくてうずうずしている。セレッソ戦で爆発するから見ていてね」といわれていて、そんな強い気持ちを持っていた。そして、あの時間帯、あのゲームの中での判断で決めた。決めるべくして決めた。その話を矢島にしたら、「その話を聞いていてもすげぇ悔しい」といっていて、それで迎えた試合が鹿島戦だったんですね。鹿島戦は、元気がスタメンで出て、交代で入った、矢島が短い時間の中で、初ゴールを決めた。でも、全然満足をして喜んでいなくて、どうして?と聞いたら、「原口君も1点決めているから」と浦和っ子だなと思ったね。もっとうまくなりたい。活躍したい。チームに貢献したいという強い思いがあるんだと思います。

Jリーグ20年が経ち感じること

椛沢:鹿島戦は、Jリーグが指定をする『Jリーグ20周年アニバーサリーマッチ』でしたが、気がつくとJリーグが始まって20年が経ちました。

河合:私が、レッズを取材し始めたのは、1992年のナビスコからなので21年です。0歳の子が二十歳を過ぎている。

椛沢:ピッチにいる選手では、生まれていなかった選手もいるということですね。

河合:矢島とか野崎は生まれてないんだよね。ショックだよね・・・・・・(笑)。この20年、レッズと共に色々なことがあった。Jリーグが開幕した頃は、駒場スタジアムの裏の塀をよじ登って見ている人がいたりしたね。

椛沢:その中の一人に、堀之内聖選手がいたという話もありました(笑)。鹿島戦の前の、20周年記念セレモニーの時に、Jリーグも20年が経って、浦和には、6万人のサッカー専用スタジアムである、埼玉スタジアムが出来て、これだけの人がスタジアムを赤く染めるようになったんだと感慨深い思いになりましたね。

河合:自分と歩んできた道が、あの中に凝縮されている気がして、涙が出そうになったね。ここまできたんだと。ただ、まだJリーグ100年構想の五分の一。この先、20年経った時に、私は何をしているだろうか。70を過ぎているのだけど、それでもレッズの取材が出来ていたら幸せだろうなあ。レッズと共に歩んできた20年は色々なことがあった。つらいことも苦しいことも、悦びもあったけれども、やっぱりサッカーと出会えて、レッズと出会えて、幸せだなと思えた自分がいたことが良かった。それは私だけではないと思う。

椛沢:そういう人がもっともっと増えていくとJリーグは盛り上がっていくと思います。

河合:離れた人もいっぱいいると思うけども、これを機に、もう一回戻ってきて、サッカーと向き合って欲しい。たった一個のボールを追いかける中で、喜んだり、悲しんだりすることが出来るのがサッカー。

椛沢:そういうのが合わさってサッカー。サッカーはただのエンタテイメントのゲームとしてみるだけでは何も面白くない。選手のドラマ、サポーターにもドラマがあったり、色々なものが混ざっているから面白い。

河合:ランコも正直言って約2年間、すごい活躍はしていないけども、どれだけみんなに愛されたか。それはランコが浦和を愛することが出来たから、サポーターから愛されたと思う。その証がスタジアムを1周した時の光景だったと思う。ここまで愛された選手はいたかと思える。そういうつながりがスタジアムの中にある。サッカーは勝ち負けにもちろんこだわりたいけども、それだけを見るのではなくて、他の要素も見て欲しい。アップして出たくてたまらない選手の姿も見て欲しい。コンコースに行くと、カレーの匂いやラーメンの匂いがしたりする、その匂いをかいだ時に何か安心感がある。スタジアムは自分の家なんだよね。スタジアムを試合前に1周をするだけでも違うんだよね。試合は興行のひとつかもしれないけども、その中で感じられること。目で見て鼻で嗅いで肌で触れて、色々な想いを感じて欲しい。それが人間の成長とか自分の成長にも繋がる。20年見続けてきて、ここにはお金に代え難いものがあると思う。

椛沢:サッカーを見に来ているんだけど、サッカーだけを見に来ているわけではない感覚はありますよね。

河合:離れた人たちにももう一回違う視点で戻ってきて欲しい。レッズに愛を感じられなくなったという人もいるけれども、その愛が少しずつ戻ってきていると思う。今までだったら、ランコの挨拶もなくいなくなっていたと思う。これをセッティングするのはクラブの問題だから、今後も、このような機会を作ろうとして欲しい。愛されるクラブの元の姿に少しずつ戻ってきていると思う。ファン・サポーターは愛しているわけだから、それを無償の愛だからと胡坐をかいていれば、片思いだと離れていく人がいるかもしれないし、片思いでも良いと残っている人もいるけども、ここにきて愛を持って返してくれていると思う。その意味でもランコの挨拶が出来て嬉しかった。

椛沢:本当に20年間色々なことがありました。

河合:20年間は語りつくせないね。語ったら朝になってしまう(笑)。

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