【This Week】週刊フットボールトーク Vol.148 (7/19)
夏場の連敗でリーグ戦中継点を折り返し。これからどう闘うのか。
椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)
椛沢:中断明けの夏場の連戦。これが中盤戦に向けてのひとつの試金石にしたいところでしたが、結果は1勝1分2敗。芳しくない結果に終わってしまいました。日本の夏場の環境の中、さらに過密日程という状況で、ミシャが思考するサッカーは不利なのかもしれないですね。カウンター、セットプレイでゴールを決めるチームがJリーグでは夏場に勝ち点を積み上げられるので有利という話は、なんだか納得してしまう連戦でした。最後の2試合は完全にガス切れの様相でした。もう少し頭を使って夏場を闘わなければ、この後も苦しくなります。
豊田:私はミシャサッカーの有利不利というよりも、ピッチ上で不完全な部分を発見して修正していく選手たちのセルフコントロールの部分に疑問を感じました。これは選手個々の責任ということではなく、監督の指示以前にイレブン全員が情況に合わせて状況に対処していく現場能力のことです。やはり長きにわたってレッズというチームの問題点として横たわっている部分だと思うな。予想外の惨敗を喫してしまった川崎戦、そして直近の横浜戦。とりわけこの2ゲーム進行を観てそれを感じました。
椛沢:まずは先週末のアウェイ川崎戦ですが、FC東京戦で2点差を追いついて引き分けに持ち込んでの試合を受けての試合ということで、ゴール裏スタンドも、この試合こそ勝利を掴みたい。ゴール裏からスタジアムの空気を変えて、流れを掴みたいと意気込みました。高温多湿のサウナ状態のアウェイ等々力の立ち見スタンドをぎゅう詰めにして、等々力ならではの空気は作れていたと思いますが、ピッチが呼応しませんでした。28分に大久保に中央で起点を作られるとレッズディフェンダーは5人引き付けられて、フリーの中村憲剛に決められて先制点を許すと、次のプレーでも最終ラインのもたつきで、ボールを掻っ攫われてさらにレナトに追加点を奪われます。非情にお粗末な失点でした。前半終了間際にも守備の緩さから失点を重ねて3点のビハインドで折り返します。後半、このビハインドを引っ繰り返そうとレッズコールが起きますが、後半開始早々にPKを与えて4失点め。その後も意地を見せろとレッズスタンドはコールを鳴り止めませんでしたが、レッズは成す術なく完敗しました。試合後、サポーターに挨拶に来た選手とサポーターで気持ちのぶつけ合いがありましたが、ミシャも間に入り、ここでバラバラにならずに一丸となってやり続けようと槙野などから発声があり、次の試合での必勝を誓いました。
豊田:川崎との定番である「撃ち合い」どころか、狙われていた流れに吸引されてしまった印象。相手は絶不調だった開幕序盤の停滞を乗り越え、中断期間を挟んで反転速攻のスタイルを確立してコンスタントに点も取り始めた情況のチームです。大久保選手のメモリアルゴールのPKも癪だったけど、連携を次々とパスカットされてまんまと相手の思惑にはまるレッズを見るのはなんとも辛いものでした。
椛沢:その川崎戦を受けての横浜戦は、ピッチもスタンドも気合いは入っていたはずでした。ゴール裏スタンドは「PRIDE OF URAWA」の横断幕を手持ちで90分間掲出。この試合への気持ちを示しました。平日、雨という天候もあり23,725人と仲間の数は少なかったわけですが、それ以上に想いは強い集まりだったと思います。ミシャも那須をボランチに上げて、最終ラインに永田、坪井を入れ替えて、守備のてこ入れを図りました。リーグ初先発となった坪井は最終ラインで十分気持ちを見せてくれたと思います。しかしチーム全体としてはキックオフからどこか消極的。サイドを崩されて、中にいたマルキーニョスをフリーにしてしまいヘディングで先制点を許します。しかし、この日のレッズは意地を見せて、興梠が中央で起点となり、原口に展開。原口が落としたボールを後ろから走りこんできた那須が気迫のゴールを決めます。これで勢いになったレッズはCKからGKが阿部のシュートを弾いた所を槙野が押し込んで逆転。この試合は勝つという気持ちが入った前半でした。しかし後半、好調の斎藤に同点ゴールを決められると、終了間際にCKから栗原に決められて逆転を許しました。
豊田:那須の同点弾に繋がる興梠と原口の展開インパクトが素晴らしかっただけに、埼スタホームの雰囲気に今度こそ乗れるかなと期待したのですが……。逆にハーフタイムで監督以下の対策を講じて、試合の終わりまでを適応よく想定したのは相手のアウェーチームでした。
椛沢:レッズも終盤にマルシオ、森脇の攻めのカードを切って攻撃的シフトを図って勝負に出ましたが、それでも後半は息切れ。力負けをしたという印象が強いです。
豊田:その力負けの部分なのですが、やはり情況に応じて選手たちが同じ絵を描けていたのはマリノスの方だと思うんですね。後半の立ち上がり10分までは、回復したエネルギーをぶつけ合っての攻防が続きました。レッズにも3-1に突き放す流れを作るチャンスはあった。だが決めれずに迎えた55分あたりからは、足もと足もとへリズミカルに繋いで遅攻を組み立ててくるマリノスのペースに完全に押さえ込まれてしまった……で、この展開に頻繁に顔を出して来るのが、もはや見飽きた相手エースである訳です。やはり「現場でキープレーヤーをどう生かすか」という方策を、俊輔マリノスや遠藤ガンバあたりは徹底させる経験値を持っています。斉藤学の動きが注目を集めましたが、ベテランぞろいの中でも汗かく若手の役どころは集約されていることなどは象徴的。こういうチームに、レッズはいつもやられてしまう。しかも埼スタで、です(苦笑)。ミシャ頼みではないサッカー作りというのは、こういうクラブの強化蓄積にも生かさなくてはならないと切に感じます。
椛沢:大宮、清水に続く、2回目の連敗。ここでつかの間の中断に入るのはレッズにとっては良いタイミングかもしれません。ちょうど17節が終わってリーグ戦は、残り半分。もちろん、まだまだチャンスはあります。しかし頂点を目指すためには、課題をどう克服して行くのか、クラブとして戦力をどう整えるのか、様々な整備は必要になってきます。リーグ中断中は、日本代表の東アジア選手権があります。今回は国内選手中心のメンバー構成になり、レッズからも原口、槙野、森脇が選出されました。世間的にも注目度の高い日本代表で、どれだけアピール出来るか。彼らのアピールがレッズのアピールにも繋がるという意気込みで、浦和を背負って、是非頑張ってもらいたいと思います。
豊田:全国少年団サッカーも本大会が近づいてきましたね。編集長が視察されたレジスタFCと大宮アルディージャジュニアの埼玉代表は、関西地区の強豪や静岡代表と予選リーグを戦うとのこと。残念ながらレッズジュニアや浦和のチームは予選敗退を喫していますが、レッズアカデミーと地元少年団の未来を見据えるためにも注目しようと思っています。
椛沢:夏になり、全少は昨年の新座片山に続く2連覇がかかっています。さらに高校総体では、13年ぶりに優勝の武南、準優勝の正智深谷が埼玉代表として出場します。各年代の埼玉代表チームの活躍にも期待したいと思います。