浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「選手を思うからこそ崎トレ~野崎信行アスレチックトレーナー」

J開幕から浦和レッズを追いかけ、ケーブルテレビのパーソナティなどで活躍をしている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

選手の活躍の裏には『崎トレ』の存在がある。

怪我をして傷ついた選手の傍らには、必ず寄り添う様に笑顔で優しい眼差しで見守る野崎信行アスレチックトレーナーの姿がある。

長期離脱をしていた山田直輝選手が「僕の尊敬する小野さん(小野伸二選手)が、野崎さんの言う事を聞いていれば必ず復帰出来ると言っていた。間違い無い!野崎さんには、お世話になった」と話すように、浦和に関わった全選手が全幅の信頼を野崎さんには置いている。野崎さんは「僕は君達を治せないんだよ。治る自然治癒力を100%発揮出来るような協力はする」と選手達に話すそうだ。

先日、ハムストリングの肉離れで戦線離脱した鈴木啓太選手には「僕のイメージでは、ヘルメットかぶってシャベルとツルハシを持った小さいおじさん達がいっぱいいて、24時間体制で治してくれている。そのためには、ひとつのプロセスとして血の流れを良くするためのことは、惜しみなくやる。
で、なんで啓太君が怪我したか?考えると、プレーはしていたが右の足首の怪我があった。右足が完全じゃなければ、左に負担が掛かる。この際、全部を見て整える」と野崎さんは話したそうだ。選手の身体と真剣に向き合う野崎さんだから、選手達は信頼し、安心してリハビリに取り組むことが出来るのだ。

以前は、野戦病院と揶揄されるぐらい怪我人が多発したこともあったが、ここ3年ぐらい怪我人が減少傾向にある。その理由を野崎さんは「クラブとしていろんな取り組みをやっていて、関ドクターが水風呂に何分入るとか、シモンマネージャー達とかドリンクを用意したり、鈴木トレーナーがゼリーに番号書いたり・・・。出来ることは何か?をみんなで話し合いながら遣っている。総合力の結果だと思う」と笑顔で話す。

その取り組みの一つに通称『崎トレ(ざきトレ)』と呼ばれる野崎さんが考案した基礎運動能力の土台を作るトレーニングメニューがある。「元々僕の仕事は、リハビリで怪我人を復帰させるのが仕事。この崎トレが始まるまでは、元気な選手に対しては基本的にはノータッチだった。ゼリコ・ペトロビッチ前監督からオファーを受けて、僕なりに考えた。怪我をしてしまった選手は、リハビリを行い、最終チェックでテストして競技復帰してくる。リハビリの最終段階を一つの基準にした。競技をしている人間はそれが出来なければいけない内容なんですよね。サッカーは凄くハードな競技。怪我をしていなくてもこのメニューが出来なければ、将来的に怪我をするリスクが高い潜在的な怪我人。予防を目的にしながら、今、現在の身体をテストして見て下さいと毎回選手に言っている。ミシャ監督になり、それをベースにフィジカル的な要素も取り入れた」と野崎さんは崎トレについて教えてくれた。

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FIFAでも傷害予防プログラムとして推奨している体幹トレーニング『11+』がある。野崎さんは「『11+』を初めて見た時に考え方が近くて、僕が言ってること、考えは間違っていない。安心して出来る裏付けにはなった。大原には坂道があったりするので、少しコンディショニングな部分を取り入れているところは、FIFAの『11+』よりちょっと踏み出しているかなぁ?!」と照れ笑いしながら「一番大事にしているのは、怪我の予防。延長線上の結果として選手のパフォーマンスが上がれば良い。マンネリ化のリスクはあるが、目的が僕の中であるので、変えられない。現状を把握して貰うテストは譲れない。大きなアウトラインが一緒の中で、コンディションを見て走る本数を変えたりするが、基本は変わらない」と選手のことを思うが故に、一貫性の大切さに拘る。そして、サッカーをするために『可動性』『協調性』『安定性』の基礎運動能力を土台と考え、そこに家を建てるイメージを野崎さんは凄く分かりやすく話してくれた。「土台が小さいと小さい家しか建たない。何処かが傾けば、窓が閉まらないとか、俗に言う欠陥住宅になってしまう。サッカーの土台が崩れるとキックがおかしくなったり、距離が出無くなったりする。それを補強すると出来るようになる」と話す。

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永田充選手は「浦和に来る前には、ほとんどやったことがなかった。崎トレをやるようになって、相手と当たった後の次の1歩のスピードが違ってきた」と実感している。坪井慶介選手は「個人的に昔からやっていて、崎トレは効果があると思っていた。それが、やっとチーム全体で出来るようになって良かった。自分の身体の状態も分かるし、続けることにより効果が出る。紅白戦やっていて、元気(原口選手)は当たりに強くなったって思うよ。転ばなくなったよね」とチーム全体の強化を喜んだ。選手個々の土台が大きくなれば、チームの総合力は確実にあがる。『崎トレ』は、怪我の予防だけでなくサッカーをするための身体の土台作りに大切なことである。

95年の当時、オジェック監督が野崎さんに1冊のドイツ語の本を渡してくれたそうだ。崎トレは、選手のリハビリとして始まった。それが年月を重ねて、様々な経験と知識のもとで今の崎トレとなったのだ。そこには、アスレチックトレーナーとしての野崎さんの労を惜しまない並々ならぬ努力があったと思う。崎トレには、選手のパフォーマンスを一番に思い考える野崎さんの愛が溢れていた。

Q.外傷骨折には、いろんな個所があると思うのですが、多い骨折はなんですか?

A .外傷骨折はいろんな場所で起こりますが、サッカーで多い骨折は、人と接触して転倒したり、スライディングで手を着いてしまった場合など、手首の骨折や親指の付け根の舟状骨が多いです。手首の骨折は、だいたいはギブスで治るのですが、舟状骨が骨折している場合は、診断が難しく、分からないことがあり、また非常に骨が付きにくく2~3カ月ギブスをしないといけない場合や最初から手術をしないといけないこともあります。手首の次は足首のくるぶしの骨折が多いです。

●お知らせ
川久保整形外科クリニック 第3回 スポーツ医科学講習会を開催「腰痛の発生メカニズムとリハビリテーション」

1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
川久保整形外科クリニック
整形外科・スポーツ整形・リュウマチ科・リハビリテーション
http://www.kawakubo-clinic.jp/

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