【This Week】週刊フットボールトーク Vol.158 (9/25)
URAWAの気概を感じられなかった甲府戦。
椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)
椛沢:先週末は、ホーム埼スタでのヴァンフォーレ甲府戦でした。ホームゲームの内容としては最低グレードの試合だったと言わざるを得ないです。勝利に向けた気概が90分通しても感じられない。挙句には、終了間際の失点。あの失点も必然で起きたと思ってしまうような、それまでの試合の流れでした。
豊田:タイムアップまで何秒だったでしょうね。きわどい勝負の機微だったはずなのに……PKの先制ゴールに寄りかかるようなイレブンのプレーぶりにアディショナルタイムの緊張感も感じられない雰囲気がありました。
椛沢:前節の東京に破れたものの、首位と肉薄する中で、この試合で勝利したい気持ちは存分にあったはずの試合でしたが、戦術的に相手に嵌められたまま、何も出来ずに終わってしまいました。甲府戦もレッズは、3バックの真ん中の山田暢久を起用して、後方ビルドアップ時には、阿部、那須のダブルボランチが降りてきて、3枚でボールを回して、槙野、森脇がサイドの開くという戦術を採用しましたが、そのやり方を甲府も十分に対応をしてきて見破られたという印象。その中で、ラッキーな形でのPKを得て、先制をしたわけですが、その後の試合運びも良くなかった。レッズディフェンスラインが下がり始めると、甲府に押し込まれる時間帯が続いて、最後の最後のプレーでディフェンスが決壊してしまいました。リーグ戦初先発となったGK山岸が、必死にゴールを守り続けてくれただけに、彼の頑張りにも応えて欲しかった。彼がいなければ、大敗していたのではないかと思えるくらい、彼の活躍も光りました。
豊田:先発GKの交代となれば、それは守備陣に限らずベンチ含めたピッチ上のプレーヤー全員に「言葉以上のメッセージ」が送られたということ。その緊迫感がスタンドにまで届いてこないというチーム情況は残念です。全盛期のレッズ守護神を経験したベテランのギシがゴール番に返り咲く。37分、68分、87分とDFと連携してのビッグセーブも複数回あった。チームの流れを決めるこういう「ヤマ場」は何回も演出できるシーンではありません。このゲームを3ポイントにできなかったツケは大きいですね。
椛沢:スタンドから見ていても、なんとしてもゴールを奪うという気迫、なんとしてもゴールを守る気迫というものが感じにくい。自分たちのサッカーを表現するということの優先順位が強すぎるのか、基本的なメンタルの部分が欠けているように思えてしまう。埼玉スタジアムでのホームゲームで、あの負け方は許されない試合だったと思います。
豊田:この数試合を客観的に振り返っても、イレブンに意識統一が感じられる終盤戦の戦い方を表現できているのは相手チームと思える場面が多いと思う。PKで先制したあとの両軍の表情を追っていたのですが、安堵の表情から漫然と次のプレーに入ってしまったレッズイレブンに対し、甲府はダイナモの柏好文選手あたりを中心に中盤以降のプレーヤーが率先して動きと発声を再開。前線へのつなぎの確認をするコミュニケーションをくり返し、意識を落とさない努力を続けていた。で、ゲーム後にヴァンフォーレ支持者たちの声を聞くと言われてしまうのですよ。「このところのレッズなら、先制されても追いつけるのでは?と思ってた」と(苦笑)。
椛沢:甲府の気迫というか、勝ち点への執念に対して、浦和はどこか軽く見えてしまう。ヴァンフォーレ側に、そのように見られてしまうのも悔しいけれども、頷けてしまう。選手たちは、もっと多くの人の前でプレーをしたいというのであれば、もっと気迫を見せたプレーを見せないと……。
さて、3連休最終日の月曜日にはお馴染みとなった「第13回浦和4校サッカー部OB交流会」がレッズランドで行われて、その取材にいってきました。全国を席巻した浦和4校のOBの皆さんが、現役さながらの気迫あるプレーを展開して、ボールを追いかけていました。その中には、日本代表として活躍した永井良和さん(浦和南OB)や川上信夫さん(浦和西OB)を始め、全国制覇を数々果たした浦和のレジェンドの皆さんが勢ぞろいしていました。レッズは浦和のサッカーを体現できているのかと思い、今回は「浦和のサッカー」とは何かを皆さんにお聞きしてきました。別レポートにて掲載をいたします。
豊田:わが意を得たりですね。「浦和のサッカー」はホームタウンが意識をまとめ、子どもたちからトッププロである浦和レッズにまで等しく求めていくべきテーマです。編集長以下、本誌『浦和フットボール通信』は、これからもその発信源であって欲しいと思います。ところで先週に話題となったJの2シーズン制改革について、さっそく複数の同志が意思表示を送って来ました。中にはハーフシーズンを1シーズンと割り切るしかないという声もありましたが、大多数はやはり断固反対組です。「ポストシーズンに一発勝負があるのでは、もはやJリーグはリーグ戦ではなくなる。天皇杯、ナビスコ、Jと3つもカップウィナーが生まれるわけで、フットボールの真の王者であるリーグチャンピオンが決まらなくなってしまう」……もっともな指摘と思いますね。使い古された背景情報ですが欧州南米ともにチャンピオンとはリーグ王者のことです。カップウィナーのことではない。
椛沢:まさに、これではリーグ戦ではなく、カップ戦方式です。小学生年代の4種ではリーグ戦を戦う文化を創ると躍起になって推し進める反面、トップカテゴリーは、そのリーグ戦がなくなってしまうという矛盾を突いている識者もいました。お金を引き換えに、何か大事なものを失ってしまうのではないか。そこまでしてでも、構造を改革する意味、必要性があるのかが、未だ腑に落ちません。
豊田:この問題も識者の方の意見を聞きながら、できる限りの発信をお願いします。
椛沢:了解です。今週末はアウェイで湘南ベルマーレとの対戦です。降格圏内で苦しむ湘南ですが、ハードワークを最後まで惜しまないチームなだけに全く油断が出来ない相手です。勝ちたい気持ちで上回ることが出来なければ、勝利の女神は微笑んでくれないでしょう。このままズルズル引き下がるのか、上位に食らいつけるのか、そんな岐路に立たされた重要な一戦。アウェイの地から勝ち点3をURAWAに持ち帰って欲しいと思います。