浦和フットボール通信

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浦和レッズ2013ライブディスカッション 「那須大亮がチームを引っ張る!『勝つためにこのチームに来たんだから、やるべきことはやる!』」(7,808文字)

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レッズ密着取材を続ける河合貴子氏に、本誌・椛沢編集長が浦和レッズの現状や選手達の思いを毎月訊く「レッズ2013月刊ライブディスカッション」。9月に入り、浦和レッズは苦しい試合が続いた。終盤戦に向けて、現在のチーム状況について、チームを引っ張る存在について。河合さんにお話を訊いた。(浦和フットボール通信編集部)

セットプレイの守備では意思統一がバラバラだった

椛沢:9月は、ナビ川崎戦にはじまり、FC東京戦、甲府戦、湘南戦と、苦しい試合が続きました。

河合:ナビスコの川崎戦から、やり方を少し変えました。今までは、ストッパーの片方が上がった時に、ボランチが一枚降りて3バックになる形でしたが、川崎戦から、両ストッパーがワイドに開いて、ボランチ二人が最終ラインに降りてきて3バックを形成するやり方を試しました。

椛沢:そのやり方もあってか、川崎戦の前半から途中までは、嵌って2-0になりました。しかし、その後3失点をして逆転負けでした。

河合:山さんと坪さんが持てばいけたと思える試合だった。負けはしたけれども、サポーターも試合後は、良く耐えたと、選手達を拍手で送ったと思う。だからこそ勝ちたかった部分もあるのだけども。

椛沢:その後、FC東京でも同じ戦い方をして、嵌ったといえば嵌った試合でした。

河合:しかしFC東京はあり得ないセットプレイ3発でやられてしまった。VTRの録画を見返したような失点だった。試合後にロッカールームから出た選手は「反省をしてロッカーの中で、皆で話をした」と言っていた。セットプレイの時にどう考えていたのかという話の中で、ある選手はマンツーマン、ある選手はオフサイドトラップをかけようとした、さらに、ある選手は、ある程度はマンツーマンで、その後はゾーンにしようと思っていたと。

椛沢:この時期に、守り方がバラバラだったんですね……。

河合:ある選手が「それでは、失点するのは当たり前だ。意思統一が出来ていないんだから……」と言っていた。考え方がバラバラだったし、試合の流れの中で、締める役割の選手もピッチの中にいなかった。しかし、ロッカールームで話し合いを行って、最終的には、マンツーマンで統一しようということで解決はできた。そこで壊れてしまうチームもあるけれども、ちゃんとロッカールームで話し合いが出来て、意思統一が出来たのは敗戦から学べたということになるんだと思う。昨年からずっと、浦和は、敗戦から学べてきている。そこは評価できる。しかし、一番大事なのは、試合中に修正を効かすことが出来るかが、大きなポイントになってくる。

椛沢:今シーズン、ずっとセットプレイで失点を重ねていたのは、そこに起因していたのですね。

河合:基本的にはマンツーマンの指示が出ている中で、状況に応じて、考えるという部分があって、そこで選手の判断がずれていたのだと思う。

椛沢:選手の判断という部分では、甲府戦も、それまでと同じ“0ボランチ”の戦い方をしたけれども、甲府は当然今までの浦和の試合をみて、その対策を練ってきた。そこで全く上手く行かなかったわけですけども、この戦い方ではまずいから、やり方を変えるという判断が出来なかった。

河合:レッズの選手は試合中に判断をして、やり方を変えるということがまだ出来ないのは確か。臨機応変さは、選手が全体的にピッチで同じ絵を描いて動けるようになっていないと出来ない。

椛沢:ミシャさんもヨーロッパの監督だから、基本的には、ピッチに立ったら選手が判断するのがベースだと思っているはずですが、日本人は監督の言われたことを守ろうというのが強い。日本人は個人戦術能力が低いとよく言われていますが、その問題が浦和にもあるのかなと思います。

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チームを引っ張る存在として、那須に期待をしたい

河合:そこには意思統一ができる。檄を飛ばす。チームのメンタル的な核となる選手の存在も必要。キャプテンの阿部ちゃんは俺の背中を見てついて来いというタイプ。だから、私が期待したいのは、那須さん。コラムでも書いたのだけど、彼にその役割をして欲しいと思っている。ギシも「俺が憎まれ役になってもいいから、やる!」と言ったのだけど、その役割は、GKではない。那須さんに「ゲームの流れで崩れた時にチームを締める役割がいないから、あなたにその役割を期待をしている」という話をしたら、「ジュビロの時もレイソルの時もそうだったけれども、プロである以上、一年目だからとかは関係ない。チームの中で悪者になろうが、勝つためにこのチームに来たんだから、やるべきことはやる!と言ってくれた。プロである以上一年目だろうが、関係ない。」と、とっても頼もしいお言葉を頂きました。

私は那須さんを信じられるんだよね。この人だったら活躍できるというものを感じる。そう思える出来事があって、出場停止となった湘南戦の前日に、みんなは試合に向けて移動をしていて、普通であれば、練習が終わってロッカーに引き上げたら、休める時間なのに、那須さんは、残って黙々と練習をしていた。最初は一人でランニングをして、その後、天野コーチを捕まえて、クロスからのヘディングや1対1を汗だくに成りながら、ずっとやっていた。その姿を見た時に、これだけやっている選手は信じられるという気持ちにさせられた。那須さんになぜ身体を休めずにやるのかと聞いたら「俺はうまくなりたい。優勝するためにここに来たから」と言ったんですね。

椛沢:現状、ピッチ内で檄を飛ばせる役割の選手がいないですね。その中で、那須はキャラクターも合っているかもしれない。

河合:私も那須さんにはキャラクター的に熱いものを感じる。そういう熱いものに賭けたいなと思った。昔だったら闘莉王などがいたりしたけども、諸刃の刃で、吼えすぎて、他の選手が萎縮して、プレーがセーフティーになってしまってチャレンジを忘れたら、今のミシャサッカーが出来ない。程よい加減をしているのは、那須さんの気がする(笑)。
ここから苦しい道のりがあるけれども、その後ろにはギシもいるし、阿部、啓太もいる。

椛沢:阿部、啓太も影で支えるタイプですからね。

河合:その通り!阿部ちゃんにしても啓太にしても、影武者で、神輿を担ぐタイプなので、その役割で力を発揮する。阿部ちゃんも浦和に戻ってきたのは「浦和で何ももたらしていないと思っていたからだ」と、強い気持ちを持っているけれども、彼は俺の背中をみてついてこいというキャラクター。若手がそれを感じ取っていければ良いと思う。

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試合中の臨機応変な判断が求められる

椛沢:湘南戦では、先制点を取ったものの、その後、追加点を奪うことが出来ずに、湘南に隙を与えてしまい、逆転を許す展開。なんとかロスタイムに追いつきましたが、苦しい試合でした。

河合:あの試合では、後半入ってからの受身に入った姿勢を見た時に、えっ?と思ったね。
体力的に問題があったといっても、逆転された時に、浦和の運動力は、ものすごかった。やれば出来るんじゃないかと誰もが思ったのでしょうか。

椛沢:2点目を取らないといけないという気持ちは選手の中であったみたいですね。逆に点を獲らないとまずいという焦りの気持ちになって、1点リードをしているのに、どこか余裕がなかったように思えます。ミシャのサッカーは、ビビると出来ない。リスクを掛けて思いっきりやれると良いサッカーが出来る。お尻に火がつけば、出来るというのは、そういうところなのかなと思います。

河合:槙野も2点目を取りに行かないと思っていたと試合後語っていた。元気は「前半の形で、後半もやりたかったけど、それができなかった。前半のチャンスをものに出来ていたらという思いもあす。なぜ後半出来なかったのかという気持ち。それは、ビデオを見ないと分からない」と話をしていました。

椛沢:湘南に押し込まれる形になって、前線と最終ラインが分断をされて、しかもボールを奪う位置が、すごく低いので、そこから相当走らないといけない状況が続いていた。

河合:普通は高い位置でボールを奪って、というやり方なはずなのに、5バックになって押し込まれるという形が続いてしまった。そこでカウンターがあるかと思えば、それもなかった。

椛沢:本来のミシャさんは、引いて相手を引き込んで、そこからカウンターという考え方もありますよね。

河合:ミシャさんの中には色々な考え方がある。5バックにして相手を引き込むやり方もある。前からしっかり守備をはめてショートカウンターという形もあるし、ボールポゼッションをして楔のパスを入れるタイミングを狙うとか。いくつかのパターンがあるはずなのに、それを臨機応変に使い分けずにやることができない。

椛沢:相手もミシャさんのやり方がわかって対応をしてきているので、そこに対して、また先手を打つということが必要とされる。狙ったことが嵌ってよい形で試合が進められるけども、狙いが外れた時にサッカーが出来なくなる。甲府戦は、まさにその典型で90分間、修正することなく、そのまま戦ってしまった。

河合:それによって落としてはいけないゲームを落としてしまった。

椛沢:その気持ちが焦りを呼んだのかなとも思います。優勝争いのプレッシャーもあるのでしょうか。

河合:そんなにうちの選手はメンタル的に弱いかな?

椛沢:弱い!

河合:ただ、あの試合は、よく同点に追いついたと思う。

椛沢:勝ち点0だったら、終わっていたかもしれない。あの勝ち点1は相当大きいものになるかもしれないですね。

河合:そう思います。

河合:でもフィジカルが問題だったというのは言い訳だと思う。同点に追いついたのはサッカー的に一番苦しい時間帯だったけども、湘南に走り勝てた。走る力が残っている。最後は、ここで負けるわけにはいかない!というメンタルで走った。だったら、その強さを先に出して欲しかった。

椛沢:勝たないといけないという気持ちがメンタル的に守りに入って、リスクをかけられなくなったけども、追い込まれて爆発した感じですね。ここ数試合は、ミシャさん自体も守りに入っていますよね?

河合:GKを加藤君から山岸にしているあたりもね。繋ぎでは加藤君だけども、シュートストップでは山岸が上だから。あとはメンタル的なこともあるのか。そこはミシャさんでなければ分からない部分です。

ダービーに勝てば良薬になる。負ければ劇薬になる。

椛沢:もやもやが、残る9月でしたね。マリノスがこけたのに、なぜ勝てなかったのか。
その意味では、レッズは足踏みをしましたが、上位が一緒にこけていることは幸いです。

河合:しかし後ろをみると、鹿島も来ている。その中で、もちろん、浦和に優勝の可能性はある。諦めてはいない!しかし、Jリーグは厳しいリーグだよね。

椛沢:Jリーグがこれだけ均衡しているのは強力な外国人選手の不在じゃないですか。
マルキーニョスとドゥトラのいるマリノスが1位になっていることがJリーグを表しているとセルジオさんが辛口な発言をしていましたが、ある部分納得できる。今のJリーグには、スーパーな外国人選手がどこにもいない。

河合:そうだろうね。今、全盛期のエメルソンが浦和にいたら、ダントツでしょう。

椛沢:先日のACL準決勝での広州恒大は、前線の外国人3人で、攻撃を全て完結していた。浦和になくて、広州があるのは、それだけですよ。柏の方がサッカーをしているけれども、決定的にあの3人の能力が違った。Jリーグと中国の差もそこなのかなと。ACLで勝ち残れるのは、あの差ではないかと思ってしまう。

河合:レッズがACLを優勝したときは、ワシントンとポンテがいたからね。ミシャさんがぼやくぐらい、Jリーグはどこが優勝をしてもどこが落ちても分からないリーグだと。湘南戦の次の日に練習試合で、チョウさんに会って、帰り際に車の窓があいて、「昨日来ていたか?」とハツラツとした顔をされていた。練習試合でもいいようにやられてしまった。湘南と比べて、選手のクオリティは浦和の方が上だけれども、年棒の差と同じくらいクオリティの差はあるのだろうか。

椛沢:そこまでの差は、ないでしょう。年俸ほどの差はないと思う。特に試合を決める選手の差がないと思う。広州のあの3人がボールを持った瞬間、点が入る雰囲気がある。実際にそれで点が入ってしまう。

河合:そんなワクワク感があったね。

椛沢:広州を糞サッカーというかもしれないけども、結果的には4-0で終わってしまっているわけですからね。Jリーグには、試合を決める強烈な選手がいない。浦和においては、本来、原口がその役割として活躍して欲しいけども、悩んでいるのでしょうか。

河合:元気は大丈夫だよ!大宮戦で戻ってくる。「ここで決めなければ男じゃない」と言っていたから。自信をなくした元気は見たくない。でも自信が過信に変わる元気も見たくない。

椛沢:原口に責任を負わせないで、彼をフォローするようなやり方を周りに作ってもらいたいですね。

河合:幻になった湘南戦のゴールは、練習通りのよい形だった。元気もあのゴールが嬉しかったけども、オフサイドだった。「俺はもっていない……」と言っていたけども、それが出来たということを自信に持って欲しいと伝えた。それをやり続けて欲しい。出来るんだから、次も出来るんだと。まずはあそこでシュートを打ったことを評価しようと。そこで「次、俺は決める。ここで決めなきゃ男じゃない」という発言になったんですね。

椛沢:彼の打開力はあのチームでは魅力。それが見えなくなってから、チームが減退している気がします。

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河合:これからのリーグの山は大宮と鹿島かな。

椛沢:ダービーの結果如何で、勝てば自信になるし、負けると今季が終わるくらいの試合だと思います。

河合:ミシャさんも「勝てば良薬になり、負ければ劇薬になる」という言い方をしていた。

椛沢:大宮戦で、ある程度の成功体験が出来ると、これから立て直せると思うんですけども、勝てないと、ぐっと落ちてしまう気がする。大宮もチーム状態は悪いけれども、ダービーは目の色変えて来るのは目に見えている。浦和も受けずに、思いっきりぶつかってくれると良い試合になるはず。

河合:大宮戦は良い薬になるか、良い治療薬になってくれるか。

椛沢:自信を持って戦って、これでやれば勝てるんだというものが得られれば、大きな力になる。これが出る頃には結果が出ていますから、どっちに転んでくれているでしょうか。

河合:本当に強いチームは、勝ち方を知っている。今の浦和は勝ち方を知らないんだよね。

椛沢:それは優勝するチームは基本的に守備が強いということもあるのではないでしょうか。失点をしないから、内容が悪い試合でも勝ち点を落とさない。そういう意味ではミシャさんはそういうサッカーではないですからね。

河合:そういう考え方もあるかもしれないね。

椛沢:駒場で行われた天皇杯の試合では、今までなかなか出場機会のなかったサブの選手達が出場をしたわけですが、ダラしなかった。俺たちも出来るんだぞ!というガムシャラさも感じることが出来なかった。それはミシャさんもそのような雰囲気をチーム内に創れていないんじゃないかと思う部分もある。

河合:ミシャさんは交代のための交代はしないと言っている。そこで俺はここにいたら試合に出られないんだと思ったら終わり。ライオンが子供を崖から落として、這い上がって来いとしているのがミシャさんだと思う。落ちてしまってそのままの選手では、ここにはいられない。そこから、どんな崖でも這い上がってくるからこそ強さが出てくると思う。

椛沢:あの試合後に「レッズの選手は13人しか主力がいないだろ」と言ったのはわざと言ったのでしょうか。サブの選手は使えないだろうと周りを納得させるために、あの試合にサブの選手達を使ったのかと思いました。

河合:私は、そうではないと思う。お前らやらないといけないよという意味だったと思う。ミシャさんは一人ひとりの選手に愛情をもっている監督。あそこでなぜ「13人しか」と言ったのかなと思ったのは、メディアを使って「お前ら頑張れ、こんなことを言われて悔しくないのか。サポーターから、だから使われないんだと思われたぞ、それで良いのか」と奮起させるために、私は言ったと思う。ミシャさんと接して、そう感じるものがある。ミシャさんの中に、厳しさの中に優しさを感じることが出来た一人だけども、そう捉えられない選手がいたのも事実。それは違うと選手に話した。ここでやれなかったら、他でもやれるのか?どうせ監督使われないと思ったら終わりだよ。

椛沢:そんな中途半端な選手は出られないチームだという厳しさでもありますね。浦和では、成長のために選手を起用するという余裕も無いですからね。

河合:だからこそ、練習から高い意識でやらないといけない。その意味で、ギシはすごいと思った。常日頃の練習の中から、試合勘がありませんと言わせないものを、常に意識高く、やっていたということを証明した。

椛沢:出られない選手達は、ギシを見ないといけないですよね。普通は、あそこまでノーチャンスだったら腐りますよね。

河合:彼はすごいよね。加藤も逆に外されて腐っているかと言ったらそうではなく、また奪い返すと思っていて、それによって、またパワーアップするからね。そこで大谷も俺だって!という風に思っているので、そういう競争意識も生まれている。

10月が実りの秋となるか

椛沢:10月は大宮、ナビスコ準決勝の川崎、鹿島と痺れる試合が続いて、この先には10月結果如何では、ナビスコ決勝、リーグ優勝争いへと続いていきます。

河合:実りの秋だね!ナビスコのセカンドレグは勝てば良いんだから!3-2で負けたんだから、倍返しで!

椛沢:そんなにうまくはいかないでしょうけど(苦笑)第1戦である程度やれるというところが見られたので、苦手意識はなくなったと思います。

河合:甲府戦は勝てば首位に立つという試合だったけども、3万くらいしか入っていなかったのが寂しかった。サポーターが相手選手をびびらせる。みんなが力を合わせれば、そんな力も生まれるはず!

椛沢:サポーター自身も、ダービーでこの雰囲気を作れば勝てると思えれば、ここからサポーターの数は増えると思います。

河合:思い起こせば、ナビスコの決勝もそうだし、リーグ優勝の時もそうだし、ACLの王者の時もそうだし、スタジアムに入った瞬間に試合も始まってないのに、勝ったという気持ちになれた。そうやってレッズのサポーターはやってきたと思う。そういう雰囲気を残りの試合で、創ってもらいたい。

椛沢:もちろん、サポーターの力も残り試合大きいと思います。そう思わせる選手達の活躍にも期待をしたい。

河合:私は選手の近くにいるから、サポーターの皆が、このチームを応援したい、勝たせたいという気持ちを、彼らの気持ちを伝えていくことで盛り上げていきたい。だから、みんなにスタジアムに来て、選手に後押しをしてもらいたい。ナビスコカップの第2戦もみんなに来て欲しい。みんなで勝とうよ!勝たせようよ!それでこそ浦和でしょ!

椛沢:埼玉スタジアムで、浦和一丸となって、決勝の舞台を掴み取りたいですね。実りの秋の始まりはそこからです!

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