浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.164 (11/6)

最高潮のファイナルの舞台も、10年ぶりのナビスコカップ戴冠はならず。

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椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:先週末は、10年ぶりのナビスコタイトル獲得に向けて、”最後の国立”でナビスコファイナル・柏レイソル戦でした。浦和方面から、始発列車で多くのレッズサポーターが国立に乗り込みました。国立で朝を迎えるのは、決勝の恒例行事になってきました(笑)。それでもレッズとしては、5度目の決勝戦ということで、並びもサポーター主導でルール化がされており、前日に埼玉スタジアムで抽選が行われて、当日はその抽選番号に従って列が作られ、整然と入場が行われて、試合に集中できる環境づくりが行われました。この部分は、サポーターの経験値がしっかりと蓄積をされていることの証明だと思います。

豊田:アントラーズ相手に敗れた2002年と翌2003年のリベンジファイナル。あの舞台は赤い悪魔たちには忘れることができないでしょう。悔しい敗北と豪快な初戴冠、快晴と冷たい雨……明暗が国立の空と真逆のコントラストになっているのも何やらURAWAらしくて気に入っています。あの時以来、決勝の国立に進むたびに話題を集める“URAWA劇場”の盛り上がりはナビスコ史からは外せないエポックであると思います。

椛沢:そして、試合前には決勝に向けて設えられたビジュアルの準備も行われました。決勝に向けたビジュアルは、過去の国立開催では最高難度の絵柄を描くことになりました。それは、10年ぶりのナビスコタイトルを是が非でも獲得しようというサポーターの意気込みの表れでもありました。実は、ビジュアルの準備は開門時間の前の8時から9時という1時間しか与えられておらず、あの絵柄は1時間の内に約150人のサポーターの手で作られたものでした。実際の作業は、絵柄に合わせて、赤、白、黒の3色のシートを決められた席に置くようになっており、その場所が描かれた紙を下に、ブロックごとにシートが一枚ずつ置かれて、あの絵が完成をしました。

豊田:人づてに聞きましたけど、信じられません。職業柄多くのイベント現場を体験してきましたが、不特定多数の来場者に委ねられる客席の現場でそのスケジュールであの演出は……プロレベルでも普通なら考えられない精度とクォリティ(苦笑)。

椛沢:この試合を勝ちたいと思った時のレッズサポーターの結束力が出た成果だったと思います。そして、ウォーミングアップで選手が登場すると、スタジアム中がLフラッグの海で埋め尽くされました。これもJリーグが試合を盛り上げるためにコレオグラフィの準備をしていると聞いたサポーターによって、浦和は浦和らしくスタジアムの雰囲気を作って盛り上げようと、フラッグの持参を呼びかけていました。Jリーグの用意したコレオはご覧の通りでした……。リーグ創設20年が経って、フットボール文化が理解できないリーグのやり方に、歯がゆさを感じます。本当にこの国のサッカー文化を盛り上げることを考えているのかと。ナビスコ決勝ではお馴染みの光景ともなったLフラッグの海は、いつ見ても美しく、爽快な光景でした。この光景をみて、スタジアムがどう盛り上がるかの答えは明らかだと思います。

豊田:編集長が決勝前に前振りしていた通り、スタンドの熱の対比を真正面から確認させてもらいました。かなりインパクトある対比だったのでは? ゲーム前から本当にさまざまに「Jの現在位置」を考えさせられるシーンを展開できたと思います。

椛沢:舞台が整い、選手入場。国歌斉唱を松崎しげるさんが行い、レッズスタンドでも大音量の国歌斉唱が行われました。そして立て続けに発せられた「WE ARE REDS」の大コールの中で、試合がキックオフされました。序盤からレッズは果敢に仕掛けますが、柏もレッズと同じ、3-4-2-1のシステムで対抗して、ミラーゲームの展開を作り、マンツーマンによって、穴を完全に埋めるという戦術を採ってきました。これを90分間崩しきれなかった印象です。

豊田:決勝という設定も考えると「ネルシーニョならアレでしょ?」と予想した通りのペース配分を突きつけられました。しかも不運にも、それがモロにはまってしまった……。

椛沢:前半ロスタイムに、右からライナー性のクロスが入り、それを柏のエース工藤が頭で合わせて先制。そのまま前半終了の笛が吹かれました。奪われた時間も非常に悪かった。

豊田:平川のクリアミスをそのままワグネルにミドルレンジから狙われて、ペースを乱した直後でしたね。キックオフ後初めての嫌な流れを作られて、プレーを切って前半を終らせてくれと念じた瞬間の失点でした。

椛沢:柏は相手の良さを潰し、相手の弱点を突く作戦を採ったのに対して、浦和は自分たちのサッカーを貫くという手法で、相手を崩しに掛かった。サッカーで勝っても勝負で負けるような試合だったと思います。この部分において勝負の差が出てしまったように思えます。浦和が今後も自分たちのサッカーで圧倒する手法を採るのであれば、相手がサッカーを潰しにきた時に、さらにそれを打ち破る強力な個(選手)の存在が必要なのではないかと改めて思いました。良いサッカーが出来ないと成果が出ないのであれば、最後の勝負で決めきることが出来ないのではないか。そんなモヤモヤした気分にさせられました。

豊田:プレス席ではリアリズムに徹してタイトルを獲りに行くネルシーニョよりも、自らのスタイルにこだわったミシャを擁護する声も多く聞かれました。「ゲームを作った」のは浦和。「勝負に徹した」のが柏と……。ただ私の個人的な感想を言うならレッズがURAWAのフットボールの理想を具現できたなら、どんな結果も受容できる気分があります。ホームタウンに根ざしたサッカーを全うさせたのであれば、負けもまたサッカーという感じ。まあゴール裏にいる編集長には、そうあってもらっては困るけど。ところで今回ファイナルは熾烈なチケット争奪戦もあったというのに、『浦和フットボール通信』名のプレスパス発行で見届けさせていただきました。結果は残念でしたが、これも何より読者の方々と楽ではない条件下で尽力いただいている編集長以下スタッフの皆さんのおかげと感謝します。本誌52号のナビスコカップ決勝レポートにも書かせてもらったのですが、久しぶりの記者席で、旧知の方々から「やっぱり凄い雰囲気を作る。レッズは毎回このサポーターをココに連れてこなくちゃ」との言葉をいただきました。

椛沢:10年前のように、ナビスコを獲って上昇曲線を描こうと、このタイトルを皆が努力をして、最大テンションで臨んだ試合だっただけに結果が欲しかったのが正直な気持ちです。それでも決勝の舞台で、レッズの盛り上がりというものを久しぶりに感じることができましたので、負けて全てを失ったという想いはありません。むしろ、この盛り上がりをリーグ戦に繋げていきたいところです。最終戦のホーム埼スタでのセレッソ戦は既に全席完売とのことですが、その過程となる、3試合もぜひスタンドを赤く染めてもらいたいと思います。今週日曜日は、敵地仙台に乗り込んで、ベガルタ仙台戦です。優勝争いをする上で、この試合をモノにできるか、どうかは今後を左右する重要な試合になると思います。この試合でズルズルと後退するのか、頂点に登りつめるステップとなる試合となるのか。日曜ナイターという悪環境の中でのアウェイ戦になりますが、レッズを強烈に後押ししていきましょう。

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