浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.167 (11/26)

川崎に敗れ、優勝争いに後退。リーグ、残り2戦を闘い抜こう。

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:先週末は、ホーム埼スタで、川崎戦が行われました。首位横浜と勝ち点1差と肉迫する状況もあって、観客動員数も45,607人と期待が表れる人数が集まり、多くのサポーターがスタンドを赤く染めていました。前節・仙台にロスタイムに追いつかれており、この試合こそ勝利しようと、サポーターは「THE PRIDE OF URAWA」のメッセージを掲げて、そして選手入場タイミングでは、赤、白、黒のデカ旗と赤、白、黒のレッズトリコロールのストライプをスタンドに表現したビジュアルサポートも試合前に行われました。

豊田:これも終盤までのレッズのタイトル争いがあってのこと。カップ戦は終ってしまったけれど、初冬の寒さも忘れるリーグ終盤の熱気の中に多くのサポーターと共にいられることは幸せなことだと感じました。

椛沢:試合前に、先日全国出場を決めた市立浦和高校の選手たちに対する激励セレモニーもピッチ上で行われました。多くのサポーターが拍手で送り出していました。この試みは初めてのものだと思いますが、非常に良い試みだと思いました。

豊田:私は入場が遅れてぎりぎり退場の場面を見ただけなのですが、客席は指定席まで多いに盛り上がっていましたね。「獲り返して来いよ!」という期待通りのオヤジ野次も聞き届けることができました。やはりね、レッズ戦のスタンドは単にレッズをサポートするだけではなく、フットボール文化を分け合うURAWAの縮図であって欲しいわけです。

椛沢:まさにそのとおりですね。そして、試合は、皆さんご存知の通り、1-3の敗戦となりました。前半12分にCKから川崎DFジェシにヘディングを決められて先制をする苦しい展開でした

豊田:課題である入りの悪さが修正されていません。終盤戦のピッチでこれが克服できなければ、積み上げてきたリーグ戦の蓄積が削り取られるリスクをもっと認識すべきでしょう。天皇杯から中二日の相手に、簡単にエンジンをかけさせてしまったのは悔やまれる。9分の槙野・興梠の連携から始まった左からの崩しで原口が狙ったシーンで流れがせき止められると思ったのですが……

椛沢:あのシーンが唯一、中央の崩しを図れた攻撃でしたね。その後、レッズもアグレッシブな闘いで反撃を行い、ようやく後半57分に槙野が左サイドの仕掛けからゴールを決めて、同点。これで逆転するぞという雰囲気が一気に出ましたが、59分にあっという間に、槙野のオウンゴールで川崎に勝ち越し点を与えてしまいました。

豊田:狙い通りのボール回しをしているのはこちらなのに、プレスに掛かけられたあとの稲本や井川の縦のフィードが曲者のレナトあたりにポンポンと入る。「気持ちよくプレーできた」のはフロンターレであったことは明らか。突き放されたあの失点は象徴的でしたね。

椛沢:バランスを崩して同点に追いつこうとレッズも猛攻を仕掛けましたが、カウンターから大久保に追加点を奪われて、勝負アリ。完敗を喫してしました。

豊田:この日好調だった登里享平選手の動きやゲーム後のコメントを見ても分かるのですが、多くの相手チームがレッズ戦をピークに見すえています。今季の流れから見てもミシャ戦術は研究もされている。先制点を与えた前後の守りの乱れが最後まで尾を引き、川崎の流れに引きずり込まれてしまった印象です。

椛沢:シーズンを通して感じるのは、確かにミシャの下でチームとしての闘いは精度を上げてきているけれども、最終的な個人の部分で、勝負を決められてしまう試合が多いということ。この川崎戦も個で負けて先制を許して、川崎の狙いの展開に試合を運ばれてしまいました。この時にこの流れをひっくり返す力もまだレッズにはありません。「自分たちが目指すサッカーはできていた」という選手たちのコメントに違和感を感じてしまうのは、この部分なのかもしれません。狙うサッカーは出来ているけれども、最終局面の部分での個で負けてしまい、勝負を落としてしまっている。個人能力で相手をねじ伏せるサッカーを目指せというつもりは、もちろんありませんが、チームで戦いながらも、個の強さを備えるチームになっていかなければ、タイトルを獲るチームとしては厳しいような気がしています。

豊田:レッズにとって「自分たちが目指すサッカー」は確かに大切なのですが、それが安易にくり返されることについては私も違和感を覚えますね。ピッチ上の勝負どころでは「選手個人の応用力」も当然に必要なわけですから。よってこれは、じゃあ誰かを補強して……という発想では克服できない部分なのです。川崎は稲本、中村ら、カウンターに入る際に絡むボールホルダーがシンプルに確立されており、嵌った時の切れ味は長い対戦歴で織り込みずみだったはず。いまのレッズは、そういう現場のリスクマネジメントが効かない弱さを内包していると思います。

椛沢:たかねえとのライブディスカッションでも話しましたが、現状のレッズは、成長過程のチームであることは間違いありません。ただ、その中でもタイトルを狙う可能性は、まだあるわけですから、それをしっかりと狙い続けるのは当然のことだと思います。残り2試合、現状の自分たちの力を最大限出して、最高の結果を目指す。このままズルズルと下がっていくのは、浦和の名を背負っているチームとしては許されないことと思います。浦和らしい姿勢を最後の2戦見せて欲しいと思います。

豊田:お話した通り、終盤のこの段階では相手はレッズの攻め手を熟知しています。対するレッズも、自分たちの弱みを相手の誰が、どのように突いてくるかを予想できるはずなのです。ここはぜひミシャばかりではない選手とベンチを含めた「レッズの現場力」を見せて欲しい。そこをスタンドから見きわめてサポートするのも我々のタスクでしょう。

椛沢:J2は一足先に全日程を終えて、ガンバ大阪、神戸の昇格が決定。残す1チームを決めるプレーオフには、京都、徳島、千葉、長崎が争うことになりました。神戸の吉田孝行、岐阜の服部年宏など名プレイヤーたちも今季限りの引退となり、セレモニーなども行われていました。プレーオフを争い白熱するスタジアム、名プレイヤーの引退を惜しみながら、見送るサポーター。全国各地で、自分の愛するチームのさまざまな最終戦を見届けている姿を見るにつけ、Jリーグの文化は着実に全国各地に芽生えていると実感しました。

豊田:この大切なスポーツ文化を、我々サポーターは高い意識で見守ろうと思います。それにしても、吉田孝行選手も引退ですか……。いつかインタビューしてみたいですね。彼には何度も痛い目にあわされた記憶があります。

椛沢:吉田選手は、まさにレッズキラーでしたね。レッズには彼独特な見方があるように思えます。今週末は敵地に乗り込んでサガン鳥栖戦です。敵地『ベアスタ』は鬼門とも呼べるほど勝利ができていないスタジアムですが、レッズイレブンの意地をここで見せてもらって、最終戦まで夢を繋げる試合をしてもらいたいと思います。泣いても笑ってもシーズン残り2試合。サポーターも闘い抜きましょう。

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