浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.168 (12/5)

鳥栖でリーグ優勝の夢が潰える。ホーム最終戦では、アジアの挑戦権をかけて闘う。

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椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:先週末は敵地・鳥栖のベアスタでサガン鳥栖戦でした。優勝の可能性を残しての試合となり、鳥栖には5000人以上のレッズサポーターが乗り込み、敵地を赤く染めましたが、想いは届かず、1-4とレッズが完敗を喫してしまいました。

豊田:放映されている画面だけなら、間違いなくホーム戦の空気でした。アウェー最終戦にまでこのサポート……今季も客席からの支持者たちは、できることはすべてやり尽くしている。そういう印象でした。

椛沢:前からプレスをかけようとする浦和に対して、鳥栖は前線の豊田をターゲットにロングボールを多様してきたので、プレスもうまく掛からず、相手にリズムを作られてしまいました。そして、先制点は、この所、続いているセットプレイからの失点。この先制点を許すとチームは脆くも崩れていきました。そして2点目は山岸のキックミスから相手にボールが奪われると一気に裏を取られて失点。レッズのウィークポイントを見事に突かれて2点のビハインドで前半を折り返すことになります。レッズゴール裏スタンドの雰囲気は決して良いものではありませんでしたね……。

豊田:川崎戦のVTRを見せられている気分でした。ニアに速い球速を送り込む型どおりのCKパターンに簡単にやられてしまう。この終盤戦で先行を許せば相手、ホーム、アウェーに関わらず致命的なリスクを背負うことは周知されているはずなのですが。

椛沢:後半はもうやるしかない、とゴール裏も覚悟を決めて、浦和の攻撃を促す『アレ浦和』が後半開始前から、歌われます。レッズも積極的に攻め込みますが、ゴール前をしっかり固める鳥栖のDFを崩すことができません。これも終盤戦に露呈してきた課題ですが、サイドをいくら崩せども、そこからゴール前での局面勝負まで至ることができません。攻めている感じは受けるけれども、怖さを感じない。そんな時間が長く続きました。

豊田:というか、プレスをかけるポイントとレッズのボール回しの危険部分だけを効率的にケアする鳥栖の理想どおりのゲームに簡単に持ち込まれていた展開……ということなのでは? 先手を取られた以上、リスクを犯しながらも敵陣内の中央部分で勝負せざるを得なくなる。でもそこが鳥栖の狙い目であったことは明白。よって「パス出しのトライ」も、それを引き出す「受け手の動き出し」にも制約があり、そこでミスが出ればすべてピンチに繋がる結果になりました。分かりやすすぎる負のパターンでしたね。

椛沢:鳥栖が浦和対策を施した一面もあると思いますが、鳥栖の本来のサッカー自体も細かく繋ぐよりは前線の豊田に向けてボールを入れ込むサッカーだったと思います。その相手に対する攻略方法をレッズは持ち合わせていなかったと思います。終了間際にPKを与えて3点目を奪われますが、オーバーラップした那須がヘッドでゴールを決めて一矢報いる1点を返しますが、さらに豊田にハットトリックとなる4点目を決められて万事休す。優勝の可能性を残して、どんな形でも勝ちたい試合において、最悪の結果となってしまいました。

豊田:ワクを叩いたシュートやエリア内での微妙なジャッジなど、ツキがない部分もありました。しかし、ミシャの指揮のもとに「自分たちのサッカー」を掲げていたイレブンが、この正念場で気持ちだけが空回りしてしまう場面が多かったことは記憶しておかなければなりません。

椛沢:さすがにサポーターもここまで我慢をしてきましたが、堪忍袋の緒が切れたかのように挨拶にきた選手達には怒号が浴びせられました。勝ちたい気持ちは当たり前にあるのでしょうが、それを感じるサッカーが表現出来ていない。終盤戦において、その力の無さが一気に噴出してしまいました。今季はことごとく勝負時に敗戦を喫してしまいました。鳥栖からの帰路を、これほど遠く感じたことはないですね。この試合を振り返る気力があまり起きないのが正直な想い。読んでいる方もあまり思い出したくない方が多いかと思いますが……。それだけダメージが与えられた敗戦となってしまいました。

豊田:その感想、参戦した編集長の言葉として重く受け止めたいですね。ホーム最終戦を残している現状で、イレブンには共に闘っているという実感をぜひともゴール裏以下の客席にもたらして欲しいです。そしてこういう場面での致命的な停滞は、クラブともども我々が「伝統的に抱え続けて来ている」という事実は、今シーズン以降に深く検証して行かなくてはならない部分と思います。

椛沢:首位の横浜が新潟に敗れたものの、浦和の優勝の可能性は潰えてしまいました。優勝にまだ値しないチームだということは言われ続けていましたが、今季はそのようなチームがあまり見当たらないシーズンだっただけにチャンスもあったと思うので、チャンスがある時に優勝をしておきたいと思っていただけに、自ら優勝を逃すような展開が続いたことが、残念です。

豊田:日産スタジアムはリーグ戦では過去最高の入場だったとか。勝てば9年ぶりのマリノス制覇の瞬間を62,632人が目にすることができたわけです。結果は先制されて攻めるしかなくなり、型どおりのカウンターをもらって敗戦……。ホームの大観衆を背負いつつ失うものは何も無い挑戦者を退けることは、百戦錬磨のベテランをそろえたあの名門チームでも難しいわけです。J創設直後からの横浜サポの知り合いたちがいるのですが、敗戦もさることながら、コアなマリノス支持者たちの中には反発もあったようですね。「こんな時だけスタンドに寄せ集まったって、簡単に優勝体験なんてできる訳ないじゃん!」と。

椛沢:あの日産の大観衆の一部は親会社である日産社員の動員が図られていたようです。見た目は大観衆でもその熱気は本物ではない。その部分においての力強さが日産スタジアムでは感じることができなかったのではないでしょうか。優勝体験だけを得に来るのではなく、共に勝ち取りに行く雰囲気か、どうかということは拮抗した戦いになればなるほど、求められる部分だと思います。シーズンも終了に近づき、各選手の同行も伝わってきます。浦和では、21年在籍の山田暢久選手の退団が既に発表されており、セレッソ戦が彼の浦和最後の試合になります。その他、野田紘史、永田拓也選手の退団も発表されています。他チームに移籍したレッズOBでは吉野智行、盛田剛平選手が引退をされるそうです。吉野選手はJ2降格、J1昇格を中心に苦しい時代に若き才能として中盤を支えたプレイヤーでした。熱いハートの持ち主で、サポーターからも好かれていましたね。盛田選手はJ2降格の99年に鳴り物入りで入ってきた大学生ルーキーで開幕スタメンとして名を連ねましたが、思うような活躍ができませんでした。思い出深い彼らの引退は寂しい想いがしますね。

豊田:レッズの支持者であるなら、クラブに在籍した多くの才能がどのようなプロセスで花開くのか、終ってしまうのか、その明暗の岐路は何処にあったのかを注意深く観察して欲しいです。先ほどのマリノスサポーターの話ではないが、私たちはレッズのホームタウンの住民なのです。誰よりも長くクラブを見守り、支えて行かなくてはならない立場にあるのですから。

椛沢:最終節は、2位広島と3位鹿島の直接対決があるために、浦和は勝利さえすることができれば2年連続のACL出場権獲得は得ることができます。相手は勢いに乗るセレッソ大阪。若き代表のエースに名乗りをあげている柿谷などに注目が行きますが、30失点とリーグでも29失点の広島に継ぐ失点の少なさとバランスも取れているチームです。天皇杯も敗退しているので、最終節が今季最後の試合。その最後に浦和の意地を見せることが出来るか。3連敗、そしてACL出場権も失うことになると非常に悪いイメージでのシーズン終了ともなってしまいます。是が非でも勝ちが欲しい一戦。チケット完売で、5万人越えが予想されるホーム埼玉スタジアムで、浦和一丸、最後の力を振り絞ってセレッソを打ち破りましょう。

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