浦和フットボール通信

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「浦和ゼロからのスタートで、新9番が見せてくれたレッズ愛」ゴール裏からのレビュー Jリーグ第3節vsサンフレッチェ広島

hiroshima

鳥栖戦での横断幕問題から、浦和は騒然とした1週間を過ごした。Jリーグ初の無観客試合などの制裁を受けることが決まるなど、今回の事案の重大性を日々感じた。

私自身もサポーター、ホームタウン、メディアと浦和に関わる人たちと何十時間とこの話をする機会を得た。それぞれの立場の人たちが全て、当事者意識をもって、この問題に向き合い、浦和が変わらなければいけないという意志を持っていた。

広島戦当日、この日ほど浦和を背負う気持ちを感じて、敵地に向かったことはない。広島までの道中は様々なことを考えてスタジアムに向かった。

現地のスタジアムには、淵田代表を始めとした、クラブスタッフがスタジアムに集結して、差別問題に対してのチラシを配りながら、スタンドの同行を見守った。スタッフの表情からも彼らもこの問題を直視して、立ち向かって行くという姿勢を感じた。

中心部のサポーターも試合前に集会を行い、再度この問題に対しての意識共有。そして新たな浦和レッズを創っていく覚悟を確認した。
敵地・広島に馳せ参じたレッズサポーターは1800人。アウェイスタンドはいつものように赤く染まるが、横断幕、ゲート旗、フラッグなどは一切なし。
今まで浦和の光景からすると異様なものだったと思うが、自らの表現を制限することでの今回の問題に対する覚悟と姿勢を示し、これからに挑んで行くという表れだった。

練習のために、選手が入場してくると、大きな拍手がレッズサポータースタンドから巻き起こった。いつも以上に力強い拍手。そして、浦和レッズコール。それぞれの思いが篭った声が広島ビックアーチに響き渡っていた。

今季、広島から移籍加入した、西川に対しても「西川」の初コールが起きた。この3試合での活躍に対する評価、古巣広島との対戦での活躍を期待してのコールとなった。

試合前に行われる、相手の選手紹介では、ブーイングは一切なし。サポーターも恐る恐るサポートの仕方を手探りに始めた。

キックオフ直前。リーダーの「そろそろ行こうか!」の声がかかる。それに呼応するように他のサポーターの「オイ!」の声が挙がるが、再びリーダーが叫ぶ。「元気ねーぞ!デッカイ声で、サポートをしよう!」と、気合を入れた。

試合中は、いつも以上に声と手拍子、我がチームを後押しするサポートに集中していた。試合中には相手に対するブーイングも起こった。それはチームをサポートするための極めてフットボールの応援としては普通のブーイングだ。広島で展開されたサポートは、レッズサポーターが元々持っている応援スタイルだった。

浦和と広島は、互いにミシャによって築かれた3-4-2-1のシステムで、ミラーゲームとなる。それぞれのポジションで、マッチアップが起こり、前半は膠着した時間が続いた。レッズの選手達も必死にボールに食いつき、マッチアップではほぼ圧倒をしていた。その中でCKの崩れから、右サイドで平川がクロスを上げると、ニアで興梠が頭で合わせて、ヘディングシュートを決めて、貴重な、貴重な先制点を奪った。

後半も追い付こうと、ギアを上げて攻め立てる広島に対して、その攻撃を浦和が跳ね返し続けた。この日の選手達も相当の覚悟を持って試合に挑み、プレーをしていることが感じた。そしてロスタイム。左サイドでボールを受けた原口元気がドリブルでペナルティエリアに侵入。得意のカットインからシュートモーションに入った所で、ゴール裏全体がゴールを確信した。原口のシュートの軌道を追いながら、ネットに突き刺さる音が聞こえる。その次の瞬間。ゴール裏が爆発。原口に向けて歓喜するもの、涙するものもいた。

そして、ものすごい形相でスタンドに向かってくる原口元気。エンブレムを握り締めながらゴール裏のスタンドに向かってきた。その姿に彼も背負っていた思いを感じた。その思いを持ってゴールを決めてくれた。新9番に相応しい、全ての人の思いを背負った追加点だった。

ゴール裏スタンドからは「FORZA URAWA REDS 俺らの誇り、共に行こうぜ」と唄われたチャントが巻き起こる。浦和レッズの新たな一歩、そしてこれから共に道を進んでいくに相応しいコールだった。

そして終了のホイッスル。2-0でサンフレッチェ広島に勝利した。サポーターが陣取るスタンドに挨拶に来る選手達に対して、『WE ARE RED』のコール。浦和に関わる人たちが、この1週間は苦しい思いをしてきたと思う。それを背負った上でのこのコールは、気持ちが篭ったものだったと思う。

ヒーロインタビューを終えた選手、ミシャ監督、スタッフも揃って、再度挨拶が行われる。
浦和一丸となって進んでいこうという証をチーム全体で表現してくれたことに、絆を実感した。サポーターが一方的に起こした問題に対しても、選手達はサポーターだけの問題と思わず、浦和のファミリーとして解決していこうと踏み出してくれた。選手達にはありがとうの気持ちしかない。

試合後にリーダーも「今日の試合で、俺たちが選手達に教えられた。浦和レッズをもっと愛してしまうよな」。リーダーも号泣していた。

勝利の後に『WE ARE DIAMONDS』を歌い、改めてこの歌詞を感慨深く感じた。この問題は解決したわけではなく、これからが問われる長い道のりになるだろう。しかし、浦和レッズは新たな道をしっかりと進んで行けると思う。浦和に関わる全ての人間が強い気持ちで、進んでいければ、再度赤く輝くダイヤモンドになるはずだ。

ナビスコ柏戦をはさんで、ホームで迎える清水戦は無観客試合となる。この試合が実際に行われた時にまた色々と感じることがあるのかもしれない。この日ばかりは応援したいという気持ちをサポーターそれぞれが持っていると思うが、クラブに迷惑をかけることになる可能性が高いので、現地に足を運ぶことなく、チームを信じて試合を見守ることにしましょう。

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