河合貴子のレッズ魂ここにあり!「悲しいスタジアムを幸せなスタジアムへ」
J開幕から浦和レッズを追いかけ、ケーブルテレビのパーソナティなどで活躍をしている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。
ミスが起きたらチーム全員でカバーし合う。フットボールにはそういう精神がある
ピッチに向う選手達のスパイクの音がカツカツと響き、カメラのシャッター音が木霊する。
静けさに包まれた埼玉スタジアムには、試合前に南広場でボールを蹴って遊ぶ子供達の姿も、観客席のざわめきも無い。人影のないコンコースは、閑散としていて虚しさを募らせる。いつも試合で見慣れた光景が、そこには無かった。
空虚に広がった空間の埼玉スタジアムの上空を3機のヘリコプターが旋回する、胸が張り裂けそうなこんなに悲しいスタジアムで試合が行なわれたのだ。
差別的と考えられる横断幕の掲出により、浦和に下った制裁は無観客試合であった。無観客試合となった対戦相手の清水の選手、クラブ関係者、清水を愛するファン・サポーターの方々を巻き込む形となり、本当に申し訳なく居た堪れなかった。決してあってはならない無観客試合であった。
試合は、前半9分、ショートコーナーからのクロスにファーサイドで合わせた六平選手のシュートのこぼれ球を長沢選手が押し込み、清水に先制を許すも、後半76分に関根貴大選手のクロスをゴール前で李忠成選手が相手DFと競り合い、そのこぼれ球を原口選手が右足を振り抜き同点に追いついた。原口選手のゴールが決まった瞬間、誰もいないゴール裏から歓喜の歌声が聞こえたような気がして、零れそうな涙をグッと押し殺した。本当に悲しく、侘びしい瞬間であった。共に闘い、共に喜びを分かち合う仲間がいないことを痛感させられた。
それでも選手達は、サイドを揺さぶりながら最後まで諦めずに逆転を狙ったが、試合終了の無情のホイッスルが無人のスタジアムに鳴り響いたのだった。
試合後、原口選手は「いつも通りやりたいと思っていたが、正直、難しかった。サポーターの力によって動かされている部分は非常に大きいと感じた。特に俺は、そうだと思う。ハーフタイムに槙野君から「お前どうした?!覇気がないぞ!」と言われた。(無観客の)イメージはしていたが、いつもと同じメンタルではプレー出来なかった。やっぱり・・・大切な仲間だなぁと、サポーターは思う。深く感じた。また一緒に闘って行きたいと思った」と、どんな時でも共に闘って来たサポーターの存在を改めて思い知った。
柏木陽介選手は「無観客試合は、難しかった。どうしてもフワッとした感じになった。また、クラブとサポーターが一つになって闘って勝ちたい。サッカーをやっている中で、自分のプレーやチームのプレーを生で見てもらうことが、一番嬉しい」と観客がいて初めて成り立つプロフットボーラーである大切な思いを話した。鈴木啓太選手も「僕達は、プロのサッカー選手として闘っている中で、1試合、1試合に重みがある。それをサポーターの前でプレーしたいし、見てくれる人がいる中でやりたいと言うのが、率直な感想です。テレビの前で応援して、パワーを送ってくれたサポーターもいると思う。けど、サッカーと言うものは、スタジアムに来て、実際に生で見て感じて貰う意味の大きさを選手達は感じた。こういうことが、二度と無いように浦和レッズが生まれ変わらないといけないし、大きく考えれば、Jリーグにとってもこういうゲームが二度とこんなことが起こらないようにと言うことだ。清水の選手に対しても非常に申し訳ない。対戦相手があって、お互いに尊重してリスペクトしあって成り立っている。浦和の立場からコメントをするのならば、清水の方達に本当に申し訳ない。だからこそ、浦和だけでなく、Jリーグ全体の良い教訓になれば良い」と神妙な面持ちで話した。
今回の一件で、人それぞれ思い感じることはあるだろう。だが、フットボールにおいて、失点はチーム全員の責任、得点もチーム全員のゴールだ。ミスが起きたらチーム全員でカバーし合う。フットボールにはそういう精神がある。その精神の下で、浦和を愛するファン・サポーターはもちろん、選手、クラブ関係者、浦和に関わる全ての人々はこの事態を真摯に受け止めたと思う。
二度とこんなことが起きないために、ひとりひとりが自覚し、失ったものを取り戻すために前に進んで行くしかないのだ。だからと言って、人が人を監視するスタジアムも悲しい。本当の意味での「PRIDE OF URAWA」を示していかないといけない。いつの日か、浦和を愛する思いの籠ったフラッグや横断幕、みんなの力で作りあげるコレオグラフィが、見られる幸せなスタジアムであると誇れる日が来ると信じている。3月23日、埼玉スタジアムは本当に悲しいスタジアムであった。
Q.膝の怪我の中でもスポーツ障害について教えて下さい
A.使い過ぎで起きる膝の障害でよく見られるのは、膝関節周囲に付着する筋肉の付け根の炎症による障害です。子供の膝のスポーツ障害の代表がオスグット病です。走ったり、ジャンプしたり、ボールを蹴る動作を続けると大腿四頭筋の付着部である膝の一番下の付け根(脛骨粗面)に負担が掛かります。子供はその部部分はまだ成長軟骨が残っているため、筋肉を引っ張る動作が続くと脛骨粗面(膝小僧少し下の部分)が出っ張って来てしまい痛みが出現します。大人で多いのは、鵞足炎(がそくえん)や腸脛靱帯炎(ちょうけいじんたいえん)です。
川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
川久保整形外科クリニック 整形外科・スポーツ整形・リュウマチ科・リハビリテーション http://www.kawakubo-clinic.jp/