浦和フットボール通信

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椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)×島崎英純(浦和レッズマガジン編集長) 居酒屋レッズトーク対談第5回『広島戦での元気ゴールにサポーターは涙した』(2014/6/18)

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本誌編集長、椛沢佑一と、レッズマガジン編集長の島崎英純さんがホームタウンの呑み屋で、呑みながらざっくばらんにレッズの話を転記する「居酒屋レッズトーク対談」第5回は、ドイツに移籍した原口元気の穴は埋まるのか、原口との思い出について。

移籍で空いた原口の穴は埋まるのか

島崎:1-0の試合が多くて得点数は少ないけどもチャンスは多いし、決定機をもっとモノにすれば2点差以上の展開もあって、今までの攻撃パターンが薄れている感じはしません。問題点は前線の組み合わせ。監督が起用した選手がいる中で、そういう選手をどうやって当てはめるのかに苦労をしていますね。特に李忠成が身体的にフィットをしなくて、最前線で使いたいのだけろうけども、うまくいかない。興梠はワントップでもトップ下でも出来る選手だけれども、興梠自身はワントップをやりたいという思いはある。興梠自身は手を抜く選手ではないから、何の問題もないけども、トップ下でのプレーを見ると気落ちしている感じもしますね。大宮戦でのゴールを見ると、やっぱり興梠がワントップなんじゃないのかというサポーターの声が聞こえてきます。

椛沢:興梠がワントップに入った時は、ボールもよく収まるという部分でも、彼がワントップに入る方が良いのではないかと思う部分もありますね。

島崎:確かにポストワークも絶品で、あのようなポストワークは日本屈指の選手なんじゃないかなと思いますね。だからと言ってミシャさんが興梠をトップ下で使いたい、気持ちも分かって、李も優秀な選手だから、なんとか融合をさせたいんだと思いますね。

椛沢:李は、シャドーよりもワントップの方が良いという評価がミシャさんの中にはあるんですかね。

島崎:おそらくトップ下でもプレーできるけれども、一番の彼の持ち味は得点力で、左利きということも魅力だし、一瞬の速さとかヘディングは、秀でていると思うから一番前でプレーをさせたいというのも分かりますね。ただ、まだ、ぎこちなさがあって、コンビネーションが生まれていない所があると思います。しかも今回、原口の移籍が決まったことで、またユニットを組み直さないといけないという状況もあります。

椛沢:見ていても李は、5月の連戦辺りから、コンディションが如実に落ちてきた感じを受けますね。

島崎:調子が一度上がってきたのだけど、また落ちましたね。それは、根本的にヨーロッパのシーズンから、そのまま入ってきて、休んでいないということがあると思うので、ワールドカップの中断があるので、そこでゆっくり休めるので、チャンスではある。判断が落ちているのは、コンディションの問題でしょうね。フリックパスとか、広島時代にやっていたプレーは良かったし、ゴールにも繋がっていたけども、ボールを受けて収めようと思って相手ディフェンダーとバトルになると厳しい。それもコンディションが解決してくれると思います。ただ、原口がいなくなった後は、李、興梠、柏木と組んだ場合に、原口のような飛び道具が、あの3人にはないので、どうなるのかという心配はあります。

椛沢:原口は組織を打開する個人能力があって、あれがなくなるのは確実に武器がなくなるということですよね。

島崎:膠着した状況の中で、ブレイクするのは個人の力だけど、今それが出来ているのは原口だけですから。関根もそれができる可能性があるけれども、彼は、まだ若くて90分プレーできるわけではないので、そこまで求めるのは酷です。原口は結果を残していて日本の中でナンバーワンに近い能力だったので、彼がいなくなるのは相当な痛手であることは間違いない。彼の穴を埋めようとすることは、簡単なことではないですよ。

椛沢:クラブは、原口の移籍も見越した上で、シーズン前の補強があったと言っていました。

島崎:それに関してはクラブがやってきた今季初めからのアクションは評価をしています。原口が移籍することを見越して動いてきたことは良かったと思います。

椛沢:ただ、あの個を補える力はないですね。

島崎:山道さんも会見で、原口に代わる日本人選手はいない。彼に代わる日本人選手がいないくらいの選手だったという評価なんですね。それか海外で活躍している日本人選手だけども、それを補強するのは困難なことは皆さんが理解していると思うと。ただ、全く動かないわけではなくて夏のウィンドウが空いた時にそれに向けてアクションを動かそうと思っているようです。一方でミシャのサッカーの場合はハーモニーを奏でられるのかが大事だから、いきなり来て戦力になれるのかも問題だと思うと言っていました。それは、遠まわしに獲らないということだと思いますけど(笑)

椛沢:それを言っては、獲らなければいつまで経っても獲れないわけですから、来年を見越してでも、今、補強したほうが良いんじゃないかと思いますけどね。

直輝はミシャサッカーで使われるのか

島崎:あとの課題としては、今は守備が良いのは間違いないけども、これが夏場に入って気温が上がった中でもプレーできるのかは分からないですね。今もギリギリの勝負の中で勝っているだけで、相手のチャンスも作られているし、余裕ある試合運びなわけではないですからね。

椛沢:しっかりと守れて、リスタートで点が取れているので、夏場もそのような形がはまれば勝ち点が取れるのかなと。今までは良いサッカーしないと勝てないという雰囲気がありましたけど、それでは夏場は徹底して良いサッカーが出来なくて勝ち点を落としてきたけれども、今のサッカーであれば勝ち点をしぶとく稼ぐことが出来るのではないかという期待はあります。

島崎:ミシャさんのサッカーは、特定のポジションの負担が高くて、今だとサイドアタッカーは相当な消耗がすごいものなので、夏場に来てそこからバランスが崩れる可能性がある。そこはミシャさんも熟知をしていて、今季に関しては固定をせずに、様々な選手を使っている。特定個人の選手が疲れてしまうと、バランスが崩れてしまう。例えば、宇賀神とか梅崎だけではなく、平川、関口を使っていますから、去年とは違うと思いますね。そこで体力が軽減できれば、充分戦っていける、期待の持てる前半戦だったのではないでしょうか。

椛沢:連戦は、選手をずいぶんと入れ替えて戦っていましたよね。それだけミシャが求める戦力が整ってきたということなのかなと思います。

島崎:今は24人で、去年に比べたらミシャが戦力として考える選手がいるんだと思います。敢えて言うなら、山田直輝と阪野が戦力として考えたくない選手かもしれない。それはしょうがなくて、18人が固まっていればそれほどチーム力は落ちないので、今はしっかり固まりつつ、入れ替わりもあり、去年よりもチームバランス的には良い。直輝に関しては本人も自覚をしていて、ノーチャンスという監督からのメッセージが我々にも伝わってくるくらいですからね。本人は相当、分かっていると思います。おそらく、かばちゃんみたいなタイプのサポーターは、なぜ直輝を使わないんだと思っているんでしょうけども(笑)

椛沢:直輝はね・・・。地元が生み出した才能ですから、レッズで輝いて欲しいという思いは多くのサポーターにあるとは思います。

島崎:ナビスコカップでも、ほとんど使われていないくらいだから、末期状況だと思います。

椛沢:大原での練習では、徐々にプレーも良くなってきているという話も聞きます。

島崎:ミシャの評価を別にしたら、ぼくはずっと直輝は良いと思っているんですけどね。根本的にミシャのサッカーに直輝が合っていないということなんだと思います。高橋峻希やセルヒオをみれば分かるけれども、ミシャの評価をされないから、ダメな選手なわけではないから、他で活躍を機会を求めることは、プロサッカー選手として当然だし、そこは浦和に固執する必要はないと思います。サポーターの夢とは別としてね。そうでなければ選手が不幸になってしまう。峻希を見ても、素晴らしい活躍をしてチームの大黒柱となっている。セルヒオもACLでゴールを決める活躍をしていますからね。彼らはミシャの好みに合わなかっただけということです。直輝も他で評価を得て、浦和に帰ってくるという道もあると思いますね。

アウェイでの広島戦の原口ゴールにはサポーターが涙した

椛沢:そうですね。直輝には浦和で頑張ってもらいたい思いはありますけどね(笑)あとは、今季の話に少し戻ると、アウェイの広島戦での原口のゴールは素晴らしかった。あのゴールでサポーターは泣きましたからね。

島崎:2011年の6月11日に3年契約を結んで、サポーターからしても敢えて海外に行かずに浦和に留まってくれたことの感謝もあったと思いますけど、その試合で決めたゴール。会見でも一番思い出深いゴールだったと言っていたと思うけども、まさにあのようなプレーこそが、サポーターが選手に求めるものだったわけだと思います。それを体現する選手が、ジュニアユース、ユースで育った選手であるというのが、幸せだよね。今回離れてしまうけども、ここまでしっかりとサポーターに夢を与えてくれたのは感謝だと思います。

椛沢:レッズとしては、ユース上がりで、海外に評価されて移籍する初めての選手ということで、そう聞くと感慨深いものはあります。

島崎:原口は、ジュニアユースの時代から、日本の代表選手となって海外で活躍をして日本を代表するアタッカーになるという確信がサポーターにもあったと思う。道のりとしては寄り道をしているけれども、順調に進んでいる。皆さんもさみしい思いもしているし、行ってほしくないと思っているだろうけども、そういう人たちも本質的には海外で活躍する元気が見たいんだよね。元気は表面的に見ると、破天荒でわがままで生意気というレッテルを貼られやすいけども、サポーターはみんな知っていて、それが魅力でもあって、それをプレーに還元させてサポーターを感動させてきたということがあるから、雰囲気的には快く送り出してあげようという空気を感じましたね。サポーターとしてはそういう思いなわけでしょう?

椛沢:大方のサポーターはそういう思いだと思います。ただ、元気と優勝したかった。優勝してから行って欲しかったと思っているサポーターもいたと思います。それは、本人もそう思っているみたいですけど、それにはタイミングの問題もありますからね。

島崎:本人も思っているよね。今回の場合は冬まで待つとフリートランスファーになってしまって、元気にとっては、今より良い条件での移籍もあったかもしれないけども、あえて今出るというのはお金をクラブに落としたかったという思いがあった。元気がいっているのは、ジュニアユースから育ててもらった、浦和のアカデミー組織が優秀だということが分かっているから、そこにお金を落として、新しい良い選手を育てて欲しいという思いでお金を落としたかったというところがあったから、このタイミングということも理解できる部分ではある。その反面、タイトルが取れなかったことを心残りでもあると言っているのだから、彼の思いを汲んで上げてもらいたい。

椛沢:原口の最後のコメントを見て、ほとんどのサポーターは納得をしたと思いますね。

島崎:一緒にタイトルを獲りたいけども、このタイミングでしかお金を残して移籍することが出来なかったということなんですね。移籍金プラストレーニングフィーで、1億円以上の移籍金をクラブは得たことになります。トレーニングフィーも23歳までなので、タイミングとしてはこれ以上にお金を残すタイミングはなかったということですから、その元気の思いを汲んで上げて欲しいということです。

椛沢:彼には、4年後にワールドカップに主力メンバーとして出場をしてもらいたいですね。

島崎:23歳でワールドカップに出たかっただろうけど、27歳になった時のワールドカップも悪くないですよね。元気はよく誤解もされるけれども、サッカーに対して真面目だし、福田正博、田中達也に似た、サッカーに対して真摯な選手だから、それがサポーターに信任される要因だったのではないでしょうか。プレーを見ていて一途な所が伝わりますからね。あのような所は浦和のサポーターは好きですよね。

椛沢:あとは、サポーターの声援に反応できる選手だったなあと思います。

島崎:すぐに泣くし(笑)

椛沢:そういう感情をプレーに還元できるタイプなんですよね。

島崎:そういうエモーショナルなところが浦和の選手らしい。系譜をちゃんと引き継いでいるということなんですよ。

<その6へ続く>

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取材場所:武蔵浦和ワイン居酒屋BURCAK

埼玉県さいたま市南区別所6-5-2 JR埼京線・武蔵野線 「武蔵浦和駅」下車 徒歩5分

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